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夜。
シェアハウスのリビング。
空気が少し重い。
みこととすちは静かにテレビを見ている。
らんはソファで寝転がっている。
こさめはテーブルで宿題のようなものをしていた。
いるまはその隣に座っている。
でも。
みんななんとなく落ち着かない。
原因は一つ。
なつが部屋から出てこない。
ゆうはずっと廊下のドアを見ていた。
そのとき。
ガチャ
なつの部屋のドアが開く。
なつが出てくる。
フードをかぶっている。
ゆうがすぐに立つ。
「なつ」
なつは止まらない。
玄関へ向かう。
ゆうが言う。
「どこ行く」
なつが答える。
「外」
短い。
ゆうはその腕を掴む。
「またケンカ行く気か」
なつの肩がピクッと動く。
「離せ」
低い声。
ゆうは離さない。
「やめろ」
「今のまま行ったら」
「また…」
ゆうは言葉を止める。
でも。
なつは振り返る。
目が少し赤い。
「また何だよ」
ゆうが言う。
「壊れる」
静かな声。
なつが笑う。
でも。
その笑いは完全に壊れていた。
「壊れてるのはお前だろ」
リビングが静まり返る。
ゆうの手が止まる。
なつは続ける。
「過去引きずって」
「逃げたくせに」
その言葉。
ゆうの胸が痛む。
でも。
ゆうは離さない。
「それでも」
「お前を止める」
なつの目が大きく揺れる。
その瞬間。
なつがゆうの手を強く振り払う。
「うるさい!」
声が響く。
「助けられた気持ちなんか」
「お前なんかで、わかるのか?」
リビングの空気が凍る。
こさめが立ち上がる。
「なつ…」
なつは続ける。
「弱いやつみたいで」
「最悪なんだよ!」
拳を握る。
震えている。
「俺は」
「そんなの嫌だ!」
その瞬間。
なつが玄関へ向かう。
でも。
その前に。
スッ
いるまが前に立った。
なつが止まる。
「どけ」
いるまは動かない。
静かな声。
「どこ行く」
なつがイラつく。
「関係ない」
そのとき。
こさめも横に立つ。
なつが少し驚く。
こさめが言う。
「関係ある」
真っ直ぐな声。
「仲間だから」
なつの呼吸が荒くなる。
「どけよ」
でも。
二人は動かない。
いるまが言う。
「逃げるな」
なつの目が揺れる。
「これは逃げじゃねぇ!」
叫ぶ。
いるまが静かに言う。
「じゃあ何だ」
なつは言葉が詰まる。
そのとき。
ゆうが後ろから言う。
「怖いんだろ」
なつが振り向く。
ゆうの目。
まっすぐ。
「俺もそうだった」
静かな声。
「助けられたのが」
「怖かった」
なつの呼吸が止まる。
ゆうは続ける。
「でも」
「一人じゃない」
その言葉。
リビングの空気が少し揺れる。
なつの拳が震える。
そして。
その場に崩れる。
ドサッ
こさめが驚く。
「なつ!」
なつの目から涙がこぼれる。
小さな声。
「……わかんねぇ」
助けられたこと。
弱さ。
全部。
ぐちゃぐちゃ。
その夜。
シェアハウスで初めて。
なつが泣いた。