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「えっと…」

ここで海琴って言うのは流石にやばい。

でも旅館なんて言ったら…

う〜ん…

どうするべきか…

ひたすら心の中で唸り声を漏らすも、

何も解決策が浮かばない。

こうして時間が経っている最中にも畑葉さんはきっと僕を疑っているに違いない。

やっぱり本当のこと言うしか無いか…

「ごめん、畑葉さん…」

「僕、謝らなきゃいけないことがあって…」

「なに?」

「今日のお出かけを提案したの、実は僕じゃなくて海琴なんだ」

「それでさっき海琴から旅館予約してあるからって連絡来て…」

あぁ、言ってしまった…

ついに言ってしまった。

少し俯きながらで、

畑葉さんの顔を見れないでいると

「なんで古佐くんが謝るの?」

なんて言葉が飛んでくる。

「え?」

「別に悪いことしてないじゃん」

「それにお出かけの内容とか、海琴ちゃんが考えてても私は古佐くんと一緒だから楽しいって思えてるんだよ?」

正直に言うとかなり心に刺さった。

とてもいい意味で、だ。

涙が溢れそうになった。

少し優しくしてくれただけなのにチョロいな僕…

なんても思った。

「でも、私が思うに…」

「内容は古佐くんが考えたんでしょ?」

「…うん」

なんで分かったんだろう。

「やっぱり!!」

「チョイスが古佐くんらしいもん!!」

「だって水族館の時なんて自分も楽しそうにしてたじゃん!!」

途端に楽しそうにする。

でも…

確かに、僕は水族館が好きだ。

もしかして自分の行きたい場所を畑葉さんと行きたいと思っていたということだろうか。

「知ってる?古佐くん!!」

「なに…?」

急にそんなことを言われ、

疑問で頭がいっぱいになる。

「私、今めっちゃ幸せ!!」

満面の笑みでそんなことを言う。

あぁ、どうしよう…

好きにならないなんて僕には無理だ。

不可能とまで言いきれそうなほどに。



「ねぇ、ここ予約したのって…」

「うん…」

「僕じゃなくて海琴…」

今まで気づいてなかったけど、

もしかして海琴ってお金持ち?

海琴に貰った住所の場所に行ってみるとあったのは大きな和風を纏った旅館。

外見だけでも高級そうな雰囲気がしている。

お嬢様…

恐ろしい……



「部屋は案外普通なんだね〜!」

部屋に入って一言、畑葉さんがそう言う。

確かに僕も思った。

外見は高級そうなのに対して内見は至って普通。

だけど色々置いてある家具達が煌びやかなものばかりだった。

高級でも平凡でもない旅館…

不思議……

それより僕は1つ、

海琴に物申したいことがあった。

それはなぜ僕と畑葉さんの泊まる部屋が2人で1部屋なのかという点。

「古佐くん!!饅頭置いてあるよ!」

「これ食べていいのかなぁ…」

「…食べちゃお〜!!」

畑葉さんがそう話しかけているような独り言を零している最中、僕は海琴にメッセージを送る。

と、すぐに返信が来る。

『サービス!!』というメッセージと共に白猫がウィンクしているスタンプが共に送られてきた。

サービス…

いらないこんなサービス……

でも一応布団は2つある。

安心。



「畑葉さん?」

「寝たの?」

電気を消して2秒も経っていない。

相当疲れていたのだろう。

そんな中、僕は眠れないでいた。

今日は攻めた行動をするなんて決意したが、

全く出来なかった気がする。

というか仕返しされたし。

ふと、カーテン越しに何かが映った気がした。

もしかしてお化け…?

そうビクビクしながらカーテンを開ける。

と、そこに映ったのは満開の桜の木々たちと前が見えないほどに吹く、桜の嵐。

今の季節は冬。

なのにも関わらず。

でも雪景色はあった。

あったはあったが…

桜の嵐のせいで景色はよく見えない。

「夢…?」

そう呟きながら頬をつねるも、痛い。

夢じゃない…?

不思議に思いながら窓を開ける。

と、残念なことに僕が先程まで見ていた木々と嵐は空気に染まってしまった。

なんだか幻を見ていたような…

そういえば前にもこんな景色見たような…

いや、気のせいだろうか…



「古佐〜くん!!」

「朝だよ〜!!」

「起きて〜!」

ぺちぺちと僕の頬を叩く畑葉さん。

気づくと朝だった。

気づかないうちに寝てしまったのだろうか。

というより昨夜見た、あの景色は一体…

「古佐くん!早く水族館行こ!!」

そう言われ、旅館を出る。

そういえばクリスマスは25日もクリスマスと言っていいのだろうか?

でもイルミネーションは一応やってるし…

そう思いながら畑葉さんと共に昨日の水族館へ向かう。


「プラネタリウム楽しみだね!!」

そう言いながら畑葉さんはクラゲを見つめる。

またこのゾーン…

何回見に来るんだろうか…

流石に好きすぎる。

それよりもプラネタリウムの時間まであと少し。

なのにも関わらず、

畑葉さんは動きそうに無かった。

いや、いつもみたいに僕が受け手じゃダメだ。

今日は攻めの行動を見せるんだろ?

僕!!

頑張れよこれくらい…!!

そんなことを心の僕に言われ、畑葉さんの腕を引っ張ってプラネタリウム会場へ向かう。

「わわっ…!!」

「クラゲちゃん…」

「まだ見てたかったのに…」

畑葉さんはというと、

物寂しげに去り際寸前までクラゲを見ていた。

僕が狐になった日は、君の命日だった。

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