テラーノベル
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炎甲蜥蜴は胴体から真っ二つになり、そのままピクリとも動かなくなった。
その断面は、真っ黒に焦げている。
「これ……私がやったんですか?」
当の本人であるミアも、信じられないとばかりに呆然とつぶやいた。
──パキッ。その時、乾いた音が鳴った。
ミアの剣に亀裂が走り、そのまま刀身が崩れ落ちていく。
「…………え?」
その無防備な一瞬を、最後の|炎甲蜥蜴《フレイムリザード》は見逃さなかった。
無防備なミアに、炎甲蜥蜴が牙を向いて襲いかかったが──、
「やれやれ。無粋ですね」
リタの大鎌が閃き、炎甲蜥蜴を一瞬でなます斬りにした。
そうして、依頼にあった魔物の討伐を終えた俺たち。
「先生……これまた、とんでもない人たちを見つけ出しましたね」
「そうだろう。未来の剣聖──そう思っていたが、案外、そう呼ばれる日も遠くないかもしれないな」
俺は目を丸くしたままのミアを、どこか誇らしい気持ちで見守るのだった。
***
見たこともない能力で格上を屠り、見事に力を見せつけたミアは──
「ごめんなさい……」
こちらに戻ってくるなり、消え入りそうな声で頭を下げた。
「何を謝ってる?」
「剣を壊してしまいました。それに最後の一体は、結局リタさんの力を借りてしまいましたし……」
ミアは、こちらの様子を伺うようにそんなことを言う。
(やれやれ。この自己肯定感の低さは問題だな──)
「ミア、今やることは謝ることじゃない。自分の成果を誇れ」
「……誇る?」
「ああ。見てみろ」
俺は、ミアが一刀両断した|炎甲蜥蜴《フレイムリザード》の傍にかがみ込む。
圧倒的な熱によって焼け焦げた、迫力ある断面だった。
「ミア、これをおまえがやったんだぞ」
「……! その、なんだか実感がなくて」
「見事な戦いぶりだった。もっと素直に喜んでおけ」
俺は、ミアの頭に手を伸ばす。
「よくやった、ミア」
頭へ手を置き、柔らかな髪をくしゃりと撫でる。
ミアは驚いたように肩を揺らしたが、すぐに目を細めた。
「あ、悪い。昔、妹にしていたのと同じノリで」
「いえ、気にしないでください。その……嫌では、ありませんから」
そう言いながらも、ミアは俺の手から離れようとしなかった。
「──ご主人様? いつまでいちゃついているので?」
「いちゃ? ……成果を出したやつを褒めていただけだ」
「私も一体倒しましたよ。頭を撫でながら褒めてください」
「リタにとっては朝飯前だろ。それでも助かった。おまえが後ろにいたから、最後までミアに任せられた」
「……褒められると、これ以上ねだりにくいではありませんか」
リタは不満そうに唇を尖らせたが、悪い気はしていないようだ。
そんなリタへ苦笑を返しながら、俺はミアの折れた剣へ目を落とした。
「ミア、少し剣を見せてくれ」
「はい」
俺はミアから受け取った剣を、注意深く観察する。
亀裂は刃の表面からではなく、芯から外側へ広がっているようだった。
(外からの刺激を受けて壊れた時とは別物だな)
「ミア、体はもう平気か?」
「はい。熱さもほとんど収まっています」
「これまで同じような熱を感じたことは?」
「ありません。その……アドバイス通りに剣に力を戻すイメージで斬ったら、一気に楽になったんです」
ミアは不思議そうに、自分の胸元へ手を当てた。
(あのとき剣を覆っていた炎は、やはりミアの身体へ流れ込んだ魔物の魔力──そう考えるのが自然だな)
普通の人間なら、魔物の魔力を体内に取り込むことなどできない。
無理に取り込めば、自身の魔力と競合して、あっという間に魔力酔いに陥るだろう。
だが、ミアには競合するはずの魔力が存在しない。
《魔力ゼロ》だからこそ、どんな魔力でも自由に取り込むことができるのだ。
それどころか、取り込んだ魔力を攻撃へ転用できるとなれば──戦術の常識さえ覆しかねない才能だ。
(『空っぽな器』──なにが外れスキルだ。まさしく神の恩寵──これは検証のしがいがあるな)
「魔力の吸収──そして転用、か。そんな芸当、熟練の魔術師にも不可能だな」
「そう……なんですか?」
「ああ。喉から手が出るほど欲しがるやつが、ごまんといる。ミア、それがおまえのスキルだ」
俺は折れた剣をミアへ返す。
「それに、スキルだけであの一撃が出せたわけじゃない。あれだけの力を剣で扱えたのは、おまえが五年間、剣を振り続けてきたからだ」
「私の、五年間が……?」
「ああ。おまえが磨いてきた剣は、なに一つとして無駄じゃない」
ミアは、剣だこで硬くなった自分の手を見つめた。
やがて、その表情がわずかにほころぶ。
「……正直、まだ信じられません。それでも──シードさんがそう言うなら」
「なら、あの熱と、剣へ力を戻したときの感覚を忘れるな。いずれ世界のほうがおまえを放っておかなくなるさ」
「そう……だといいですね」
ミアは折れた剣へ目を落としたまま、かすかに頷く。
だが、次に顔を上げたとき、その目から迷いは消えていた。
「もし本当に世界が私を求めるようになっても、私が剣を振るうのはシードさんのためだけです」
「大袈裟なやつだな」
俺が苦笑しても、ミアは笑わなかった。
ただ俺を、じーっと見つめていた。
──その時、地鳴りとともに採掘口から熱風が吹き出した。
奥から、先ほどの個体を二回りは上回る炎甲蜥蜴が現れる。
「これは……変異種か?」
武器のないミアを庇い、俺とリタが前へ出る。
「ご主人様。私が──」
「いや、たまには俺にも仕事をさせろ。気になることもあるしな」
俺はリタを制し、神経毒を塗った短剣を抜いた。
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コメント
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**美月ゆめか🌸の感想** わああ第11話読み終えたよ〜!!🔥✨ ミアちゃんが自分の力で炎甲蜥蜴倒したシーン、マジでかっこよすぎた!!しかもその後のシードさんとの頭ポンポン…尊すぎて悶えた😭💕 「嫌では、ありませんから」って照れながらも離れないミアちゃん、もう完全に信頼してるじゃん!? リタさんのヤキモチも可愛くて、三人の空気感が良すぎる〜! そしてまさかの《魔力ゼロ》がチートスキルだったって展開に鳥肌…!!次回の変異種戦、めっちゃ気になる!!🔥