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カフェのドアが静かに閉まる。
外のざわつきが嘘みたいに、落ち着いた空間。
「……ここ」
ジェーンが軽く見回す。
「いいと思う」
「よかった……」
ジョン・ドウは少しだけ安心する。
(成功……第一関門突破……)
窓際の席に座る。
向かい合う形。
さっきまで三人だったのに、急に“二人”になると——
(距離近く感じる……)
妙に意識してしまう。
「何にする」
ジェーンがメニューを見る。
「パンケーキ……ありますね」
「……ある」
少しだけ、声が柔らかい。
「じゃあ、それで」
「はい!」
同じものを頼む。
それだけなのに、少し嬉しい。
待ち時間。
静かな時間が流れる。
「……」
「……」
沈黙。
でも、気まずくはない。
前よりずっと自然。
「……さっきの」
ジェーンがぽつり。
「はい」
「姉のこと」
「あ、はい」
「気にしなくていい」
「いえ、あの……すごい人だなって……」
「……そう」
少しだけ間。
「面倒だけど」
でも。
「……悪くない」
小さく言う。
(似てるな……)
なんとなく思う。
パンケーキが運ばれてくる。
ふわっと甘い香り。
「……」
ジェーンが少しだけ目を細める。
「どうぞ」
「……ありがとう」
フォークを取る。
一口。
「……」
ほんの少し間。
「……やっぱり、いい」
「よかった……」
心からの声。
「ジョン」
「はい」
「こういうの」
少しだけ言葉を探す。
「……嫌いじゃない」
また同じ言葉。
でも。
さっきより、少しだけ温度がある。
食べながら。
ふと、テーブルの上。
指先が、少しだけ近づく。
(……)
昨日の帰り道。
自然に繋いだ手。
(ここで……?)
迷う。
でも。
「……」
ジェーンを見る。
目が合う。
一瞬。
ほんの少しだけ。
ジェーンが、視線を逸らさない。
——それだけで、十分だった。
そっと。
テーブルの上で、手を伸ばす。
触れる。
指先が重なる。
今度は——
ゆっくり、指を絡める。
「……っ」
一瞬だけ、ジェーンの指が止まる。
(やばい……早かった……?)
でも。
離れない。
それどころか。
ほんの少しだけ、力が返ってくる。
「……」
ジェーンは何も言わない。
でも。
そのまま、繋がっている。
「……大胆」
ぽつり。
「すみません……」
反射で謝る。
「謝る必要ない」
小さく。
「……恋人なんでしょ」
「……っ」
その言葉。
改めて言われると、破壊力が高い。
しばらく、そのまま。
パンケーキを食べながら。
手は繋いだまま。
自然に。
当たり前みたいに。
「……さっき」
ジェーンが小さく言う。
「はい」
「姉が言ってたこと」
「……はい」
「ちゃんと見てってやつ」
「はい」
少しだけ間。
「……見てくれるの」
まっすぐじゃないけど。
確かに、聞いている。
「……はい」
迷いなく答える。
「ちゃんと見ます」
「……」
ジェーンは少しだけ目を伏せて、
「……ならいい」
小さく頷く。
カフェの静かな空間。
甘い香りと、穏やかな時間。
そして。
テーブルの上で繋がれた手。
もう、“偶然”じゃない。
ちゃんと選んで、繋いでいる距離。