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アメリカ
っ…
なんなんだ、あいつ。なんで俺に話しかけてきたんだ?まさか…
俺はモブ美の行動が気になって仕方なかった。あいつの笑顔の裏に隠されたものが、まるで過去の記憶と重なって、どうしようもなく気持ち悪かった。
…いや、気のせいだ。きっと、あいつはただの転校生だ。俺は考えすぎなんだ。
そうだ、そうに違いない。
というか、あいつらに相談するか…?いや、でもボロが出るかもしれない。今日は一人で帰っておこう…
あの日から一週間がたった放課後。
俺は帰るため教室の出口に向かう。あいつらの声が聞こえる。
ソ連
アメリカ、早くしろよ!」
イタ王
待ってるんね~!
アメリカ
よっしゃ、今行くぜ!
俺がみんなのところへ行こうとした瞬間、背後から甘ったるい声がした。
モブ美
アメリカさぁん♡ちょっと待ってください!
俺は一瞬、嫌な予感に身体が固まった。だが、みんなが待っている。無視はできない。
アメリカ
悪い、モブ美。俺、今日みんなと約束してるから、また今度な。
モブ美
えー!そんなぁ…。でも、私、アメリカさんにしか話せない、すごく大切な相談があるんです。屋上で、ほんの5分でいいから…。お願い…!
モブ美は目をうるませて、周りのクラスメイトにも聞こえるように、少しオーバーに訴えてきた。
日帝
アメリカ。どうした?
モブ美
ごめんなさい、日帝さん!アメリカさんを少し借りてもいいですか?本当にすぐ終わるんで!
モブ美は日帝たちにまで満面の笑顔で頭を下げた。周りの生徒たちは、
「モブ美ちゃん、健気だな」
「アメリカ、行ってやれよ」
という視線を送ってくる。
俺は断れなかった。ここで拒否すれば、「完璧なアメリカ」のイメージが崩れる。
アメリカ
わかった。みんな、5分だけ待っててくれ。すぐ戻る。
ナチス
嗚呼、待ってるぞ。
俺は、モブ美に促されるまま、人気の少ない非常階段を上り、屋上へ向かった。
屋上の扉を開けて、モブ美と二人きりになった瞬間、彼女の表情が変わった。さっきまでの無邪気な笑顔が消え、まるで獲物を前にした捕食者のような、冷たい笑みを浮かべた。
モブ美
ふふ、バカね。本当に来るとは思わなかったわ。
アメリカ
な、何の話だ?相談って…
モブ美
相談?そんなものあるわけないでしょう?私はただ、あなたをここへ連れてきたかっただけよ。
モブ美はそう言うと、持っていたカッターナイフの刃を一瞬だけ出して、自分の腕の内側を引いた。少し引いただけなのに血の量はなぜか多かった。
俺が何が起きたか理解する前に、モブ美は狂気的な演技を始めた。
モブ美
きゃああああ!
彼女は悲鳴を上げ、その場にへたり込んだ。カッターあえて俺のほうへ放り投げられている。そして、大声で泣き叫んだ。
モブ美
あ…あ…アメリカさんに…いきなり押されて…カッターが…!
俺は何も言えなかった。過去のいじめを思い出して、身体が震えた。
モブ美はさらに声を張り上げた。
モブ美
やめてください!お願い!もういじめないで!私、何もしてないじゃないですか!
俺の頭の中で警報が鳴り響いた。いじめ――それは、俺が最も恐れる言葉だ。
モブ美の悲鳴を聞きつけたクラスメイトたちが、屋上の扉を勢いよく開けて入ってきた。最初に飛び込んできたのは、ロシアとドイツ、そして日本だった。
彼らが目にしたのは、泣き叫び、腕を押さえてうずくまるモブ美と、その前に立ち尽くす俺の姿だった。床には、光るカッターナイフ。
モブ美は震える声で訴えた。
モブ美
ごめんなさい…。私、ただ仲良くなりたかっただけなのに…。いきなり、こんな…
ロシア
…おい、アメリカ…これは、どういうことだ?
ロシアの顔から、いつもの笑顔が消えていた。その冷たい、疑いの目が、俺の心臓を射抜いた。
中国
アメリカ、何やってるアル…?
中国の声は、いつもと違う、非難の色を帯びていた。
日本
アメリカさん、落ち着いてください!モブ美さんの腕が…血が…
日本は慌ててモブ美に駆け寄り、その腕を心配そうに覗き込む。
ドイツ
おい、アメリカ。説明しろ。
ドイツの冷たく厳しい声が、俺の弁解を阻む。
イタリア
アメリカ、ひどいよ…!
ナチス
モブ美、大丈夫か?おい日帝、救急箱を!
ナチスはモブ美を抱きかかえ、日帝に指示を飛ばした。
日帝
は、はい!
日帝は一瞬、俺を見てから、慌てて教室の方へ走り出した。
イタ王
うわぁ…これ結構深い気がするんね…
イタ王や他のやつらは、俺を避けるようにモブ美の周りに集まっていた。
ソ連
本当に…本当にお前がやったのか…?
ソ連の震える声に、俺は絶望した。
アメリカ
違う!本当に何もしてないんだ!信じてくれ!
だが、俺の言葉は誰にも届かない。モブ美の涙と傷が、何よりも雄弁に俺の罪を語っていた。
俺の周りから、みんなの笑顔が消えた。代わりに向けられたのは、不信と軽蔑の目だった。
誰も信じてくれない。
俺の心は、音もなく崩れ落ちた。
コメント
3件
モブ美一変殴りたい☆((( 日帝はまだアメリカの事を信じている………?教室へ行く前にアメリカちゃんのことを見てたし……… これからどうなるのかも気になるし……他のみんながどうアメリカへの態度が変わっていくのかが、気になるっ!特に日帝ちゃんは……✨
あとがき この度は、第五話をお読みいただき、誠にありがとうございます。 今回は、いよいよモブ美の計画が本格的に動き出しました。アメリカが必死に築き上げてきた「完璧なアメリカ」という仮面が、いとも簡単に剥がれ落ちていく様子を、皆様にお届けいたしました。 物語を執筆する上で、アメリカの心の崩壊とモブ美の狂気的な感情を、読者の皆様に深く感じていただけるよう、細心の注意を払いました。特に、屋上でのシーンは、言葉にならない絶望感を表現するため、アメさんの視点から丁寧に描写することを心がけました。 この後、アメさんはどうなってしまうのか。そして、モブ美の計画はこれで終わりではないはずです。物語の展開を、どうぞ楽しみにお待ちください。 皆様からのご意見やご感想は、作品の大きな励みとなります。もしよろしければ、些細なことでもぜひお聞かせください。 これからも、この物語を応援していただけましたら、何よりの幸いです。