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新宿にある雑居ビル、作家仲間である森 博巳(モリ ヒロミ)に促され階段で3階まで登ってきた。
こんなところに飲食店があるなんてとても信じられないような、本当に普通の雑居ビル。何か、小さな会社の事務所があってもおかしくないような殺風景なフロアの扉に似つかわしくない、ファンシーなプレートに「Melty Love」と記載されている。
俺にはその扉がやけに重々しく見える。開けてはならないパンドラの箱の蓋のようだ。しかし俺一人では決して開けないであろうその扉を、博巳は何の躊躇も無く開け中へと案内をする。
扉の中はケミカル色のライトに照らされ近未来的な空間が広がっていた。
正面には広い銀色のバーカウンターが設置されており、カウンターの奥には色とりどりのボトルが間接照明の明かりに反射し怪しく輝いている。カウンター席には2名の先客が、それぞれ何席か間を空けて座り、カウンター越しに黒を基調としたゴシック風のメイド衣装を着た女性と談笑をしながらカクテルを飲んでいる。
カウンター席の横にはボックス席が用意されており、そこでも1人の男性とゴシック風メイド衣装の女性が談笑をしながら酒を飲んでいる。
ここはコンカフェで、店名はMelty Love(メルティラブ)。コンカフェとはコンセプトカフェの略であり、その名の通り、それぞれのお店でコンセプトが決められている。Melty Loveは地雷系・量産系メイドというコンセプトらしい。カフェと言っても営業時間は19:00~25:00で、主に酒類の提供を行っている――言わばガールズバーに近い業態だそうだ。
扉の中へと入ると一人の女性が駆け寄ってきた。すらっとしていて背は高く、ヒールを履いているとはいえ、立って会話をしている状態で170cmちょっとの俺と同じ位の目線だ。
レッドブラウンの髪をシニヨンにまとめた彼女は、目を細め優し気な微笑みを浮かべている。清楚な雰囲気が醸し出されているが、その胸元は清楚からはかけ離れていた。
「これでもか」というほど主張する両胸が作り出す谷間を、彼女のトップスは悲鳴を上げており、胸元を隠すシースルーの奥に見える両胸は今にも爆発しそうだ。
「ひーくん、お帰りなさいませ。そちらお方は初めて……ですよね?」
彼女と目が合う――彼女は薄暗い店内でも分かるくらい彼女の顔が整っていた。現役のグラビアアイドルだと言われても信じてしまいそうだ――いや、もし彼女がグラビアデビューをしたらすぐにでもトップへと昇り詰めることが出来るだろう。
博巳が俺の肩を抱き寄せる。
「こいつは僕の高校からの友人で作家仲間、あっ、でもコンカフェ自体が初めてなんです。だから、こいつは初回限定セットAコースで、女性のことを色々と教えてくれそうな娘をつけて下さい。後、僕はアイちゃんが今空いているならアイちゃんで、カウンター席の飲み放題でお願いします。」
博巳がテキパキと受付を済ませると、カウンターの中央の席に案内され、博巳と隣同士で座る。その後、先程受付をしてくれた爆乳の美女がカウンターの内側に回って博巳の前に立ち顎に手を当てて考える。どうやら彼女がアイさんらしい――。と言うか、博巳、お前このお店では「ひーくん」って呼ばれているの!?
まあ、博巳は男性だが女性の様な見た目をしており顔も童顔だ。背も小さく、恐らくアイさんよりも小さいのでは無いか? そのため「ひーくん」とか「ひーちゃん」と言うあだ名は似合っているのだが……。
アイさんは少ししてからカウンターの後ろにある、シャンパンタワー用に積まれているシャンパングラスの山を背に自撮りをしていた女性を手招きした。彼女はアイさんのジェスチャーに気が付き、スマホをしまってパタパタと小走りでカウンターの内側へと回る。
彼女が動く度に大きなツインテールが揺れ、フローラルな香りが広がった。
「はじめましてミィです。お名前はなんとお呼びすればよろしいですか?」
笑顔を浮かべ、俺にメニュー表を渡す彼女に思わず見惚れてしまった。
長いまつ毛にぱっちりとした瞳、少しタレ目気味のその瞳の下には、くっきりとした涙袋。唇は薄暗い照明の中でも分かるくらい瑞々しい。
全体的に幼さが残るビジュアルだがその胸には、鷲掴みにしたら掌から零れ落ちそうなくらいの立派な山脈を持っていた。さすがにアイさん程では無いが……。
ただ、地雷系メイクのせいか――それとも彼女が持つ雰囲気なのか――彼女と深い関係になったら色々と危険な気がする……しかし、それすらも魅力に変えてしまうオーラを放っていた。
俺は空返事をしながらメニュー表を受け取ると、彼女は前かがみになりカウンター越しに俺の顔を覗き込む。意識をしているのか無意識なのか、シースルー越しの胸元が強調されていた。
「ね〜え、お名前、なんてお呼びすれば良いですか?」
先程よりも少し大きな声で聞いてくる、ミィちゃんに思わず
「夏目……夏目 優斗(ナツメ ユウト)です。」
と、本名を答えてしまった。ミィちゃんは、口元に手を当ててクスクスと笑いながら話す。
「ユウトさんで良い?それとも、夏目さんの方が良いかな?」
「じゃあ、ユウトさんで……。」
博巳に合わせれば「ゆーくん」と呼んで貰うべきなのだろうが、すまん……俺には、その恥ずかしさを捨てる程の器が無かったみたいだ。
コメント
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みぅ🤍🥀です。 第2話、読ませていただきました…! コンカフェの描写が細かくて、ぼんやりとした不安と、でもそこにある不思議な魅力がすごく伝わってきました。「パンドラの箱」みたいな重みを感じる扉の表現、好きです。 ミィちゃん、地雷系ってワードに既にドキッとしました…装いも喋り方も可愛いのに、どこか危うい空気をまとってる感じがたまらないです。ユウトさんが名前を聞かれてつい本名を答えちゃうのも、惹かれてる証拠ですよね…これからどうなるのか、気になりすぎます🖤 続き、ゆっくり待ってますね🌙
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