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「おはよーやっちゃん」
「おはよ!ねぇこのニュースみた? 」
やっちゃんがスマホを差し出してくる。SNSにあがっている今朝のニュースだ。
「ストーカー?」
「うん。この近所らしいよ」
「やっちゃん気をつけなよ」
「いや、私より気をつけるべきなの魁だからね!」
急な大声にびっくりする。やっちゃんの顔を見ると鬼の形相になっていた。
「魁この前先輩に告られてたし!自分の顔面偏差値わかってる?」
「下の下だと思ってるけど」
「あなたが下の下なら私はどうなっちゃうの?言っとくけど魁って本当に美人なんだよ!防犯ブザー持つとかして対策しないと!」
余計なお世話、とはこのことを言うらしい。自分だって美人のくせにその自覚がないらしい。でも、この純粋なところが彼女のいいところだ。
「まぁ、気をつけるべきなのは皆同じでしょ」
「確かにね」
ストーカーなんて自分とは無縁のもの。今までずっとそう思っていた。
「バイバイ魁」
「またね、やっちゃん」
だってそうだ。漫画的お約束展開をするなんて、誰も思わないだろう。
(ま、学校から家まで近いし普通に帰ればなんも無いでしょ)
フラグ
【魁ちゃん、コンビニで単三電池買ってきてくれない?ソラのおもちゃに必要なの忘れてて💦】
【了解】
今から行っていちばん近いコンビニは学校方面へ少し戻らないといけない。道を引き返してコンビニを目指す。
「わっ!?」
裏路地に引き込まれた。強い力だったし、不意打ちすぎて気づけなかった。恐怖で声が出ないというのは、こういうことを言うんだと思う。
「やっぱり君…!この前から物色してたけど君が1番最高品質だ!」
気持ち悪い。大きい声。大人。大きい手。全部が私の体から拒絶反応を起こしている。
「やめて!」
「声も可愛い!やっぱり君だ、君なんだよ!名前はなんだ?身長は?体重、血液型、全部が知りたい!」
言ってること全てが気持ち悪い。助けて。だれか、悠磨、柊磨。お兄ちゃん。
その瞬間、助けを求めた中でお兄ちゃんはもう存在しないことを思い出した。いや、忘れていたわけじゃない。ただ、目を逸らしてきたことだった。私がお兄ちゃんを殺したようなものなのに、なぜ私が助けを求めようとしてるんだろう。
「ばかみたいだ…」
これはもしかしたら、罰なのかもしれない。
私という存在の、罰なのだ。
「おいクソ野郎」
透き通った声。よく聞いたことのある声。大きいけど落ち着く声。
「そいつから離れねぇとどうなるかわかってんだろうなぁ!」
「ひいっ…!?す、すみませんでしたーッッ」
「チッ…マジでクソ野郎じゃねーか」
「…柊磨」
大きい体。大きい声。大人だから当たり前。さっきの人もそれが当たり前なんだ。でも、柊磨とは違った。柊磨の方が安心する。
「すまん、最近不審者がいんの知ってたのに寄り道させて。嫌な予感がして探したんだ。遅くなってごめんな」
大きな手で抱きかかえられる。暖かい体でほっとする。でも、そんな安心感とは裏腹の言葉が出た。
「なんで、助けたの…?」