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「ユウトさんはコンカフェ自体が初めてなんだよね?」
「うん。だから実は今、めっちゃ緊張しているんだ。」
ミィは「そんな風には見えないけど。」と口に手を当てて笑いながらメニュー表をカウンターに広げるように促す。俺はミィに促されるままメニュー表を広げた。
「じゃあ、コンカフェの仕組みとか、このお店のメニューとかを私が教えてあげるね。」
ミィが身を乗り出してメニュー表をめくる。めちゃめちゃ顔が近い。部屋が薄暗いのに、彼女の震える長いまつ毛が目視出来るくらいだ。更に、メニュー表をめくる度にミィ自身の腕が胸に当たり、シースルーの奥に隠された山脈がグニグニと形を変える。
そんな俺の視線に気が付いていないのか、それとも気が付いていながら、あえて気にしていないのかニコニコと笑いながらメニュー表の説明を始めた。
「ユウトさんが注文した初回限定セットAコースは2000円で、1時間のカウンターでの飲み放題とキャストドリンクが1杯ついているの。あっ、あと、ここのお店はね、食事に力を入れていて、厨房係がいるから冷食じゃない作りたての料理が食べられるんだよ。キャストも全員一通りは作れるから、もし手料理が食べたいのなら言ってね。」
ミィはペラペラとメニュー表をめくる。料理は写真付きで紹介されており、どれもレストランで提供されていてもおかしくないような本格的なものばかりだ。価格もリーズナブルで、俺の想像していたコンカフェのイメージを遥かに上回るものばかりだった。
しかし、既に俺は博巳と居酒屋で飲み食いをしており、このお店は二軒目だ。一軒目にこのお店に来ていれば……と悔やんでしまう……。
「今はお腹がいっぱいだから、食事はまた今度にするよ。取り敢えずウーロンハイと、ミィちゃんにキャストドリンクで。」
「私で良いの? Aコースのキャスドリ(キャストドリンクの略)は1杯だけなんだよ。ユウトさんはフリーで入っているから、私、このあと他の女の子にバトンタッチするかも知れないんだよ。」
ミィは驚いた表情でこちらを見る。俺も思わずミィを見返すと至近距離で目と目が合った。まるでキスでもするのかと思う程距離が近すぎて、思わず目を逸らし身体を反らせる。
「まあ他の女の子が来たら単品で頼めば良いだけだし……。それにミィちゃんと、もう少し会話をしていたいから……。」
ミィは満面の笑みを浮かべて更に俺に顔を近づけながら話す。屈託の無い笑顔が太陽のように眩し過ぎて、俺が吸血鬼なら身体が溶けていただろう。
「じゃあ、ちょっと待ってね♡」
そう言って、こちらにウインクをする。そして、手早くウーロンハイとカシスオレンジを作り、カウンターにウーロンハイを置いた。ミィは自分用のカシスオレンジのグラスを持ち、こちらに傾ける。俺もそれに合わせグラスを傾けて乾杯をした。
彼女が動く度に、黒髪にピンク色のメッシュが入ったボリューミーなツインテールがフワフワと揺れる。
「ミィちゃん、そのツインテールめっちゃ似合っているね。」
口説くつもりでも御世辞のつもりでも無く、何気なく、ほぼ無意識に口から零れ落ちた。するとミィは目を丸くして顔を真っ赤にしながら両方のツインテールを握りしめ、口元に持ってきてモジモジとする。
「えっ……あ……ありがと……♡ あのね……この髪を褒められるの凄く嬉しいの……。手入れとかも大変だし……私、可愛いって思われたいと思って、この髪型にしているから……。」
自分が思っているよりもずっと喜んでくれた。それはコチラとしても嬉しいのだが、何だか少しむず痒くなってしまう。そんな姿を見かねてか、アイさんが助け舟を出してくれた。
「ねえミィちゃん、ユウトさんってひーくんと同じで作家先生なんだって! 凄いと思わない?」
「えっ! 作家さんなの!? どんな作品を書いているの?」
「いや……作家と言っても、なろう作家だし……それにこの前連載が終わったから、今はただのフリーターだよ……。」
「じゃあ、なろう系の作品を書いていたんだ!? なんて作品? 私、結構オタクで、ラノベとかアニメとかよく見るの! なろう作品もたまに見るから、もしかしたら知っているかも!」
俺は「ザ・なろう系」という感じの作品を書いていた。
主人公は現代日本でトラックに轢かれ死亡し、女神にチート能力を貰い剣と魔法の異世界に転生するが、その能力の有能性に気が付かない仲間達に裏切られた挙句追放される。途方に暮れていると、女の子に誘われギルドに入隊し、主人公が無意識の内にハーレムを築きつつ、周りから賞賛を浴びる。一方で主人公を追放した元仲間達は、主人公が抜けた事により悲惨な末路を辿るというものだ。
3年近く連載をしておりコミカライズもされたが、ここ2年近くは、
たくさんの女の子達とスローライフを送る⇒ピンチになっている新しい女の子が現れる⇒主人公のチート能力で女の子を助け、その女の子がハーレムに加わる⇒……
といった具合で、自分で書いているのにも関わらず、何が面白いのか分からない状態になっていた。
ただ女の子達が全員、主人公に身体を使った猛アプローチを送る様子と、コミカライズを担当してくれた漫画家さんのイラストがちょいバズりし細々と連載を続けてきた。しかし漫画家さんが遂に音を上げコミックス版が終了し、合わせて原作のラノベも打ち切り同然に終了したのだ。
そんな、半分官能小説みたいな――男の妄想が爆発している作品を彼女達に言う訳にもいかず……。
「名乗る程の作品は書いていませんよ。」
と言った。
コメント
2件
ゆめかさん、コメントありがとうございます >>次話も楽しみにしてます!🌸 メチャメチャ嬉しいコメントをありがとうございます! 今後もよろしくお願いしますね!
第3話読んだよ〜!コンカフェの雰囲気がすごくリアルに伝わってきて、ミィちゃんのツインテール褒めたところで照れるシーン、めっちゃ可愛かった😭💕 ユウトくんが内心焦りつつも「名乗る程の作品では」ってかわす感じ、じわじわくるよねwww どんな作品書いてたのか気になりすぎる〜!次話も楽しみにしてます!🌸
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