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合同合宿、最終日の朝。
連日の猛暑とマネージャー業務の忙しさで、私の体力は限界に達していた。重い体を引きずるようにして朝食会場へ向かうと、入り口で銀髪の大きな影に遮られた。
「……朱里。顔、真っ白やぞ。倒れる寸前やんか」
治くんが、無表情ながらもどこか険しい目つきで私の額に手を当てた。合宿終わりの、少し熱を帯びた彼の掌。
「大丈夫……ちょっと寝不足なだけ。治くんこそ、朝練お疲れ様」
「……大丈夫なわけあるか。お前、さっきから膝震えとる。……こっち来い、特効薬作ったるわ」
治くんは私の手首を掴むと、部員たちが騒がしく白米を詰め込んでいる列を無視して、厨房の隅へと連れて行った。そこには、彼が自分専用(?)にキープしていたらしい、小さな手鍋が火にかかっている。
「……これ、飲め。俺特製の滋養強壮スープや。出汁からきっちり取ったからな」
「えっ……わざわざ私のために?」
「……当たり前や。お前が倒れたら、俺の飯を美味そうに食う奴がおらんくなる。……ほら、あーん」
彼は一口、丁寧にふうふうと冷ましてから、私の口元にスプーンを運んできた。
じわりと広がる、深い旨味。生姜の香りが鼻を抜け、冷え切っていた胃の腑がゆっくりと熱を帯びていく。
「……美味しい。……身体が、すごく熱くなってきた」
「……そ。……効いてきたな。……これ、ちょっと『毒』入っとるからな」
「えっ……毒!?」
私が驚いて顔を上げると、治くんは至近距離で私をじっと見つめた。スナギツネのような細い瞳が、朝の光を反射して妖しく光っている。
「……『治以外に反応できんくなる毒』や。……これ飲んだら、もう他校の奴に愛想振りまく元気、出んくなるで」
彼が私の唇に残ったスープを、親指でゆっくりとなぞった、その時。
「あーーーっ!! 見つけた! 治、自分だけ朱里ちゃんに『朝から不潔なドーピング』させとるやんけ!! 卑怯やぞ!!」
眠気眼をこすりながら、寝癖だらけの侑くんが突っ込んできた。その後ろには、既にカメラを起動している角名くん。
「……ツム。お前、うるさい。……こいつには根性焼きのスープでも飲ませとけ」
「誰が根性焼きや!! 朱里ちゃん、こいつのスープには『従順になれ』っていう呪いが入っとるからな!!」
「……呪いやない。……愛や。……角名、今のツムの『寝ぼけ面』、全校生徒に一斉送信や。……朱里、おかわりや」
治くんは侑くんをしゃもじで一喝して追い払うと、私の手をギュッと握り、さらに自分の近くへと引き寄せた。
「……合宿はもうすぐ終わりやけど。……俺の『毒』、一生抜かせへんからな。……覚悟しとけよ」
目覚めのスープ。
お米の甘さよりもずっと深い、治くんの「依存」という名のスパイスが、私の全身をドロドロに支配していった。
余談
相談があるんですけれど、
投稿しても大丈夫でしょうか?もしも
暗いのが×や、闇がダメな人がいれば教えてください!