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☆☆彡.。


待合室の椅子に腰かけ、両手を組んでアンジェラの無事を祈り続けた。こうして祈ることしかできない、自分の不甲斐なさを感じていたら、どこからともなく医者らしき人が出てきて、僕の前に立ちはだかる。彼の着ている白衣が目に眩しい。

僕を見下ろす妙齢の医者の視線の冷たさに、恐るおそる話しかけた。


「……なにか?」


「アンジェラ様をお連れした方とは、貴方でしょうか?」


どこか緊張を含んだ口調で話しかけられたことで、自然と体に力が入る。


「はい。彼女がウチの店でジュースを飲んだ後に、見知らぬ男とぶつかり、今回のことになったので、僕が病院までお連れしました」


「本当に、貴方の仕業じゃないんですね?」


「違います、僕じゃありません!」


慌てて椅子から立ち上がり、医師らしき人に反論した。同じくらいの身長なので、嫌でも目線がかち合う。猜疑心を滲ませたまなざしがぐさぐさ突き刺さり、反論しかけた言葉が宙を舞った。


「私はこの病院の医院長です。アンジェラ様は、当病院の職員と結婚しているわけですが――」


(医院長がアンジェラに『様』をつけている時点で、彼よりも偉い人と結婚したことがわかったけど、それよりも困ったことになったぞ……)


てっきり平民だと思ったアンジェラが、自分よりも地位のある身分だったのも驚きだが、ジュース売りの商人である僕がアンジェラに危害を加えていないことを立証する手立てがない事実に、頭が混乱していく。


「貴方がアンジェラ様に、暴行をおこなっていないことを証明できますか?」


「それは、あの……周りに誰もいませんでしたし、ぶつかった人物は知らない人でした。僕の無実を証明するためには、その人を捜すしかありません」


「もっと詳しく話を教えていただきたいので、ちょっとこちらに来てください」


言いながら医院長が僕に腕を伸ばしたタイミングで、脱兎のごとく駆け出した。


「待ちなさい! 誰か、その男を捕まえてくれ!」


患者がひしめく待合室が功を奏し、人混みに紛れて、うまいこと逃げることに成功した。

大きな病院の建物を背にしながら、時々振り返りつつ、走って店に戻る。もうここでは商売することができないので、急いで撤収をしなければならないと考えた。

息を切らしながら、店を出した通りに着いたところで、足がピタリと止まってしまう。遠目からでもわかる、店内が荒らされた様子にショックを受けた。店に繋がれているラクダのドリームが、心配そうに僕を眺める。


(そりゃそうだ。誰もいない店を見たら、金目のものを物色して持ち去ることをする人間は、どこにでもいるじゃないか)


がっくりと肩を落として、店内に足を踏み入れる。食べ散らかされた旬のフルーツと、金目のものを探すために荒らしたであろう調理場。

お金は絶対に見つからないところに隠していたので、手をつけられていなかったが、まな板や絞り器など、調理器具がかわいそうなくらいに破壊されていて、もう仕事をすることができないのが、嫌というくらいにわかりすぎた。


「なんでこんなことに……」


そう呟いたが、もうひとりの自分が冷静に状況を分析する。嘆いている暇はないと僕の尻を叩いた。追っ手が来る前に、ここから移動しなければならない。出しっぱなしにしているパラソルなど急いで店内に放り込み、店を引っ張ってくれるラクダのドリームに跨った。


「ドリーム、少し急いで歩いてくれ。できるか?」


普段はまったり歩かせることしかしていないラクダなので、急ぎ足というものが理解できるかわからなかったが、僕の様子にただならないものを感じ、いきなり駆け出してくれた。

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