テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
照の助手席は久しぶりだった。撮影でも乗ってなかったと思う。
相変わらず安定感のある走り。
佐久間は照の横顔を横目で見る。
(やっぱ、かっこいいな。)
きゅんとしてしまった。
「何見てんだよ。」
佐久間の視線に気づいていた。
分からないように横目で見ていたのに、なぜわかったのだろう。
運転していたのにこっちも見えていたということか。
(化け物か?)
怖い怖いと自分の体を抱いて腕をさすりながら、クスっと笑った。
「何笑ってんだよ。」
「いや…だって、よくオレの視線に気づいたなって思って。それと、かっこいいなって思った。」
佐久間は心の中で思った事を誤魔化すように苦笑いしながら……でも思ったことをちょっと恥ずかしいけど、正直に言ってみた。
言われた照も恥ずかしそうだった。
「やめろよ。からかってんのか?」
ちょうど赤信号になって、こちらをちらっと見る。
佐久間を見ること数秒…
見られた佐久間はドキッとした。
「何?」
「飯、どうする?」
少しぶっきらぼうに言う。
その時ちょうど佐久間のお腹がグーっと鳴った。
照に見つめられた数秒間、何が起こるのかわからなくてドキドキした。
ホッとするなり、鳴ったお腹。
ある意味有難かった。
「オレ、お腹ペコペコ。何食べようかなぁ〜。うーん…照に任せる。」
「ならさ、うち来ない?」
急な展開。
でも、予想はしていたし、許容範囲内。
「え、あ…うん。行く。」
照はアクセルを踏み込んだ。
1秒でも早く2人きりになりたかった。
佐久間は窓のところに肘をつき、人差し指を噛む。
そわそわした時につい出てしまう癖。
再び照の横顔を見た。
横顔からは何も汲み取れない。
照が運転する車はスピードに乗ってどんどん走り続ける。
佐久間を連れ出し、自分の家に向かう照。
あの日泣いていた照とは違う。
なにか吹っ切れたようにも見えるし、揺るぎない気持ちの表われのようにも見えた。
数日で気持ちを切り替え、行動する照。
さすが、うちのリーダーだなって、納得する佐久間。
でも、この行動力に抗えそうにない佐久間はある意味ピンチ。
照の部屋に行って、無事では帰れない気しかしない。
そうこう思いを馳せている間に、照のマンションの駐車場に着いていた。
急にドキドキと高鳴る鼓動。
(やばっ、照んち来ちゃった…オレ、大丈夫かな?)
佐久間得意のキャパオーバー。
「行くぞ。」
自分の分と佐久間の分の荷物を持って、エレベーターに向かう。
ドキドキしていることを、照に悟られたくない。
でも、耳まで赤くなってきて、平静なんて保てない。
高層マンション。
何階か見てる余裕もないままに、
「降りるぞ。」
照に促される。
ドアが開き、おそるおそる入っていく佐久間。
ガチャ。
鍵が閉まる。
ただそれだけなのに身を竦めてしまう。
「ソファーでくつろいでて。」
照の家は初めてではない。
何度か来てるはずだけど、久しぶりすぎて知らない部屋みたいだ。
照は奥の部屋に入っていった。
照が帰ってくるまでの間、部屋の中を見回す。
(やっぱダンベルは転がってるよねぇ〜)
クスっと笑ってしまった。
照らしい部屋だと思った。
佐久間の家と違って、無駄なものがなにもない。
きっと佐久間のようなオタク部屋があるとするならば、そこはトレーニングルーム。
一面鏡張りで、いろんなトレーニング用の器具が置いてありそうだなって思った。
照が戻ってきた。
手にはタオルと着替えらしきもの。
「今日は泊まっていくよな?」
ビクッ!
帰ることなんて出来ないとわかって来たし、覚悟もしてた。
で、現実となるとビクついてしまう。
「うん…泊まってく。」
上目遣いで照を見る。
照は微笑んでいた。
「よし、飯の前に風呂入ってこいよ。」
「うん、じゃあお先に失礼しま〜す。」
佐久間はバスルームで服を脱ぐ。
「あ……」
左の胸の赤い跡は、薄くなったとはいえ、白い肌の佐久間には十分すぎるほど赤みをおびていた。
(これ、照が見たら怒るかな?)
跡をそっと指でなぞってみた。
めめがつけた跡。
俺のものだという証。
(オレはめめのもの?)
考えても分からないので、とにかく、佐久間お得意の分からないことは汗と一緒に流す作戦。
シャワーに打たれる。
ピンクの髪が水に濡れて、雫が滴り落ちる……
白い肌……
指先や耳等の先端だけ赤みをおびる。
唇も赤くなる。
ふと、めめとのキスを思い出す。
唇を指でなぞる。
(この唇は今日、誰のものになるんだろう…)
めめのもののままか。
それともか照に上書きされるのか……
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!