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その夜の雄大さんは、いつにも増して激しく私を求めた。
いつもは私の反応を窺いながら、激しいけれどゆっくりと時間をかけて可愛がってくれる。けれど、今夜は焦りを感じた。
少し乱暴な愛撫、がむしゃらな腰つき、何度果てても収まらない興奮。
言葉少なに私を揺さぶり、絶頂に導き、自らも昇りつめる。
身体が休まるのはほんの一瞬で、また快感に沈む。
私の膣内奥深くが雄大さんの熱で満たされる。
「子供……が出来たら——」
雄大さんが動きを止めた。私は肺に酸素を送り込むのに精いっぱい。
「子供が出来たら、誰にも文句を言われずに済むかな」
嘘————!
私の膣内から雄大さんが出ていったかと思ったら、着けていたコンドームを外した。
「待って——」
「俺の子供を産んでくれるよな——?」
両足を肩に担がれ、抗えない。
雄大さんを受け入れ、溶け合う水音が寝室に響く。
「ゆう——だ……」
「馨っ——!」
容赦なく突き上げられ、涙で視界が歪む。
「しめ……んな……」
雄大さんが私に感じて呻く声に、更に興奮してしまう。
「くそ——っ! もう——」
私の身体の、誰も触れたことのない場所が、雄大さんで満たされる。一滴もこぼさないように、雄大さん自身で封をして動かない。
「雄大……さんの……バカ……」
「馨の前じゃ、俺はただの大馬鹿野郎だな」
そう言って笑う雄大さんは、とても満足そうだった。
*****
「玲と結婚……ねぇ」
シャワーを浴びた後、雄大さんがポツリと言った。
「想像できないな」
「どうして? 二年も付き合ってたんでしょう?」と、私は乱れたベッドを整えながら、聞く。
「そもそも結婚を意識して付き合ってたわけじゃないし、忙しくて二か月くらい会わなくても平気な感じだったし?」
「うわ、サイテー」
「そうは言っても、玲だって仕事に夢中だった時期だし、俺の勝手でそういう付き合いをしてたわけじゃあないぞ」
「ふぅぅぅん」
春日野さんは雄大さんほど割り切れてなかったみたいだけど?
「何だよ」
「別に?」
背中をドンッと押されて、私は前のめりになってベッドに転んだ。
雄大さんが上から圧し掛かる。
「言っとくけど、俺が結婚したいと思ったのはお前が初めてだからな」
「……セックス目当てだったくせに」
「それだけで、結婚なんて言い出すかよ?」
「どうだか」
ギューッと力いっぱい抱き締められて、苦しさにもがく。
「お前は俺の他にも結婚したい男がいたみたいだけど? 俺はお前だけだからな」
「なに、それ。妬いてるの?」
「まさか」
頭のてっぺんを顎でぐりっと押されて、思わず身を屈める。
「痛い!」
「なぁ……」
「なに!?」
「何でもない」
「はぁ?」
パッと手を離し、雄大さんは布団に入る。
「言いかけてやめないでよ」
「何でもない」
「気になるじゃない」
「気にすんな」と言って、私に背を向ける。
「そう言われたら、尚更気になる」
「——じゃあ、気にしてろ」
「は?」
「ずっと、気にしてろよ」
「何の罰ゲームよ」
雄大さんがむくりと起き上がって、私を見た。真剣な表情で。
「俺と結婚したら、教えてやる」
え————。
「だから、あの婚姻届を出すまでずっと、気にしてろ」
「そんなの……」
婚姻届《あれ》を出せる日なんて、くるはずない————。
「絶対、教えてやるから」
雄大さんの大きな掌が私の頬に触れる。
「雄大さ——」
「だから、ずっと気にして待ってろ」
俺を信じろ、と聞こえた気がした。
『絶対結婚するから、待っていろ』と。
「えらそー」
「えらいんだよ」
唇が重なる。
「俺は立波リゾートの社長になるんだから」
信じてる、の代わりに言った。
「社長夫人もえらそーな響きよね」