「最後の曲は、『ママへ』、です。」
ライブが始まってから、後少しで時計の長針が一周するという頃、笑顔で彼女はそう言って、また歌いながら踊った。
あの日、テレビのアイドルはキラキラしてた。
あの日、アイドルという言葉を知った。
アイドルになったらキラキラできるから、
私は歌って踊るの。
ねぇ、見てる?
私、大きくなったよ。
ねぇ、聞いて。
私、アイドルになったよ。
ねぇ、褒めて。
私、キラキラしてるでしょ?
ねぇママ、愛してるよ。
ねぇママ、大好きだよ。
ねぇママ、ありがとう。
ねぇママ、私、夢が叶ったよ。
後で知ったことだが、最後の『ママへ』という曲は古城カレンさんが作詞作曲したらしい。
「今日はみんな、来てくれてありがとう♡。バイバイ。」
手を振りながらウインクをして去っていく彼女はかわいかった。
その日の夜は彼女の夢を、見ていた。夢の中の彼女はライブの時と同じように歌って、踊っていた。