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ジーク「…。」

マリア「う、そ…。こんな…なんで…アカネが…」

マリアの呼吸が荒くなる。

ジーク「…!マリアさん、落ち着いて…」

ジークが落ち着けようとするが、かえってマリアは無理やり落ち着かせようとして悪化する。

ジーク「ま、マリアさん…」

(こういう時どうすれば…アリィなら出来るのに…俺じゃやり方が分からない…)

ジークがオロオロしていると、マリアが顔を上げる。

マリア「…火…?」

ジーク「火…?何の話…」

少し遅れてジークの鼻先にも突き刺す焦げ臭い匂い。ジークの肩が僅かに動く。マリアが匂いの元を視線で追う。視線の先はアカネが踏み潰された悪魔の足元。

ジーク「まさか…火を使えるのか…?あの悪魔…!」

マリア「いえ、違うわ。」

ジーク「じゃああれは…」

マリア(私はこの匂いをよく知っている。この”魔法”を。…でもどうやって…)

悪魔の足元から僅かに火のようなものが吹き出す。正確には足の下から。虫の悪魔は熱さが限界を迎えたのか、足をあげ別の場所を移そうとする。しかし、それを許すことなく悪魔の腹を火球が追撃する。足をあげていてバランスが上手く取れなくなった虫は仰向けに倒れる。先程悪魔の足があった場所にはスクラップになったはずのアカネが、立っていた。

アカネ「グルルルル…」

アカネは普段の様子からは想像つかない形相で唸る。

マリア「うそ…!…よかった…本当に…よかった…。」

マリアはその場に崩れ声にならない声で、喜びを噛み締め人目も気にせず泣く。

ジーク「アカネ君…!?」

ジークも驚きその場で固まる。

アカネ(なんで僕は魔法なんて一切使えないはずなのに…不思議。何故か昔から使えたかのように手に取るようにわかる…。)

アカネはただ本能に従い魔法を放つ。悪魔はただ炎を見つめる。

アカネ「…っ死ねぇ…!」

アカネは腕を高らかにあげ、火球を持ち上げる。

悪魔「ドウ…ジデ…ヒドイゴドスルノ…」

悪魔はただ静かな鳴き声をあげる。鳴き声をききアカネの腕は動きを止める。

アカネ(違う…悪魔は対話なんて出来るはずがない…これは今まで襲った人の真似事をしてるだけ…)

アカネはそう自分に言い聞かせるが手は依然として動かない。その間に、小さな虫達は火に飛び込みくべられるが、その大きな体が崩れることは無い。

悪魔「イギ…ダイ…」

アカネ「っ…!」

アカネが躊躇していると鈴がちりちりと音をたてる。アカネの視界にほんの刹那ベツレヘムが映る。ベツレヘムは迷うことなく比較的柔らかい悪魔の触覚を噛みちぎる。瞬間悪魔は高音の悲鳴を上げる。

マリア「うううぅ…」

耳栓のしていないマリアの耳には直撃し、キューンと鳴いていた。隣にいたジークにも流石に聞こえたようで堪えていた。

ジーク「うるさ…!」

ベツレヘムは2人に構うことなく、2本ある触覚の1本を噛み千切られ動かなくなった悪魔から即座に離れ、アカネに指示を出す。

ベツレヘム「今だよ!やっちゃって!アカネ君!」

アカネ「は、はい!」

悪魔はまだ何かを言葉を発していたが、それはノイズのようで聞き取れる言葉にはならなかった。アカネは1度だけ目を瞑る。そしてすぐに瞼を開いて、掲げていた火球を放った。

次の瞬間、イニディア村中に悪魔の悲鳴が響き渡った。


シェルターの外で、マリアが紙に文字を書きカイオスに見せる。

マリア<どう?まだ聞こえない?>

カイオスはその問いに肩を竦める。

マリア「ダメそうね。鼓膜は破れてないから時間が経てば治るとは思うけど…」

ベツレヘム「災難だったねカイオス。」

とでも言うようにベツレヘムはカイオスに苦笑いを向ける。カイオスは顔をむっとさせ、紙に文字を書く。

<シェルターの警備をしてたら、鼓膜が破れかけるなんて誰がわかるんだ。自分が喋れてるのかもまともに分からんから、こっちは筆談だっていうのになんで獣人のお前達は無事なんだ?>

ベツレヘム「いいことじゃん。私は最初に威嚇された後、すぐにジークさん達から耳栓を渡されたんだよ。ってあ…聞こえないんだった」

マリア「仕方の無い子ね。」

マリアはそう言ってベツレヘムを撫で、カイオスに紙を差し出す。

マリア<ジーク君が耳栓をたまたま持ち歩いていて、それを使わせてくれたから2人とも無事だったの。>

カイオス「……。」

カイオスはジークとアリィに目を向ける。

アリィ「よくあの騒音で無事だったね!?」

ジーク「アリィも聞こえてたのか?耳は大丈夫か?」

アリィ「うん、平気。安心して、そもそもシェルターは段々地下になっていくから、外の音が聞こえづらくって。なんか遠くで雷が鳴ってるな〜ってくらいだから。」

ジーク「それなら良かった…。」

アリィ「私の心配じゃなくて自分の心配をして!どこも怪我してない?」

そう言ってジークの片腕をアリィは上げる。

アリィ「あっ、ここ怪我してるんじゃん!」

ジーク「えっ」

アリィ「気づいてなかったの?もう…病気になっちゃうかもだから、後で消毒しないと。今此処にはないけど…」

ジーク「ま、まさかあのやたら痛ってぇ消毒液を使うのか…?」

アリィ「だってあれが1番効果あるんだもん。」

ジーク「俺は嫌だぞ…。なぁもうあれ買い換えようぜアレ。」

アリィ「使い切るまではダメ!」

ジークは観念したようにはぁと溜息を付いた。

カイオス「ん、段々聞こえるようになってきたな。」

ベツレヘム「お、良かった。」

カイオス「そういや、アカネは?」

マリア「アカネは…」

そういってあるひとつの場所に、マリアは目を向ける。

アカネ「……。」

カイオス「動けないのか?」

マリア「ええ。焼け焦げちゃって…記憶メモリもダメになってる…。ここの人達の治療が終わったら、機体は移すわ。ただ…記憶メモリに関しては…予備はあるけれどもどこまで忘れるか…。」

アカネについて話しているとジークがアカネをじっと見ていることに、カイオスは気づく。

カイオス「なんだ?機械は得意か?」

ジーク「いや…そういう訳じゃないけど…」

(ただ…心が出来たのはいつ頃なんだろうか…。)

アリィは魔法は想像や夢だと言っていた。機械は夢を見ることが出来ない。魔法を使えないはずのアカネ君が魔法をあの時使えたのは心がある何よりの証拠だ。もし復元したアカネ君に心がなかったとしたら

ジーク「…なんだかテセウスの船みたいな話だな。」

カイオス「まぁいい。ベツ。」

ベツレヘム「どうしたの?」

カイオス「ちょっと2人きりで話したいことがある。後でも構わないが。」

ベツレヘム「…私も同じこと考えてたから大丈夫。マリア、ちょっと行ってくるね。」

マリア「ええ、分かったわ。」

マリアがそう返事を返すと2人はシェルター前から離れていく。

マリア「アリィちゃん、おいで。」

アリィ「?私?」

マリア「ええ。」

アリィ「そこまでの怪我はしてないと思うけれど…。」

マリア「捻挫は放っておいちゃだめよ。応急処置じゃなくて、しっかりした手当をしなくちゃ。」

アリィ「はーい。」

ジーク「歩けるか?」

アリィ「ぴょんぴょんしていけば行けると思うけど…」

アリィはそう言って地面に視線を向ける。

アリィ「やっぱり転びそうで怖いから、おんぶして!」

ジーク「素直でよろしい。」


カイオス「…んで、あの銀髪の子供から指示を受けて、触覚を噛みちぎったらビンゴと…。」

ベツレヘム「それだけじゃないよ。アカネ君が殺す直前に気づいてすぐ、マリアに耳栓を嵌めてた。」

カイオス「…偶然にしちゃ出来すぎてるな。」

ベツレヘム「…うん。勘がよすぎる。」

カイオス「どう思う?」

ベツレヘム「…やっぱり”テオス”…でも外見が…」

カイオス「あれは結局口伝だから、本当は違うかもしれないがな。俺としては”テオス”本人でないにしても、干渉を受けてると考えてる。例えば…血を引き継いでるとか。」

ベツレヘム「”テオス”が…!?んー…神聖な存在ってことになってるし、想像つかないけれどその可能性もあるのか…」

カイオス「まだどっちも憶測の域を出ないな。」

ベツレヘム「強制的に拘束することは出来ないよ。関係なかったら可哀想だもん。」

カイオス「ああ、分かってる。…ただ”テオス”の可能性を考慮して、リーダーに相談した方がいい。」

ベツレヘム「そうだね…何かあった時助けられるスピードが早くなるから。」

カイオス「落ち着いたら、俺から連絡する。ベツ、お前は抜けた身だが今回は証人として…」

ベツレヘム「分かってる、同席するよ。」

カイオス「感謝するよ。」

ポルポルは今日もお腹が空いている

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