テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「……っ、いい加減、に……しやがれィ!」
暗闇の中、総悟の指先が銀時の頬を鋭く裂いた。
視界を奪われ、腕を封じられながらも、総悟はなお死んではいなかった。
捻り上げられた肩の激痛を、怒りという劇薬でねじ伏せ、渾身の力で銀時の顔面へ向けて頭突きを放つ。
鈍い衝撃。
銀時の鼻から血が滴り、床に赤い斑点を作る。
総悟は床を這い、アイマスクを外そうと悶き、必死に自由を求めて叫んだ。
「俺は、テメーなんかの……あやつり人形じゃねェですぜィ……! 殺せ……殺しやがれィ、白夜叉ァ!!」
その瞬間、部屋の空気が凍りついた。
銀時の中で、静かに、けれど決定的な音を立てて何かが切れた。
「……あァ、そうかい」
低く、温度の一切ない声。
直後、総悟の視界——暗闇の世界に、爆辞的な衝撃が走った。
ドォォン!
銀時の拳が、総悟の腹部を容赦なく撃ち抜いた。
「……が、はっ……!?」
肺の中の空気が一気に絞り出され、総悟の体は床を跳ねるようにして数メートル吹き飛んだ。
背中が壁に激突し、内臓がひっくり返るような嘔吐感に襲われる。
「……っ、が……はっ、ぁ……げほっ……!」
総悟が床に蹲り、血混じりの唾液を吐き出す。
しかし、銀時は歩みを止めない。
抵抗を
「無意味な羽ばたき」
とさえ見なさなくなった獣の足音が、ゆっくりと近づいてくる。
「……痛いか? 総悟。お前が俺を拒むたびに、俺はこうやってお前を壊さなきゃなんねーんだわ。わかるか? 全部、お前のせいなんだぜ」
銀時は蹲る総悟の髪を乱暴に掴み上げると、そのまま壁に頭を叩きつけた。
ゴンッ!
という乾いた音が響き、総悟の意識が白濁する。
「や、め……っ、だん、な……」
「やめねーよ。お前が、俺のものだって認めねー限りな」
銀時は、もはや力も入らない総悟の頬を、開いた手で強く、何度も打ち据えた。
パァン、パァンと、閉ざされた地下室に乾いた暴力の音だけが虚しく響き渡る。
「……っ、……、……」
あんなに鋭かった総悟の反抗的な言葉は、今や意味をなさない呻きへと変わっていた。
腫れ上がった頬、裂けた唇。
銀時の独占欲は、ついに「愛」の形を捨て、対象を物理的に損壊することでしか満たされない、修復不可能な領域へと踏み込んだのだ。
銀時は、ぐったりと動かなくなった総悟の首筋に、返り血を舐めとるように口づけた。
「……ほら、やっと静かになった。……お前、殴られてる時が一番、俺のことだけ考えてる顔してんじゃねーの」
総悟の指先が、最後に一度だけ床を掻き、そして力なく止まった。
プライドを、侍の魂を、そして身体の自由を。
暴力という名の圧倒的な絶望で粉砕された彼は、皮肉にもその時、初めて銀時の支配下に完全に「固定」されたのだ。
コメント
1件
うわぁ……読んでて心臓がぎゅっとなりました。第4話、完全に二人の関係性の臨界点を超えた瞬間ですね。銀時の「お前が俺を拒むたびに、俺はこうやってお前を壊さなきゃなんねーんだ」っていう台詞が、独占欲の暴走具合を如実に表していて怖かったです。それでもなお抵抗をやめない総悟の強さと、最後の指先の動きにグッときました…。続きが気になりますが、総悟の心がどうなってしまうのか本当に心配です。
NAGI