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コメント
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えええ、イソダさんまさかの日本人だったの!?😳💕 薬の値段交渉のところ、めっちゃハラハラした〜!あの恵比寿像の殺気、読んでるこっちまで息止まりそうになったよ…ナギの硬直した姿が目に浮かぶ🥺 そしてラジオの指示通りに進んできてるのにまさかの金不足!この後どうなるんだろ…イソダさんの過去にもめっちゃ興味湧いた!次話が待ち遠しすぎる⋆♡
「おやおや。鱗のお姉ちゃん、イソダ君の知り合いかい?彼なら、たしか今日まで出店してるはずだよ。ええと、場所はね——誰か、案内してあげてくれ。お得意さんには親切にしないとね」
樹木に命じられ、妖精の一匹が僕らの案内人となった。
後に着いて歩くこと数分。
妖精の指し示す先には、一人の男が居た。
その男——イソダさんはチェック柄のレジャーシートに商品を並べ、自らもシートの上に胡座をかいていた。
見た目はアジア系で、年齢は二十代半ば。
若干、心配になるくらいに痩せている。
エスニックファッションというのだろうか——どこかの国の民族衣装のような、ゆったりとしたシャツとパンツ。
顎にはうっすらと髭を生やしており、頭にはバケットハットを被っている。
何だか駅前で、自作のアート作品などを売っていても違和感がなさそうだ。
肩には、鮮やかな青い体毛に包まれた、リスに似た生き物がちょこんと乗っていた。
イソダさんは、ちょうど接客の最中だった。
相手は、二、三十代の黒人女性だ。
煌びやかな黄金のドレスを身に纏っており、立ち振る舞いからも身分の高さが窺えた。
背後には護衛らしき、背広姿の屈強なミノタウロス二体が付き従っていた。
売っているのは、瓶に入った謎の液体や、動物の牙などを用いたアクセサリー、角と翼を生やした悪魔をかたどった木彫りの人形などだ。
女性はイソダさんに宝石を一つ渡すと、代わりに人形を受け取り、護衛と共に満足そうに引き上げていった。
「ありがとう。店主にも礼を言っておいてくれ」
ナギがそう言うと、妖精はくるくると僕らの周りを旋回した後、自分の店の方へと戻っていった。
僕らが近づくと、イソダさんはこちらに気が付き、穏やかな笑顔を浮かべた。
「やあ。何か探し物かな?」
「姿を消せる薬が欲しいんですが」
ナギの言葉に、イソダさんは、
「ああ——〝新月の秘薬〟だね」
と頷いた。
姿を消せる薬——それが、ナギの言うところの『潜入手段』という訳か。
確かに、透明になれれば魔女の棲家へ潜入もしやすくなるだろう。
しかし、そもそもその棲家にはどうやって近づけばよいのか。
僕はてっきり、空を飛ぶ為の何かを買うのではと思っていたのだが、どうやらその予想は外れたようだ。
もっとも〝新月の秘薬〟とやらを購入した後で、あらためてそういった類のもの——翼の生えた靴だとか、魔法の絨毯だとか——を買いにいくのかもしれないが。
「確かに取り扱ってはいるけど、高いよ?」
「それなら問題ありません」
ナギは腰の巾着袋の中から、更に小さな袋を取り出した。
「これで薬を売ってください」
イソダさんは袋を受け取ると、口を縛っていた革紐を解いた。
袋を逆さにし、中身を出す。
シートに十枚ほどの金貨が転がった。
しかし。
イソダさんは困った様に首筋を掻きながら言った。
「悪いけれど——これじゃあ足りないよ」
「なっ——そんな馬鹿な!」
ナギの大声に、青いリスがビクッと体を震わせ、素早くイソダさんの帽子の上へと駆け上った。
「いやいや、別に吹っかけてるわけじゃあないよ?〝新月の秘薬〟はとても希少で貴重な代物だからね。安く見積もっても、この倍はいただかないと」
「ふざけるな!いい加減なことを——」
ナギが掴みかからんばかりの勢いで身を乗り出した、その瞬間だった。
——ぞくり。
背筋が凍りつくような感覚。
いつからそこに居たのか。
気がつけば、まるで瞬間移動でもしたかのように、ナギの傍らには木彫りの恵比寿像が立っていた。
恵比寿像はニンマリとした笑顔のまま、ナギの顔をじいっと覗き込んでいる。
手にした小槌には、おそらく市場のどこかで、不埒な輩を懲らしめたのであろう——打撃面に、緑色の血と肉片が付着していた。
ナギは、身動きすることもできずに硬直していた。
無理もない。
吐き気がする程の、禍々しい殺気。
下手に動けばどうなるか——その場の誰もが、直感的に理解していたはずだ。
市場の喧騒が、随分と遠くに感じる。
おそらくは数秒かそこらだっただろうが、その数秒が果てしなく永く思えた。
緊張に耐えかね、思わず叫びだしそうになったその時、
「——見回り、お疲れ様です」
沈黙を破ったのは、イソダさんだった。
朗らかな声で、恵比寿像に語りかける。
「なあに、別にトラブルじゃあありませんよ。よくある値切り交渉ですんで、お構いなく」
「……」
恵比寿像は暫く沈黙した後、ふわりと浮上し、再び巡回へと戻っていった。
その姿が見えなくなるのを待ってから、僕達は一斉に、はああ、と息をついた。
息の吸い方を、久々に思い出したような気がする。
「気をつけなよ。彼ら、冗談が通じないからさ」
やれやれ、と溜息をつき、イソダさんも額の汗を拭った。
帽子の上ではまだ、青いリスがガタガタと震えている。
気を取り直し、僕はナギに尋ねた。
「ナギ。ラジオが正確には何て言ったか、思い出せる?」
「……私はこの街に着く前に、とある集落を悩ませていた人狼の盗賊団を退治した。この金は、その時の謝礼だ」
ナギは憮然とした表情で、シートに撒かれた金貨を指差した。
「ラジオからは、この金をイソダという商人に見せ——それから、透明になれる薬を受け取れ、と言われた」
「確認だけど、このお金には一切手をつけてないんだよね?」
「当たり前だ」
ナギがジロリと僕を睨む。
僕はダメ元で、オーマと蒼梧に尋ねた。
「二人は、お金持ってる?」
オーマが俯き、
「申し訳ありません……」
と呟く。
一方の蒼梧は、
「一応、何かの時の為に財布はポケットに入れてたけど——大した額は入ってねえぞ?」
と前置きし、尻ポケットから財布を取り出した。
「僕も似たようなもんだよ。というか、日本円がここで使えるかもわからないけど」
「ああ、その点は大丈夫だよ」
イソダさんが、タイミングよく会話に割って入る。
「この市場では、大抵の世界の貨幣が使用可能だからね」
僕と蒼梧は財布の中から紙幣と硬貨を全て取り出し、金貨の脇へ並べた。
お互い、持ち合わせは数千円。
薬の正確な値段はわからないが、到底足りるとは思えない。
実際、イソダさんは腕を組んで、うーんと唸ってしまっている。
何だか申し訳ないが、こちらだって必死だ。
ここで引き下がるわけにはいかない。
どうしたものかと僕らが頭を悩ませる中、イソダさんは僕らの世界の紙幣へ手を伸ばした。
印刷された北里柴三郎をしげしげと眺め、呟く。
「そう言えば、お札のデザインが変わったらしいね。僕が居た頃は、千円札は夏目漱石か野口英世だったんだけど」
アジア系の見た目にイソダという名前、そして今の発言——
「あのう……ひょっとして、イソダさんは……」
「うん。君達二人の見た目から、そうじゃないかとは思ってたんだけどね——」
そう言って、彼——磯田さんは、にっこりと笑った。
「——僕はそもそも、君達の世界の生まれなんだ」