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週明けて通常通り出勤した私は、席に着くなり久美子と共に支店長と本部長から呼ばれた。
会議室で聞かされた上司たちの話によれば、やはり私の予想通り、大木はあの翌日に自ら退職願を提出したという。しかしそれは受理されることはなく、クビになるだろうと本部長は言った。ただし、その理由は上層部以外には伏せてあると付け加える。
その意味を、今回の件の詳細は口外しないでほしいということなのだと、私と久美子は解釈した。
私としても、大っぴらにしたいような話ではない。だから、黙って了承した。とは言っても恐らくは完全には隠しきれず、しばらくは密やかな噂になるだろうと諦めつつ予想している。
『普段からもっと自分が目を配っていれば、このような事態にはならなかったかもしれない』
上司たち、特に支店長からはそんな謝罪の言葉をもらった。
早いうちに相談していればよかったという、負い目のようなものがあった。そのため、私はそれを複雑な気持ちで受け取った。しかし、今回のようなことはもう起こってほしくないと、最後に言い添える。
この時のことがきっかけだったのかどうかは分からない。ただこの後、人事部直通のホットラインが設置されたのは非常に早かった。
話の最後に、上司たちから宗輔との関係を尋ねられた。ホテルでの私たちの様子から察してはいたようだったが、実際のところを確かめたかったらしい。
やはり、と思った。このことはすでに予想がついていた。そのため、週末のうちに宗輔や社長との打ち合わせは済んでいる。今はもう隠す意味も、必要もない。
宗輔と結婚の約束をしていること、結納前ではあるがすでに両家とも承知していることなどを話す。
久美子も上司たちも皆驚いていた。
祝福の言葉を述べる上司たちは、どこか複雑そうに見えた。今回の件の他、大手取引先の身内が社内にいることは、会社側にとっては諸手を挙げて歓迎できるようなことではないのかもしれない。
仕事終わりのロッカールームで、私は改めて久美子と戸田に宗輔とのことを話した。
「やっぱりね」
「そうなると思ってました」
私を祝福した後、二人は大きく頷き合う。
「それで、仕事はどうするの?続けるの?それとも彼の仕事を手伝うの?」
「いずれはそうしてほしいとは言われてるけど、今は好きなようにしていいって言われてるの。だから、まだここで働くつもりよ」
「そうなんですね。良かった!」
「これからも頼りにしてるわよ」
二人の笑顔に安心する。
「でも本当は、やりにくいって思う人、多いのかしら。本部長と支店長、なんだか複雑そうだったわよね」
「あぁ、そんな顔してたわね。どうってことないと思うんだけどね」
「ふぅん、そうだったんですか。ちなみに私は、全然そんなこと思わないですよ。この三人のチームワークは完璧なんですから、早瀬さんがいなくなったら困ります」
「戸田の言う通りよ。そもそも、こういう話は別に珍しくないわ。だいたいさ、そんなこと言ったら、戸田のお父さんはメインバンクの常務でしょ」
「父の肩書はすごいかもですけど、私がすごいわけではないですから。そんなことより、女子会しましょう!いつがいいですか?なんなら高原さんも誘うっていうのはどうですかね?ぜひともじっくりと話をお聞きしたいです!」
戸田はにやりと笑った。