何時見ても苦しい風景
いつもガタンゴトンと揺られ見ていた風景とは打って変わって、お世辞でも綺麗と言えないレベルだった。オフィス街だったシンジュクは、夜景が綺麗だったのに。
電車も何も動いていないからとわざわざ営業にしか使っていなかった車を出し、シンジュク中央病院へ向かった。
『皆さん、無事ですか!』
少し話し声が聞こえる病院に叫んだ。
看護師も出ているのか。寂雷先生が居れば、どうやって対処するだろう。
『せ、先生はもう出てっちゃってね、他の患者さんは看護師さんに連れられちゃって、残ったのは歩けない僕達だけなの。』
黒髪の少年がこちらに来て、状況を伝えてくれた。
『そうか。ちなみに僕達、というのは何人か分かるか?』
んーと、と言い周りを見渡し始めた。
『4人だね。僕とあみちゃん、りりくん、よつつじにーちゃん!』
『えーと、君の名前は?』
『あおばやしれむ!あ、りりくん!』
ぱっと玲夢くんが向いた方には、10歳ぐらいの男の子が立っていた。
『君がりりくんかな?助けに来た、観音坂独歩です。』
癖で名刺を出しそうになったが、ぺこっと頭を下げておいた。
『観音坂…あ!まてんろーのDOPPOさん!?』
『う、うんそうだよ。他の子も連れてきてくれるかな?』
『うわぁ!やっぱりシンジュクはまてんろーが守ってくれるんだ!みんな連れてくるね!』
小さい子も知ってるのか、俺らのこと…
どたどたと足音を鳴らせて、奥の部屋に向かっていった。
『連れてきたよ!よつつじにーちゃんは…連れて来れなかったけど。』
数えたら3人しか居なかった。
『そのよつつじにーちゃんはどこに居る?』
3人は顔を見合わせて、こちらを見て言った。
『1番上の階の集中治療室』
玲夢くんが1番しっかりしてるのか、俺の質問にすんなり答えてくれる。
『分かった。俺が連れてくるな。』
そして、階段で上に上がろうとしたらあみちゃんが引き止めてきた。
『ダメだよ、集中治療室のおにぃちゃんは起きないんだ。』
集中治療室…よつつじにーちゃん、昏睡状態…?
もしかして寂雷先生の!?
『俺が抱えて降りてくる。着いてくるか?』
みんなうーんと考え始めたが、玲夢くんがばっとこちらを見た。
『行く!よつつじにーちゃんにご挨拶しにいく!』
なら…と言って他の2人も着いてきた。
ポケットから出した携帯を開き、寂雷先生宛にメールを打ち始めた。
『件名:シンジュク大規模テロの件について
先生お疲れ様です。病院に着き30分程経った頃です。お忙しいところ恐縮ですが先生に聞きたいことがありまして、連絡を取ったということです。本題に入りますが、子供達3名が見つかりもう1人の衢さんは集中治療室からどう救出したらよろしいでしょうか?先生の担当の方じゃないかもしれないですが、少しでもわかることがあれば教えて頂けると幸いです。
観音坂』
送信、と押し急いで階段を駆け上がった。
『ねー、どっぽさん!今誰に連絡してたの?』
あやちゃんが話し掛けてきた。
『先生だ、寂雷先生。少しでも知っているかもしれないと思ってな』
『寂雷先生?あー!多分よつつじにーちゃんの担当は寂雷先生だったと思うよ!』
それなら良かったと安心したところで、連絡が来た。
寂雷先生か?と思って携帯を出すとまさかのアイツだった。
『件名:らむだちゃんだよ〜ん
そっちは大丈夫かなっ🍬僕のところはまぁまぁ面倒くさいことになってるよん♪
ちなみにひふみんは頑張って戦ってるとこ〜(´艸`o)僕に頼めばいーのに強がって自分で片すっていってるの(`‐ω‐´)ほんと、誰かさんに似てるよね〜😩ま、僕はただ単にオネーサン達がビックリしちゃってるからやってるだけだから💖何かあったらまた連絡するし、ひふみんの補佐になるからねん( ❛ᴗ❛ ♡』
無駄にデコメを使いやがって。鬱陶しい。まぁ一二三が頑張ってるなら、俺も頑張るしかないかと気合いが入ったところで本命の先生から連絡が来た。
『件名:衢くんの件について
独歩くん、無事で良かったよ。そちらこそお疲れ様。本題に入らせて貰うけど、衢くんは昏睡状態なだけで器具を外せば直ぐに亡くなるものでは無いよ。けれどよく分からない状態なんだ。外すのならば、少し気にかけて欲しいかな。器具については独歩くんなら分かるだろう。あまり難しくない構造だったはずだよ。子供達3人と衢くんを頼みました。こちらも出来る限り頑張らせてもらうよ。独歩くん、応援の手配をしてくれてありがとう。
神宮寺』
器具があまり複雑じゃない事に安心し、集中治療室に向かった。
『件名:無事子供達と集中治療室に着きました
今から取り外しに取り掛かります。情報をありがとうございました。このまま会社の車で4人を連れてシンジュクから出ます。ナゴヤディビジョンの方が預けられる場所を開けてくれたので、急いで連れていきます。先生、無理をなさらないでくださいね。
観音坂』
飴村は無視し、器具の取り外しに取り掛かった。
『ねぇどっぽさん、私たちたすかるの…』
沈んだ顔であやちゃんに見つめられた。
『絶対助けられるだなんて言い切れないけど、俺の全力で助けさせてもらう。』
玲夢くんやりりくんもほっとした顔をして、微笑んでいた。
カチャカチャと器具を外していく。うちの会社のものでないものなんてほとんどだけれど、医療機器メーカーに務めていたら正直簡単だった。
カチャン、
全ての器具を外し終わった。
『外し終えた。急いで降りて、シンジュクから逃げるぞ。』
『うん!ほら、りり早く!』
『あ、』
急いでと言ったから皆が急な階段をものすごく早いスピードで降りていた。
『すまん、自分のペースでいい。怪我をした方が危ないからな。』
『怪我…うん。出来る限り急ぐね!』
『あぁ、それでいい。』
笑うのは苦手だが、自然に微笑んでいた。
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