テラーノベル
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「ふぅ……」いつものルーティンである勉強を終え一息吐く。
時計に目をやると23時を指していた。
そろそろ寝るか……
寝室に向かおうとする。
その時、インターフォンが鳴った。
こんな時間に誰だろうとモニターを見ると、そこに映っていたのは、ふっかだった。
急いでドアを開けて中に入れる。
「阿部ちゃん…こんな時間にごめん……」
今にも泣きそうなふっかを落ち着かせるようにソファに座らせ、隣に座る。
「大丈夫だよ。どうしたの?」
「照が……佐久間と付き合った……」
ふっかはそう言うと泣き出してしまった。
ふっかは照のことが好き。
俺はその相談にのっていた。
「佐久間がね…俺に1番最初に……伝えたかったんだって……照からも佐久間の相談に……のってくれてありがとうって……俺たちが付き合えたのは……俺のおかげだって…」
そう、ふっかは佐久間の相談にのっていた。
自分が照のことを好きな気持ちを押し殺して。
ふっかは優しいから……優しすぎるから……
佐久間からの相談を断れなかったし、真剣に向き合っていた。
でも、心が折れそうでどうしようもなくて、俺に相談してきた。
真剣に向き合った結果、自分の望まない未来になってしまったようだ。
「ふっか……」
泣き続けるふっかを優しく抱き寄せると、背中を撫でる。
ふっかは俺の腕の中で小刻みに震えながら泣きじゃくっている。
俺なら幸せにしてあげるのに……
ふっかから相談される度にそう思ってた。
俺はふっかが好きだ……
「ふっか……俺じゃだめかな?」
泣きじゃくっていたふっかが驚いた顔をして俺を見上げてくる。
「俺、ふっかのことが好き。俺にふっかのことを大切にさせて欲しい」
「……阿部ちゃん……俺……まだ……照のことが好きだよ……でも俺……ずるいんだ……阿部ちゃんに側にいて欲しい……」
涙を拭ってグスグス言いながら一生懸命伝えてくれる。
なんて可愛いんだろう……
「……ありがとう。今はそれでも良いよ。ゆっくり俺のこと好きになって欲しい」
「うん……絶対に……好きになるから……待ってて!」
ふっかはそう言って、ふにゃっと笑うとギューッと抱きついてきた。
すっかり涙は引っ込んだらしい。
抱き締め返し、「覚悟しといて」と耳元で囁きおでこにキスをする。
「……っ……知らない……阿部ちゃんだ……」
ふっかは不意打ちに顔を真っ赤にして、照れ隠しなのか胸に顔を埋めてグリグリしている。
「可愛いね、大好きだよ……ふっか……」
髪をくしゃりと撫でてやれば、胸に顔を埋めたままコクコクと頷くから、その仕草が何だか可愛くて、可笑しくて声をあげて笑ってしまった。
ふっかに目をやれば、耳まで赤くなっていた。
可愛いね、本当に……
ーーーーーやっと手に入れた
END
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