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猫ハチぷりん🐈🍮
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からくり時計
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読了しました……一話でこれだけの厚みがあるのに、ちゃんと完結している作品ですね。ラストまで含めて一つの人生をなぞったようで、読み終えたあとにじんわりと胸が熱くなりました。 特に印象に残ったのは、おそろいのマフラーと結婚指輪が、時間を超えて呼応する構造です。デートの日に「一生大切にするね」と言ったマフラーが、余命宣告後に握りしめる対象になっているのが切なくて。 そして病床での「結婚指輪をつける」という約束の回収。あの約束の言葉が、読んでいるこちらにもしっかり届いていました。真由美さんの「私の代わりに長生きして」という最後の言葉も、とても響きました。素敵な作品をありがとうございます。
どうも。猫ハチぷりんと申します。
今回はノベルでの投稿です。よみきりです。
それでは本編どうぞ。
いつまでも、忘れられないあの景色。
冷たくて、でも何か温かい雪の日。一本の大きな木の下。
一緒に笑いあったあの日に、戻れるものなら戻りたい。
誰か、神様がいるのなら時を戻してください…
あの愛する人に会えるのなら、何でもします。
自分の命を投げ捨ててでも―。
これは、愛する真由美さんとの儚い人生の物語。
記 20〷12月24日
僕は、今とても幸せです。
大好きな真由美さんといられる毎日がすごく楽しいです。
僕は20年も生きてて、初めて思いました。
愛する人と一緒にいるって、こんなに幸せなことなんだなと。
なので、真由美さんといられるこの時間を大切に生きようと思います。
明日は、待ちに待ったクリスマスデート。
美しい真由美さんと、真っ白な雪。クリスマスデート、とても楽しみです。
僕は、本当に世界一の幸せ者です。神様、ありがとう。
真由美さんと出会ったのは、今から三年前の話。
昔からの同級生で、体の弱い真由美さんといつも隣にいた。
-とある冬の日-
「真由美さん、大丈夫?」
「うん。ちょっと熱を出しただけ。」
「おかゆ、つくってあげる。」
「ありがとう。嬉しい。」
「…おかゆなのに美味しい。」
「よかった。」
その時から、真由美さんが大好きだった。
温かいおかゆをつくって、食べてもらったのは今でもハッキリと覚えている。
あの笑顔が、忘れられない。忘れない。
「ねぇ、約束してほしいの。将来私に、結婚指輪をつけてほしいな。」
「え、こんな僕でいいの…?」
「あなたといないと生きていけない。お願い。」
「うん。約束する。絶対、つけてあげるから。」
そうしてお互いに気持ちが通い、付き合うようになった。
、付き合った日も、冷たい雪の日だった。白くて、寒く、静かな冬だったな―。
そして、待ちに待ったクリスマスデートの日。
真由美に会うために、冷たい雪の中。集合場所に向かって走る。
寒い、とても寒い真冬の街道を。とにかく走った。
愛する人に今すぐにでも会いたかったからだ。
「っ、いた…!待たせてごめん…」
「ううん。待ってないわよ。今来たばっかりなの。」
真由美さんは、真っ白のコートを着ていて、まるで雪のように美しかった。
今すぐ雪みたいに消えてしまいそうな、美しい姿―。
…僕は全力で走ったせいか、倒れそうになった。
「ち、ちょっと、あの木の下で休ませて…」
「えぇ、大丈夫?ゆっくり休んで。」
やっぱり真由美さんは天使のように優しい。
「ふぅ…落ち着いたよ。ありがとう。」
「それは良かった。」
「せっかくのクリスマスデートを、台無しにしてしまったな、ごめん。」
「ううん、全然いいの。あなたの命の方が何より大事よ。」
それから僕たちはクリスマスデートを楽しんだ。
いろんなお店に行って、食べて、買って。たくさん笑いあった。
記念におそろいのマフラーを買った、真由美さんも幸せそう。
こんなに幸せな時間を過ごして、いいのだろうか―。
「ねぇ、今日はありがとう。また来年も来ようね。」
「うん、もちろん。」
「マフラー、一生大切にするね。」
「僕も、大切にするよ。」
記 20〷12月25日
今日は真由美さんとのクリスマスデートだった。いろんなお店をまわり、沢山のおいしいものを食べた。
雪も真由美さんもとても綺麗で、美しかったな。
真由美さんと一日を過ごせて、とても楽しかった。とても幸せ。
また来年のクリスマスも、絶対に二人で過ごしたい。
こんな日常が、ずっと続いたらいいな。
だが、そんな幸せな日々は長くは続かなかった―。
それから半年が経った。
真由美さんはがんにかかってしまい、治療に励んでいる。
僕もできるだけお見舞いに行った。
「真由美さん、大丈夫?」
「うん。治療して、調子が良くなった。」
「それは良かった。」
ふぅ、無事で何より。一安心。
「私、あなたと行きたい場所があるの。」
「なんだい?どこへでも連れて行ってあげるよ。」
「クリスマスデートの日、休憩にしゃがんで二人でおしゃべりした、大きな木のところに一緒に行きたいの、お願い。」
「それなら全然、連れて行ってあげるよ。行こう。」
そうして車イスをひいて、真由美さんと一本の思い出の木へと向かった。
「そうそう、ここ。またあなたと来れて嬉しい。私とあなたの、思い出の場所。」
「大切な場所だね。」
「この木に、名前を付けない?綺麗な雪が降る冬に来たから、スノーウィンターとか?」
「いいね、スノーウィンター。」
「よーし、絶対、忘れないでおこうね。」
「うん。」
ある日、お見舞いに行った時に、とても残念な知らせを受けた。
「えー、長くて一ヶ月です。」
真由美さんが余命宣告を受けたのだった。
長くても一ヶ月…!?そんなの、短すぎるよ…
「そんな…噓じゃないですよね!?」
「ええ。残念ながら、精密検査の結果…」
僕はショックに陥り、しばらく外に出ず、引きこもっていた。
クリスマスデートの時に買った、真由美さんとおそろいのマフラーを握りしめて。
何日も一人で考え続けた。真由美さんのために僕は何ができる?
何も出来ない、ひきこもりの自分がすごく悔しかった。
余命宣告を受けて、三週間が経ったとき、病院から連絡が入った。
「桐山さんが、あなたに会いたいということでして…病院、来れますかね?」
「えっ、あ、今すぐ向かいます!」
桐山さんというのは、真由美さんの名字。
僕は急いで病院に駆けつけた。
途中で転んでも、すぐに立ち上がって、前を見て、走る。
真由美さん、僕も会いたい。今すぐに。
「着いた…」
「あなた…会いたかった。ずっと。」
「僕も、ずっと、会いたかった。心配で仕方がなかった。」
「昔から心配性なのは変わってなくて、安心した。」
「…なんで僕に会いたかったの?」
「だって、あと一週間くらいで、いなくなっちゃうんだよ?私。だからー、死ぬ前に会いたいなって思って。それで、いっぱいおしゃべりしたい。そうしたら、私も後悔せずに天国へ行ける。」
「そっか、そっか。」
いまだに受け入れられないけれど、真由美さんが満足するまで、隣にいる。
そして、それから一週間。いろんなことを話した。
病院での生活の話、そして思い出の話。
やっぱり真由美さんと一緒にいる時が、一番幸せ。
消えないでよ、真由美さん―。
あっという間に一週間が経ち、ついに余命宣告の日。
「、真由美さん。僕のお嫁さんになってくれませんか?」
そして、結婚指輪を差し出した。
「え、私?もう死んじゃうんだよ。それに、あなたはお嫁さん以上に幸せにしてくれた。それだけでもすごくうれしいし、楽しい人生を送れた。感謝してるわ。」
「そうか、いなくなっちゃうんだ。」
…そんなの、いつまでも受け入れられないよ、
「…うん。でもね、一つだけ言わせてほしい。」
「なんだい?」
「私の代わりに、いっぱい長生きして、楽しく生きてね。」
「うん。分かった。」
「天国で、見守ってるから。」
「…ねぇ、昔、約束したの覚えているかな?結婚指輪、つけてくれるって。」
「もちろん。」
真由美さんに約束の結婚指輪をつけれて、よかった。
そして真由美さんの左手の薬指に、指輪をつけた。
「とても似合ってるよ。」
「うれしい。ありがとう。」
…やっと、渡せた。喜んでくれて、良かった。
結婚指輪をつけるっていう約束も果たせたし…
「今年はクリスマスデート、できなかったね。」
「うん。でも、真由美さんの隣にいれるだけで十分幸せ。」
「私が死んでも、忘れないでよ?今までの思い出とか。」
「そんなん、忘れるわけないよ。真由美さんは僕の人生の一部だから。」
忘れるわけがない。本当に、真由美さんは心配性だなぁ。人のこと言えないかもだけれど。
もし忘れたとしても、必ず思い出す。そう心の中で誓った。
「本当はもっと、いろんなことをしたかった。またクリスマスを一緒に過ごしたりしたかった。 」
真由美さんは静かに涙を流しながら、当たり前のことを言った。俺だって、もっと一緒にいたかった。
「最後に言いたいこと。大好き。死んでもあなたのそばにいるって誓う。ありがとうね。」
「うん、僕も大好きだよ。こっちこそ、ありがとう」
優しく抱きしめて、しばらく離さなかった。
たとえ真由美さんがこの世からいなくなっても、離さない。
ずっと、抱きしめていたい。離れないで―。
勝手に涙が出てきた。こらえて笑っていたのに。なんでだろう。
涙で視界が見えなかった。でも、真由美さんの美しさと指輪のダイヤモンドの光だけは、確かに見える。
伝えられた。最後に、言えてよかった。
そうして真由美さんは、安らかに眠った。
きっと、天国でも幸せな毎日を送っているであろう。
僕は、真由美さんの代わりに今を大切に生きる。
たとえどんなことがあっても、つらいことがあっても、めげない。
空からきっと、見てくれているはずだから。