テラーノベル
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「…いい、いいよ、兵器として潰そうとしてきた皇は、ぽれに押し付けた”遺物”で潰す。」
男は目を見開いた、彼は驚くほど適正の高い、唯一とも言える”遺物”の天才だ。
_”プロクティル”
男は聞いた。
「…”能力”、使うのかよ?」
「そう!ぽれはこれで全員潰す、全部壊して、平和を取り戻す!」
ぜんこぱすは子供みたいに笑った、心から楽しそうに、砂場で遊んでいる子供のようだ。
_だが奥には、他人の作った砂の城を踏み潰すような、そんな嫌な思想が隠れている。
_だが男たちに止める理由などなかった、全員が城を潰すべきと考えているからだ。
_1番酷使されたのはぜんこぱすだ。
だが他の者も、苦しめられたことに変わりはない。
「…あの時ぽれ、5歳だったんだよ?」
「5歳の子供を使い潰そうとする図々しさが気持ち悪い、アイツらは」
「…だから潰す。潰すしかないの。」
「あぁ…同じ気持ちだよ、ぜんこぱす。」
男はぜんこぱすを抱きしめた。
そこには傷を負ったもの同士の絆が、分かりやすいほど現れている。
あまりに歪んだものかもしれない_だが、もう正当な愛を忘れた彼らに、そんなものを教えてもらいたいなんて欲は到底ない。
_この愛こそが、絶対だからだ。
反逆初日、ぜんこぱすは路上、車道のど真ん中でただ立っていた。
風邪で彼の春空のような髪が揺らめき、いかにも今から何かが始まりますよ、なんて雰囲気を醸し出していた。
(…ぽれはここでタヒんだっていいよ。)
(ぽれは壊す。)
(皇なんて憎いものも、それを崇め奉るような腐った制度も、弱いところひとつ見せない何もかも壊す。)
決意は、ぜんこぱすの心を、真っ黒に塗り替えた。
そして、宣言した__。
「…変異。」
それは、あまりに静かな空間の中で、確かに開戦を表す”呪い”。
ぜんこぱすの中で渦巻く”意思”はどんどんと強くなり、両手の全ての指から、獰猛な爪が生える。
それは研がれたナイフのように鋭く、剣のように長く、刀のようによく切れるもの。
次第に両腕は本当の熊のようにフサフサな毛が生え始め、侵食するようにそれは広がる。
ぜんこぱすの目が、夏空のように青く光る。
口角が自然と上がり、ヒヒヒ、なんて魔女のような笑い声が自然と溢れ出る。
たのしくてたのしくて、笑いが自然と溢れ、どんどんと抑えが効かなくなる。
この強すぎる負荷に、常人は到底耐えられるものではない。
だがぜんこぱすは例外だった、特異すぎた。
彼は言わば”暴走”状態になる。
だが、身体がはち切れるだとか、そんなものは微塵もなかった。
「あは、あははは!!!」
目の焦点が合わなくなる、全てを切り裂かんと、ぜんこぱすは走る。
対象は全ての皇だ、全員を殺す、殺してやる。
何もかも殺して、こわして、自分すら壊れてでもこの復讐を果たす。
…全て壊してやる。
___
「な、なに!!?」
ウパパロンはサイレンに驚き、自室で身体を跳ね上がらせる。
「…そ、外!!外に…」
混乱するウパパロンの考えをまるで静止するように、執事がひどく慌てふためいた様子でウパパロンの部屋の扉をバンッ!!と勢いよく開けて入ってくる。
「待ってください!!外は危険すぎます!!ここは私たちが出ます!!どうか部屋に!!」
同時に入ってきたメイドが続く。
「私、ウパパロン様のためなら命も惜しみません!!」
「い、いのち、そう、だよね」
「わ、私が危険、だから…えっと」
破裂してもおかしくない思考がぐるぐるぐるぐるぐるぐると回る。
今自分がどこにいるのかが分からなくなりそうなほどぐちゃぐちゃに掻き回され、強い痛みが押し寄せる。
「…で、でも、命は、命は落とさないでください、お願い、貴方達の命すら失ったら、わたし、は…」
今はそんなこと考えている余裕なんてない、なのにそう考えようとするとしきりにトラウマが頭に作用して遮ってくる。
【私の事嫌いなんだろ?】
【どうして助けなかったんだよ?】
「あ、ぁあ、あ、」
ウパパロンは手を伸ばす、だが2人はそれを取ることなく、部屋を出て、館を駆けて、消えていった。
「…っあ、ぁあ、あぁあぁああああ!!!!」
「なんで…なんで!!!」
バン!と机を叩き、自分の不甲斐なさに涙が溢れ、それは止まらなくなる。
心臓が痛い、肺が痛い、なぜ何もできない?わからない、わからないわからない。
身体が動かない、彼等を止めなければタヒぬと直感していた、それなのに一向に身体は言うことを聞かず、膝から崩れ落ちて全く動けなくなる。
震えが止まらなくなり、伸ばした手は縛られたようにその場で硬直する。
必死に空気に向けて手を伸ばす。
あまりに滑稽だ、自分でもわかっていた、それなのに、こんな悪夢があるなら醒めたい、それなのにだめだ、痛くて仕方がない。
自分が生きているここが 現実であることが今、鼓動がどんどん大きく、早くなる心臓で突きつけられて止まない。
恐怖、混乱、何もかも混ざって、今消えてしまいそうになる。
「だぁ、だめだ」
声は情けないものに変わる。
_どうして未だにトラウマというものに縛られているのか、ウパパロンにすら分からない。
前を向くと、前を向くと決めた。それなのに何も変わっちゃいなかった。
成長したつもりだった、トラウマから離れたつもりだった。
_だが自分は、想像していたよりも何倍も、弱くて醜い人間だったようだ。
_だが、遅かった。
_2人分の悲鳴が、イデアリス全員の耳に焼き付いたのだ。
ウパパロンは絶望した。
また、大切な命を失ってしまったことに。
リィン・システムは呪いだ、それなのに考えてしまう、リィン・システムさえあれば救えたのにと。
人間の命は脆い、だからこそ守って、別れなんてなくせればよかった。
_無駄だった。
全て無駄だった。
共同者の突きつけた現実は、重く、嫌な暗雲で、毒だったのだ。
「ぁ、あぁあ………」
倒れ伏したウパパロンは、最早言葉を紡ぐことすら出来なくなっていた。
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