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ー条件ー
夜は、まだ終わっていなかった。
哀は、名前をもらったあとも、少し距離を取って立っていた。
逃げない。
でも、近づきもしない。
その様子を、炭治郎は静かに見ていた。
炭治郎「……一つ、話をさせてください」
その声に、場の空気がぴんと張る。
善逸が小声でささやく。
善逸「え、なにその“大事な話あります”感…嫌な予感しかしないんだけど……」
花子くんは、腕を組んだまま。
花子くん「ま、鬼殺隊さんの言い分も聞かないとね」
炭治郎は、哀の前に立つ。
剣には触れない。
でも、背筋はまっすぐだった。
炭治郎「俺は、鬼は人を喰う存在だと思っています」
はっきりとした言葉。
哀の肩が、びくっと揺れた。
炭治郎「だから、さっきもそう言いました。
危険だという事実は、隠せないからです」
寧々が、そっと炭治郎を見る。
炭治郎は、一度息を吸った。
炭治郎「……でも」
声が、少しだけ柔らぐ。
炭治郎「俺には、鬼になった妹がいます」
その場が、しんと静まった。
花子くん「……妹」
炭治郎「禰󠄀豆子といいます」
炭治郎は、まっすぐ前を見たまま話す。
炭治郎「妹は、鬼になっても
人を喰いませんでした」
善逸が、驚いたように目を見開く。
善逸「……え」
炭治郎「…鬼としての本能は、あったはずです」
炭治郎「それでも、禰󠄀豆子は最初から。人を守る方を選びました。」
その言葉は、誇らしさよりも
静かな確信に満ちていた。
炭治郎「だから俺は知っています」
炭治郎「“鬼でも、選ぶことができる”ということを」
哀の目が、わずかに揺れる。
けれど炭治郎は、そこで止まらなかった。
炭治郎「ですが――」
声が、再び引き締まる。
炭治郎「それは、無条件に信じていいという意味ではありません」
花子くんが、静かに息を吐く。
花子くん「……なるほど」
炭治郎「だから、条件を出します」
炭治郎は、哀をまっすぐ見た。
炭治郎「人を喰わないこと。人を傷つけないこと。」
一拍置いて
炭治郎「そして、もし自分が危ないと思ったら、必ず知らせること」
哀「……もし……それでも……抑えられなかったら……?」
かすれた声。
炭治郎は、逃げずに答えた。
炭治郎「その時は」
一瞬だけ、目を伏せて。
炭治郎「俺が、止めます」
それは脅しじゃない。
覚悟だった。
寧々は、胸の前で手を握る。
寧々「……炭治郎くんは……禰󠄀豆子ちゃんを、最初から信じたんだよね」
炭治郎「はい」
即答だった。
炭治郎「でもそれは、妹が“選び続けていた”からです」
花子くんが、小さく笑う。
花子くん「鬼を信じるんじゃない」
花子くん「“選ぶ意志”を見るってわけだ」
炭治郎は、うなずいた。
しばらくして。
哀が、ゆっくり口を開く。
哀「……私も……選びたい」
震えているけれど、逃げない声。
哀「……人を、喰わない」
寧々が、ぱっと笑った。
寧々「うん。一緒に選ぼう」
花子くんが、哀の肩に軽く手を置く。
花子くん「じゃ、決まり」
花子くん「哀は――条件付きで、仲間」
善逸「条件付き仲間って言い方ぁ!?心臓に悪すぎるんだけど!!」
けれど、その声には
どこか安心が混じっていた。
炭治郎は、静かに頭を下げる。
炭治郎「……よろしくお願いします」
哀は、ぎこちなく――
それでも、確かにうなずいた。
こうして
哀は、
**“選ぶことを許された鬼”**として
仲間になった。