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第95話 「春の練習試合」
2025年5月。
新チームの春。
柳城高校野球部は練習試合の時期を迎えていた。
山下大地主将を中心とした新チーム。
そして。
新任コーチの啓介。
福間監督の隣で初めて迎える対外試合だった。
朝。
グラウンドには少し緊張した空気が流れていた。
対戦相手は県内の強豪。
青峰学院高校。
毎年上位へ進出する実力校だった。
整列。
挨拶。
「お願いします!」
大きな声が響く。
ベンチ。
啓介はスコアブックを開く。
選手だった頃。
何度も座ったベンチ。
だが。
今日は違う。
指導者としての初めての試合だった。
試合開始。
初回。
柳城の先発投手が制球を乱す。
四球。
送りバント。
タイムリー。
いきなり失点。
ベンチに戻った投手が下を向く。
啓介が近づく。
「大丈夫。」
「まだ一回や。」
投手は頷く。
だが。
三回にも失点。
さらに守備のミス。
2対0。
柳城は苦しい展開になる。
啓介は思わず前へ出そうになる。
サイン。
守備位置。
声掛け。
全部やりたくなる。
しかし。
福間監督は動かない。
腕を組んで見ているだけだった。
五回終了。
整備の時間。
啓介が言う。
「何か声を掛けなくていいんですか?」
福間監督は静かに答える。
「山下がいます。」
主将。
山下大地。
グラウンドでは山下が選手を集めていた。
「まだ終わってない。」
「一点ずつ返そう。」
仲間たちが頷く。
その姿を見て。
啓介は何も言わなかった。
六回。
柳城反撃。
二死二塁。
タイムリー。
2対1。
七回。
同点。
スタンドが沸く。
八回。
逆転。
3対2。
九回。
最後の打者。
ショートゴロ。
ゲームセット。
柳城高校。
3対2。
逆転勝利。
選手たちは喜ぶ。
だが。
福間監督はいつものように静かだった。
試合後。
グラウンド整備。
啓介が聞く。
「監督は最初から山下に任せるつもりだったんですか?」
福間監督は頷く。
「主将ですから。」
#前世
shima7a
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「チームを動かすのは主将です。」
啓介は少し笑う。
「自分の時もそうでしたか?」
「そうです。」
短い返事。
しかし。
その一言ですべて分かった。
啓介も。
塁も。
史陽も。
みんな福間監督に育てられた。
だが。
最後にチームを動かしたのは自分たちだった。
夕方。
帰り支度をする選手たち。
山下が啓介に言う。
「コーチ。」
「はい。」
「今日は何も言わないんですね。」
啓介は少し笑う。
「監督に教わったからな。」
山下は不思議そうな顔をする。
その横で。
福間監督が静かにグラウンドを見つめていた。
夏まであと二か月。
新しい柳城高校は。
少しずつ。
自分たちのチームになろうとしていた。
第95話 終
コメント
1件
第95話、読み終えたわ!いやー、春の練習試合いいね。啓介が指導者として初めての試合で「全部やりたくなる」って気持ち、めっちゃ分かる。でも福間監督が「山下がいます」って静かにチームを任せるスタイル、かっこよすぎる。主将がチームを動かす、その美学がグッときたわ。逆転勝ちした後の山下とのやり取りも、なんかじんわりきた。夏が楽しみになる展開やった🔥