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「待って!」
俺が逃げると判断し、朱と純にそのことを伝えた瞬間、席を勢いよく立った望月奈々が言った。
「は?なんでだ。」
「理解できない。」
その一言で思わず殴ろうかと思ったが、しっかり押さえることができた。
「…3人だけで行くのは流石にやってること殺しと同じじゃない?淕」
「…うん、純くんの言うとおりだよ。淕がなんで逃げるって思ったのかわからないけど…」
「…くそっ、こうやってる時間が無駄なんだよ…」
俺は小声で言う。
「…淕、なんか言った…?」
朱が俺のことを気にしてそう言ったが、そんなことはどうでもいい。逃げるのが最優先。
「いいか。よく聞け望月。そしてその他の人も聞け。」
俺はクラスの人たちが静かになるまで待った。だけど静かになるまでの時間はおよそ数秒。
そして静かになった時に深呼吸をして言う。
「学校の周りにある壁にいた不審な人物は、ゾンビだ。」
「…は?」
クラスの人たちが声を合わせて言う。
「まぁ信じられないかもだが、俺は見たんだ。先生の首を狙って食らっていたのを。」
そう言った瞬間に放送が流れた。
「全校生徒の皆さん!直ちに避難してください!ここは危険です!」
必死に放送をしているがそんな時間はなかった。
「繰り返します!全校生徒の皆さん!直ちに…やっ…やめてくれ…やめてくれぇぇ!!!」
「まだ死にたくない!!やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
先生の悲鳴とともに「グシャリ」という音が学校に響き渡る。
そして先生の悲鳴が止まった数秒後
「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
学校の人達がパニック状態になる。
教室を猛スピードで出ていき、外を目指す者。
職員室を目指し、先生たちに駆除を願う者。
外に出ようとするが他の人が詰まっていて、無理やり通ろうとする者。
俺のクラスにもそういう人がいた。最終的に残ったのは、俺、純、朱、奈々。
俺と純と奈々は友達と言えるほど仲が良い人はいなかったから良かったが、朱には友達と呼べるほど仲が良い人がたくさんいた。だから必死に止めたが、意味がなかった。
4人だけ残った。
これからどうするか。そう思うのが普通だが、俺も俺でパニクっていた。
学校の外にある壁での出来事は俺にははっきりと見えてはいなかった。
だけど気づいたら「逃げよう」と発していたのだ。
俺の体が反応したのか、よくわからないけどはっきりとは見えていなかったから、「本当じゃなかったらどうしよう」とか思ってた。
本当だった。
怖い、悲しい、辛い。
そのような思いがぐっと込み上げてきた。
だけどそんなことを思う時間もなく、大きな足音とともにゾンビが近寄ってくる。
「淕!逃げるぞ!!」
そう純が俺に言った。
俺はその一言で正気を取り戻し、朱も奈々も正気を取り戻した。
「…そ、そうだよね!急いで逃げないと!!」
「…で、でもどうやって逃げるの…?」
純は掃除道具入れを開け、モップのごみを集めるところを外し、先端を簡単に尖らせ、俺にその棒を投げた。
「…これで行けるだろ」
「す、すごい…でもどうやって…?」
「アニメで見た」
「…でも1本しかないし、これを刺したとしても殺せるのか…?」
「…やってみるしかないだろ…」
そう純が言った瞬間、1体のゾンビがゆっくりと教室の中に入ってきた。
「…淕」
視線が痛い。
「…え、えぇい!やってやんよ!!!」
俺は棒を持ち、できるだけ殺したいから素早くゾンビの顔を狙い、刺した。
グサッ
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