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* * * *
車の後部座席に上野夫妻を乗せ、翔は駅まで向かっていた。バックミラーを覗くと、波斗は紗世の腰に手を回してずっと寄り添っている。
「先輩、今日はありがとうございました。すごく素敵な式場だったし、なんだかアットホームな式が出来そうです。ねっ、紗世ちゃん」
「本当にね。当日も晴れて外のチャペルで式が出来たらいいなぁ」
「うんうん、そうだねぇ」
この二人はいつもこうなのだろうか……付き合って三年くらいと言っていたけど、三年経ってもこんな自然とイチャイチャ出来るのはすごい気もする。
「気に入ってもらえたなら良かった。精一杯のお手伝いをさせてもらうよ」
「ありがとうございます!」
紗世は波斗に寄りかかると、今日もらった式場とドレスのパンフレットを取り出す。
「ドレスね、池上さんにお願いして星柄のレースを使ってもらうことにしたのよ」
「星柄?」
「そう。私たちといえば星でしょ? 天文サークルだし……」
「あの夜の星空だもんね……嬉しいな……紗世ちゃんがそこまで考えてくれてるなんて……」
波斗がニコニコしながら紗世の頭を優しく撫でると、彼女は気持ち良さそうに目を細める。それからバックミラー越しに翔へと視線を動かす。
「由利さん、今日は本当にありがとうございました。池上さんのドレスのお店も紹介していただけて良かったです。今からとても楽しみです」
突然萌音の話を振られたものだから、翔は驚いたように目を見開く。ただ紗世の目を見れば、何か言いたそうにしている空気が伝わってくる。
「そう言っていただけるとこちらも嬉しいです。彼女の感性は昔から素晴らしかったけど、今はそれに技術力もついてますからね」
「……うふふ、池上さんのことをよくご存知なんですね」
「……もしかして池上さんと何かお話しされましたか?」
翔が尋ねると、紗世は意味深な笑みを浮かべた。
「えぇ、ちょっと。内容は秘密ですけど……でも一つだけポロッと言っちゃうなら、気持ちを伝えるなら今がチャンスかもっていうことかしら」
それから紗世は波斗の手を自分の腹部へ誘導すると、二人は顔を合わせて微笑み合う。
「気持ちは口にしないと伝わらないし、池上さんの場合はしがらみがあるようですからね……それが緩んでいる今がチャンスですよ」
その時ちょうど駅に着き、二人は車から降りた。そして窓越しに頭を下げると、そのまま駅の改札の中へと消えていった。
残された翔は運転席の背もたれに体を預け、紗世の言葉をじっくりと頭で考える。
どんな話をしたのかはわからないが、今がチャンスと言っていた。それは彼女の気持ちが俺に向いていると言うことなのだろうか……。
その時ふと翔の視界に、空に大きく輝く月が目に入った。そしてあることを思いつく。
よし、善は急げだ。あの作戦で行こう。
翔は興奮気味にアクセルを吹かすと、急いで家に向かって車を発進させた。