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ライブには僕を含めてだいたい三十人くらいしかいなかった。いや、三十人も居たというべきだろうか。古城カレンさんの配信にはいつも多くて三人〜四人ぐらいしか来ない。だから、多い時の十倍もの人数が来てくれたということだ。しかし、この場にいる観客全員が彼女のファンというわけではないだろう。なぜなら、『トランスジェンダーアイドル』と検索をかければ、たくさんの人がいろんな意味で興味を持っていることが過去の僕の調べによってわかっているし、何より、右斜め前をチラリと見てみると、ニヤけながら話している男二人を見つけた。すぐ近くなので会話が僕の耳まで聞こえてくる。
「オカマのアイドルなんて新しいよな。」
「わかる。どんな見た目してるんだろうな。」
僕の被害妄想でなければ、この二人は内心彼女をバカにしている。なんだかふざけて聞こえるからそう思った。だけど、ライブ会場に観客として来ているということはチケットを買ったということだ。なら、アイドルにもその分のお金は入るのだろうか?
色々と思考を巡らせているうちに開演時刻になった。
「はじめまして〜、トランスジェンダーアイドルの古城カレンです♡。」
あ、カワイイ。おそらく緊張しているのだろう。声が少し震えている。
「みんな今日は来てくれてありがとう。楽しんでってね♡」
歌って踊る彼女はかわいくて、きれいだった。ああ、やっぱり好きだ。あんまり聞いたことのない曲ばっかりだけど、来てよかった。
彼女が歌って踊ってる間、僕はこのときのために買ったオレンジ色のサイリウムを振っていた。