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久慈さんおよび嬉野さんとリモート打ち合わせしている。嬉野さんが10月からグリーンライトの社員になるので、10月から嬉野さんにやってもらうことの打ち合わせだ。俺と嬉野さんは、これまでSlackではずいぶんやり取りしているが、顔を合わせるのは初めて。
久慈さんが、共有してるスライドを見つつ言った。
〈そう言うわけで、嬉野さんには編集の仕事も少しずつできるようになってもらいたくて。ひとまずはリサーチと構成をうちレベルでできるように〉
〈はい〉
〈マニュアルは萌木さんがまとめてるけど、見るのとやるのは別だから、嬉野さんがやったものを赤入れるのは和泉さんにやってもらいます。和泉さんは萌木さんの直弟子みたいなもんだから、安心してください〉
「そういうわけで、よろしくお願いします」
俺は嬉野さんに頭を下げた。嬉野さんも〈よろしくお願いいたします〉と頭を下げた。
丸眼鏡の、ちょっと地味な感じの若い女性。真剣な目をしているが、変な緊張はしてないみたいだ。俺は、この人ならうまくやっていけるんじゃないかな、となんとなく思った。
「SEOもどんどん変化しますけど、需要を把握して質のいいものを書けば拾ってもらえるのは変わりませんから、質のいいものを書いていきましょう」
〈はい、努力します〉
「嬉野さんなら、いつも真剣にやってくれるから大丈夫ですよ。そのうち企業担当さんとのミーティングも一緒にやりましょう」
〈はい、よろしくお願いいたします〉
嬉野さんはまた丁寧に頭を下げた。
そんなこんなで打ち合わせが終わったあと、千歳(黒い一反木綿のすがた)が興味津々な顔で俺の顔を覗き込んできた。
『どうだった? 嬉野さんっていい女だったか? お前口説けそうか?』
「だからほぼ新卒の子にそういう対応をしちゃいけないって!」
俺は千歳を制した。
「仕事仲間になる人だから。お互い気持ちよく仕事できることがまず一番だから」
嬉野さんがおっさん二人との打ち合わせに変な緊張をしてないのはありがたいが、だからといってこっちが羽目を外していいということではない。
千歳は『なら早くいい仕事仲間になれ』と言った。
『そんでもって、いい感じになったら口説け!!』
「無茶を言わないでください」
『そのうち直接顔合わせるんだろ? その時に距離詰めてけ』
千歳が言っているのは、社員全員ほぼ在宅勤務なグリーンライトで一度直接の顔合わせをやろう、嬉野さんの歓迎会も兼ねてやろう、と言ってるやつのことである。
「まあそのうち顔は合わせるし、クライアントによっては直接2人でミーティング行かなきゃなこともあるけどさ」
『チャンスたくさんあるじゃないか!』
千歳は色めき立った。
『お前、飲む打つ買う全部やらないし、優しくていい奴なんだからその辺を前面に押し出してけ』
「だから嬉野さんをターゲットにするのをやめなって」
『だってお前、出会いないんだから、こういうチャンスを大事にしないといけないだろ』
千歳はむくれた。
「そりゃまあ出会いはないけどさ……」
千歳がいるから、出会いなんてなくていいんだけどな。嬉野さんとは良好な関係を築きたいけど、仕事仲間として良好な関係を築ければそれでいいし。
どうすればいいのかなあ。俺は、千歳がそばにいてくれれば、それだけで十分なのになあ。
コメント
1件
嬉野さん、真面目そうで素直な人で安心しました。千歳が「口説け」って騒いでるのに、仕事仲間としての距離をちゃんと意識する和泉さん、誠実でいいなと思いました。最後の「千歳がそばにいてくれればそれで十分」がじんわりきて、ああこの二人はこういう関係なんだなって。新メンバーとの仕事、うまくいきますように🌙