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#そのじん
笑う門には福来る
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#nmnm注意
nanana

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仁人が会議室へ入ると、すでに全員が席についていた。
昨日と同じ部屋。
同じ顔ぶれ。
それなのに、空気はどこか違っていた。
誰も軽口を叩かない。
誰も笑わない。
それぞれが一晩考え続けた。
その重さだけが、会議室を静かに包んでいた。
仁人は空いている椅子に腰を下ろす。
向かいには勇斗がいた。
目が合う。
ほんの一瞬だけ。
昨夜の電話が頭をよぎった。
勇斗も同じだったのか。
小さく視線を落とす。
それ以上は、何も言わなかった。
マネージャーが全員を見渡す。
「昨日は急な話だった」
静かな声だった。
「一晩、それぞれ考えたと思う」
誰も動かない。
「今日は遠慮なく、自分の考えを話してほしい」
その言葉を最後に。
また、静寂が落ちた。
最初に口を開いたのは、舜太だった。
「……俺は」
一度、息を吐く。
勇斗を見る。
「別れた方がええと思う」
勇斗の表情は変わらなかった。
ただ、静かに聞いている。
舜太は少しだけ視線を落とした。
「昨日、ハヤちゃんの話聞いて」
「正直、びっくりした」
勇斗がわずかに顔を上げる。
「そんな大事な人がおったんやって」
「あんなハヤちゃん、初めて見たし」
昨日。
何度も「別れたくない」と言った勇斗。
いつもなら、自分より周りを優先する人が。
それだけは譲れないと。
あれほど自分の気持ちをぶつけた。
「だから」
舜太は小さく息を吐いた。
「俺も、本当はこんなん言いたくない」
その声に、迷いが滲む。
「あそこまで大事やって言ってる人と、別れろなんて」
一度、言葉が止まった。
勇斗は何も言わない。
「でも」
舜太は顔を上げた。
「それでも俺は、別れた方がええと思う」
会議室の空気が、わずかに張りつめる。
「俺は、その恋人のこと知らんし」
「どんな人かも」
「どんな付き合いしてきたんかも知らん」
「せやから、その人が悪いなんて思ってへん」
少しだけ間を置く。
「でも、俺が知っとるんはハヤちゃんやから」
勇斗の表情が、ほんのわずかに揺れた。
「今までどんだけ頑張ってきたかも知っとる」
「M!LKを大事にしとることも」
「俳優の仕事を大事にしとることも」
「ここまで来るのに何年もかかったことも」
舜太はまっすぐ勇斗を見る。
「その人のこと、めちゃくちゃ好きなんは分かった」
「それでも」
一度、唇を結ぶ。
「俺は、ハヤちゃんが今まで積み上げてきたもんを守りたい」
その言葉に悪意はなかった。
むしろ。
大切な仲間だからこそ。
一晩考え抜いて出した答えだった。
「……だから」
最後の声は、少しだけ小さかった。
「俺は、別れた方がええと思う」
誰もすぐには言葉を返せなかった。
勇斗も反論しない。
「……そっか」
ただ、それだけ答えた。
その短い声が。
余計に部屋の空気を重くした。
しばらくして。
柔太郎が口を開いた。
「昨日は……」
少しだけ困ったように笑う。
「本人たちの問題だから、周りが口を出すことじゃないって思ってた」
穏やかな声だった。
「好き同士なら、それでいいんじゃないかって」
勇斗は柔太郎へ視線を向ける。
「でも」
柔太郎はゆっくりと言葉を続けた。
「昨日のハヤちゃん見てたら、思ってたよりずっと大切な人なんだって分かった」
一度、目を伏せる。
「だからこそ……迷った」
勇斗は何も言わない。
「大切な人を守りたい気持ちは分かる」
「でも、その恋が原因でハヤちゃんの夢が減っていくなら……」
柔太郎は小さく息を吐いた。
「俺も」
少しだけ間を置く。
「別れた方がいいのかもしれないって思った」
仁人は膝の上で、そっと拳を握った。
やっぱり。
そうなる。
二人の言っていることは分かる。
昨日までの自分と同じだった。
勇斗を守りたい。
M!LKを守りたい。
だから。
一番確実なものを選ぼうとする。
勇斗は何も言わなかった。
反論もしない。
昨日、自分の気持ちは全部伝えた。
だから今日は。
みんなが一晩考えて出した答えを、ただ受け止めていた。
その沈黙を破ったのは、大智だった。
「……俺は違う」
はっきりとした声だった。
全員が大智を見る。
「俺は、別れんでもええと思う」
舜太が顔を向ける。
「なんで?」
大智は少し考えてから、ゆっくり答えた。
「昨日の佐野さん」
勇斗が視線を向ける。
「あんな顔、初めて見た」
誰も否定しなかった。
「あんな佐野さん見て」
大智は一度、息を吐く。
「『別れた方がええ』って言うんは、俺にはできん」
「仕事は大事や」
「M!LKも大事」
「俺だって、なくなってほしくない」
「でも」
大智は勇斗を見る。
「恋人かて、大事なんやろ?」
その一言に。
勇斗はゆっくり目を閉じた。
「……うん」
小さな声だった。
それでも。
迷いはなかった。
大智は続ける。
「好きな人を失ってまで守った未来で」
「ほんまに幸せになれるんかなって思った」
誰も答えられない。
「もし俺やったら」
一度、言葉を切る。
「たぶん、一生考える」
「あの時、別れへんかったらって」
会議室は再び静まり返った。
舜太と柔太郎は、別れた方がいい。
大智は、別れなくていい。
答えは違う。
けれど。
根底にあるものは同じだった。
勇斗に幸せでいてほしい。
M!LKを守りたい。
その二つを、どうすれば両方守れるのか。
誰にも分からないからこそ。
答えが分かれていた。
マネージャーは静かに頷いた。
そして。
最後に仁人へ視線を向ける。
「吉田」
仁人が顔を上げる。
「お前は、どう思う?」
その瞬間だった。
「……もう、いいよ」
勇斗が静かに口を開いた。
部屋中の視線が集まる。
勇斗は苦く笑った。
「昨日、聞いたから」
仁人の胸が小さく痛む。
「仁人の答えは知ってる」
昨夜。
電話越しに聞いた。
――別れた方がいい。
何度聞いても。
仁人はそう言った。
「だから」
勇斗は少しだけ視線を落とす。
「無理して、もう一回言わなくていい」
仁人はそんな勇斗を見つめた。
昨日までなら。
きっと。
同じ答えを口にしていた。
けれど。
今は違う。
昨夜。
勇斗と話した。
自分がどれだけ勇斗の未来を心配しても。
勇斗は一度も頷かなかった。
仕事が減ったら、また頑張る。
失ったものがあるなら、また積み上げる。
そして。
もし別れたとしても。
また付き合ってもらえるように頑張る。
――ほんと、ばか。
そんなことを言われて。
それでも自分だけが。
勇斗のためだからと離れることが、本当に正しいのか。
一晩中考えた。
そして。
仁人はゆっくり息を吸った。
「……昨日までは」
勇斗が顔を上げる。
「別れた方がいいと思ってた」
昨日と同じ言葉。
勇斗の表情が、ほんの少しだけ曇る。
「勇斗のためには、それが一番だと思ってたから」
仁人は続ける。
「M!LKも」
「俳優の仕事も」
「今まで勇斗が積み上げてきたものも」
「守るなら、別れた方がいいと思ってた。」
勇斗は何も言わない。
昨日、電話で聞いた言葉だった。
「勇斗のためには、それが一番だと思ってたから。」
少しだけ間を置く。
「でも。」
仁人はゆっくり息を吐いた。
「昨日話して、俺が勝手に勇斗のためって決めてただけなんだなって思った。」
勇斗が顔を上げる。
「離れた方がいいって思ってたのは俺で。」
「勇斗は、一度もそれを望んでなかった。」
仁人は少しだけ視線を落とす。
そして。
もう一度、顔を上げた。
「だから。」
「……俺は、別れなくていいと思う。」
舜太が少し眉を寄せる。
「でも、仕事に影響出る可能性はあるやろ?」
「……うん」
仁人は静かに頷いた
もちろん、分かっている。
昨日まで。
それが怖くて、勇斗から離れようとしていたのだから。
「それは、分かってるよ」
「じゃあ――」
「でも」
仁人は静かに遮った。
「それも含めて、一晩考えた」
舜太が黙る。
「何が正解かなんて、まだ分からない」
「この先どうなるかも分からない」
一度、息を吐く。
「でも、昨日みたいに」
「別れるしかない、とは思わなくなった」
それ以上。
仁人は何も言わなかった。
その瞬間。
勇斗の目が見開かれた。
本当に。
何も知らなかったような顔だった。
「……ほんとに?」
思わず漏れた声は。
少しだけ震えていた。
仁人はそんな勇斗を見て。
ほんの少しだけ笑った。
「本当に」
たった一言。
それだけで。
勇斗の肩から力が抜けた。
大きく息を吐く。
「……よかった」
心の底から。
そう思った。
その声に、大智たちが顔を見合わせる。
「そんな嬉しいんや」
大智が少しだけ苦笑する。
勇斗は一瞬言葉に詰まった。
「……だって」
少しだけ笑う。
「一番反対されると思ってたから」
誰も不思議には思わなかった。
柔太郎も静かに頷く。
「昨日のじんちゃん、かなりはっきり言ってたもんね」
舜太も小さく息を吐いた。
「考え変わったって言われたら安心するよね」
勇斗はそれ以上、何も言わなかった。
仁人も。
勇斗を見なかった。
誰も気づかない。
勇斗が安心した本当の理由を。
リーダーが味方になってくれたからではない。
昨夜。
自分のためなら離れると言った人が。
もう。
離れることだけを正解だと思っていない。
それが。
ただ、嬉しかった。
その後も話し合いは続いた。
けれど。
結局、その日も答えは出なかった。
別れた方がいい。
別れなくていい。
どちらにも理由がある。
誰の意見が正しいのか。
何を選べば、すべてがうまくいくのか。
そんな答えは、どこにもなかった。
しばらくして。
マネージャーが静かに口を開いた。
「……今日はここまでにしよう」
誰も反対しなかった。
「事務所とも、もう一度話す」
「その上で、また考えよう」
会議は終わった。
それぞれが静かに席を立つ。
答えは。
まだ出ていない。
けれど。
仁人の中では。
昨日までとは確かに何かが変わっていた。
別れることだけが。
勇斗を守る方法ではない。
まだ。
その先をどうすればいいのかは分からない。
それでも。
もう一度。
勇斗と一緒に考えてみたい。
そう思い始めていた。
コメント
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うわあ……会議のシーン、すごく重かったね。でも、それぞれが勇斗のことを本気で考えてるのが伝わってきて、胸が熱くなったよ。特に仁人の「俺が勝手に勇斗のためって決めてただけなんだな」って気づき、すごく大事なシーンだと思う。昨日までは「別れるべき」って言ってたのに、一晩で変われるのが仁人らしいというか。勇斗の「ほんとに?」って震えた声に、こっちまで泣きそうになった🥀💔 まだ答えは出てないけど、仁人が「一緒に考えたい」って思えただけで、もう大きな前進だよ。続きも読ませてください、nananaさん。