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人が嫌いだ。
嫌いなんて言い過ぎかもしれないが、少なくとも得意ではない。
昔からみんなが欲しいものは別に欲しくなかったし、みんなが面白いと言うものは大して面白く感じなかった。
何となく、人と価値観とか感性が違うんだなと思っていた。
でも、学校というものは団体行動が付き物な訳で。
せめてあぶれ者にならないように、周りの顔色を伺って、なるべくみんなに合わせてきた。
でも、中三のある日、同級生にこう言われた。
「吉田ってさ、たまに空気読めてないよな。」
その人にとっては、大した意味もなく、悪気もない言葉だったのかもしれない。
でも、必死に取り繕ってきた俺にとっては大きな枷になってしまった。
それから中学卒業まで、遅刻や早退、保健室登校なんかを繰り返し、やっとの思いで卒業した。
親に高校は大丈夫かと心配されたが、これ以上親に迷惑をかけたくない。
あまり同じ中学の生徒がいなそうな高校を選び、進学した。
高校では取り繕うのをやめた。
最小限の会話に留め、ほぼ一人でいることが多かった。
休み時間はこうして、自分の机で好きな作家の小説を読む。
耳栓代わりにイヤホンをして、外の世界をシャットダウンする。
自分の世界に入れる、この感覚が好きだ。
「……ねぇ、吉田くん。」
「へっ……、?」
自分の世界に没頭していると、不意に肩を叩かれ変な声が出てしまった。
振り返るとクラスメイトの女の子。
あまり人と関わってないから、名前もぼんやりとしか分からない。申し訳ない。
「ど、どうしたの、、?」
「あ、いや。吉田くん今日さ日直でしょ?先生が職員室までノート取りに来てくれって。」
「あ、そうなんだ……。ありがと、ね。」
変な声が出てしまった恥ずかしさと、久しぶりにクラスメイトと喋った緊張で少し体が強ばってしまう。
女の子に変な気を使わせないよう、急いで教室を出た。
彼女、凄く気まずそうにしていた。
話しかけにくくて、本当にごめんね。
走らない程度に、職員室へ急ぐ。
ふと、通りかかった隣のクラスの教室内に目が止まった。
自分のクラスは割と普通だが、隣のクラスは所謂、陽キャと呼ばれるようなチャラい人達が多い。
今も、1つの机にみんなで集まり、廊下まで響く大きな声で騒いでいる。
男女合わせて10人ほどのグループだろうか。
みんな制服を着崩したり、髪を染めたりして、少し目に毒だ。
そのグループの中心にいる男、彼のことは俺でも何となく知っている。
確か去年の体育祭、リレーのアンカーを任されキャーキャー騒がれていた人だ。
ああいう人とは、一生関わることないんだろうな。
そう思いながら、再び職員室へと足を進めた。
自分が嫌いだ。
有難いことに容姿は悪くはないと思っているし、一通りのことは人並み以上に出来た。
だからだろうか。色んな人に声をかけられ、遊びに誘われているうちに、あまり良くないグループに定着してしまった。
目立つ見た目のせいか、派手なことが好きだというレッテルを貼られている。
楽しいことは好きだけど、周りに迷惑をかけるのは勿論嫌だし、何か物事について考えたり、読書したりする静かな時間も実は好きだ。
でも、周りはそれを許してくれない。
外見ばかり見て、本当の俺を見てくれる人はどこにもいないのだ。
今こうして俺の机の周りに集まっている奴らも、俺の外見しか見ていない。
薄っぺらい関係だ。
「なー!今日の合コン、勇斗来るっしょ!?」
「勇斗来ねぇと始まんねーもんな!」
耳が痛くなるくらい大きな声で言われ、軽く小突かれる。
なんで行くこと決定してるんだ。俺の意思はどこにあるんだよ。
正直、合コンなんて楽しいと思ったこと全くない。
それでも俺は今日も流れに身を任せて行ってしまうのだろう。
ハッキリと断ればいいのに。
それが出来ない自分が嫌いだ。
「あの時のお前ヤバかったよな笑」
「はぁ? お前の方が頭おかしいだろ!笑」
くだらないやり取りが俺の頭上で行われている。
会話の内容に飽き飽きして、ふと廊下を見ると、そこに1人の生徒がこちらを見て立っていた。
明らかに嫌そうな顔をしている。
うるさい奴らだと思われているに違いない。
こうしてまた、派手な人間というレッテルを貼られるのだろう。
俺は一切、騒いでいないのに。
そんなことを考えていると、その生徒は廊下を歩き出してどこかへ行ってしまった。
何となくその子の後ろ姿を目で追いながら、「ああいう一人で行動している子って何考えているんだろう。羨ましいな。」と思うのだった。