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#おんりー
るま。
67
#ドズル社
雪#雪だるま❄️☃️
938
なななす
1,157
🖤月影紫音🌙
348
5話スタート▶️
チュンチュンと鳥のさえずりが響く、爽やかな朝。
昨日の冷たい涙を拭い去るように、琥珀は姿鏡の前で何度も頬をパンパンと叩いた。
「よしっ……! 今日は私の大好きな、調理実習がある日……! 落ち込んでちゃダメだ、笑顔でいこなきゃ!」
エプロンと三角巾をカバンにしっかり詰め込み、水色の猫耳をピンと立てて元気よく家を出る。
ドズル社学園の校門をくぐると、靴箱の前で待っていたのはおらふくんだった。白髪を朝日にはためかせ、琥珀を見つけるとパッと顔を輝かせる。
「琥珀! おはよう!」
「あ……っ、おらふくん! おはよう!」
「昨日、日直大変だったでしょう? 風邪とか引いてない?」
おらふくんは気遣うように琥珀の顔を覗き込んだ。そのあたたかい瞳に見つめられ、琥珀は昨日の出来事を思い出してキュッと胸が痛む。でも、心配をかけたくなくて、慌てて手を大きく振った。
「ぜ、全然大丈夫だよ! すごく元気! それにね、今日は私、すっごく楽しみなんだ~!」
「楽しみ? あ、もしかして……1時間目の調理実習?」
「うん! お料理するの大好きだから、うまく作れるといいな!」
パッと花が咲いたように微笑む琥珀を見て、おらふくんもふわりと目を細めた。中学の頃、いじめられてずっと下を向いていた彼女が、こんな風に料理の話で目を輝かせている。その姿が見られるだけで、自分の胸の奥がじんわりと温かくなった。
「ふふ、琥珀は本当にお料理好きだよね。僕たち、同じ班だから楽しみだな」
「えっ!? おらふくんと同じ班なの!?」
「うん、ドズルさんたちも一緒だよ。みんなで美味しいクッキー作ろうね」
「うんっ! がんばる!」
嬉しそうに猫耳をピコピコと揺らす琥珀。
だが、靴箱の陰から、冷ややかな視線が2人に向いていることに琥珀は気づいていなかった。昨日の女子たちが、せせら笑いながらひそひそと囁き合う。
「ふん、おらふくんにいい顔しちゃってさ」
「調理実習でしょ? ……最高の嫌がらせのチャンスじゃん」
悪意の視線が注がれているとも知らず、琥珀とおらふくんは並んで教室へと向かっていった。
エプロンを付け、三角巾を結んだ琥珀は、調理室の香ばしい匂いに目を輝かせていた。
今日のメニューはクッキー作り。おらふくん、ドズル、ぼんじゅうる、おんりー、MENと同じ調理台になった琥珀は、人一倍張り切っていた。
「琥珀ちゃん、生地捏ねるの上手やなぁ!」とドズルが感心し、「さすが料理好き!」とおらふくんも隣で嬉しそうに微笑んでいる。
しかし、調理実習が中盤に差し掛かった頃――。
「あ、ドズルさん! 先生が職員室で呼んでたで!」
「えっ、俺? マジで? すまん、ちょっと行ってくる!」
「あ、俺も次の材料取ってきますねー」とMENとおんりーが材料置き場へ向かい、ぼんじゅうるも「トイレ行ってくるわ~」と席を離れてしまった。
タイミング悪く、おらふくんも「琥珀、僕も手洗い場に行ってくるね」と席を離れ、調理台には琥珀一人きりになってしまった。
その瞬間を、女子グループは見逃さなかった。
「ねえ、そこの転校生。オーブン予熱しておいてよ」
「え……あ、うん! 分かった!」
琥珀は素直にオーブンの前へ向かった。だが、女子たちが仕掛けた罠はオーブンではなく、**その隣のガスコンロと大量のサラダ油、そして燃えやすい紙ナプキン**だった。
琥珀がしゃがみ込んでオーブンの設定をしている隙に、女子の一人がコンロの火を最大火力でつけ、サラダ油が注がれたフライパンを放置。さらに、燃えやすいふきんや紙パックを火のすぐ近くへコソコソと押し寄せたのだ。
「ヒソヒソ……早く行こ!」
悪意に満ちた笑みを浮かべ、女子たちは調理室を離れていく。
数分後――。
**ボワッ!!!!!**
「きゃああっ!?」
突然、琥珀のすぐ隣で凄まじい炎が燃え上がった! 高温になりすぎた油に火が移り、一瞬でコンロ周りの紙やふきんに燃え広がる。
「火、火事……っ!? た、助けを……っ!」
パニックになった琥珀は立ち上がろうとしたが、焦って足をもつれさせ、床に盛大に転倒してしまう。さらに、落ちていた油で足をすべらせ、強く足を痛めてしまった。
「痛っ……! た、立ち上がれない……っ!」
炎は一瞬で天井近くまで燃え上がり、黒い猛煙が調理室全体を覆っていく。
「火事だーっ!! 全員避難しろー!!」
先生の悲鳴のような叫び声と、けたたましく鳴り響く火災報知器のベル。他の生徒たちは狂ったように廊下へ逃げ出していく。
「ゲホッ……ゲホッ……っ! 助けて……誰か……っ!」
猛煙で視界が真っ黒に染まる。足の激痛と吸い込んだ煙で、琥珀は意識が遠のきそうになりながら、冷たい床の上で震えることしかできなかった。
水色の猫耳が力なく床に倒れ込み、涙と煙で目が開けられない。
(逃げなきゃ……でも、足が動かない……っ。煙で、息が……っ)
外からは生徒たちの悲鳴と、遠くでドズルたちの「琥珀ちゃんは!? おらふくんは!?」という焦った声が聞こえる。
だが、閉ざされた火の海と黒煙の中――琥珀は一人、逃げ遅れて取り残されてしまった。
「ケホッ……! ゲホッ、う……あ……」
燃え盛る炎がバチバチと音を立て、赤黒い煙が天井から波のように押し寄せてくる。
人一倍敏感な琥珀の小さな猫耳が、激しい火の粉の音に痛むようにピクピクと痙攣した。そして何より、琥珀は昔から喉や気管支が細く、煙に極端に弱かったのだ。
一気に肺へ飛び込んできた黒い煙。
喉が灼けるように熱く、一回息を吸い込むたびに意識がグラグラと揺さぶられる。
(息が……できない……っ。おらふ……くん……)
足を痛めて動けない琥珀は、熱風と猛煙に包まれながら床に這いつくばった。
ぼやける視界の中、赤く揺れる炎の向こう側に、かつて中学校で見た夕焼け空が重なって見える。
あの日も、自分は一人で泣いていた。
いじめられて、誰にも助けを求められなくて、体育館の裏で膝を抱えていた。
そんな自分に、優しく手を差し伸べてくれたのが――おらふくんだった。
(また……私、おらふくんに心配かけちゃうのかな……。せっかく……また会えたのに……)
喉からヒューヒューと苦しげな音が漏れる。
視界の端で、揺れる水色の猫耳が力尽きたように床へペタリと伏せられた。
「ケホッ……おら……ふ……く……」
かすれた声は、激しい炎の音にかき消されていく。
身体からスッと力が抜け、長いまつ毛がゆっくりと重なり合った。
真っ黒な煙が充満する危険な調理室内で、琥珀はついに意識を失い、冷たい床の上でぐったりと倒れ込んでしまったのだった。
校庭に響き渡るサイレンの音。ドズル社学園の校舎からは、モクモクと黒い煙が空へ向かって立ち上っていた。
「琥珀ちゃん! 琥珀ちゃんはどこだ!?」
避難した生徒たちの中で、ドズルが声を張り上げる。MEN、おんりー、ぼんじゅうるも焦った表情で人ごみをかき分けるが、どこにもあの水色の猫耳は見当たらない。
「いない……! 琥珀が、どこにもいない……っ!」
おらふくんの顔から血の気が引いていく。胸を痛みに締め付けられながら、黒煙を吐き出す校舎を振り返った。
(まさか……まだ、あの煙の中に……!?)
「琥珀ーーっ!!」
おらふくんはカバンを投げ捨て、狂ったように校舎へ駆け出そうとした。
「待て! おらふくん、行くな!!」
ドズルが間一髪でその腕を強く掴み引き留める。同時に、すでに到着していた消防士たちが立ちはだかった。
「ダメです! 中は猛煙と炎で危険です! 一般人は入らないでください!」
「放してください! 友達が……琥珀がまだ中にいるんです!! 煙に弱い子なんです!!」
おらふくんは泣き叫びながら抵抗する。だが、消防士たちは厳しく首を振った。
「気持ちは分かりますが、あなたが入ったら命の保証はありません! 隊員が今救出に向かっています、ここで待ちなさい!」
「おらふくん、落ち着けって! 消防士さんに任せるんだ!」
ぼんじゅうるやおんりー、MENも必死に押しとどめる。
「嫌だ……嫌だ!! 琥珀を一人にさせないって……守るって決めたのに……っ!」
激しく動いたことで、おらふくんの病弱な身体が悲鳴を上げた。ドックン、と心臓が嫌な音を立て、酷い眩暈がおらふくんを襲う。
「ガハッ……ッ、ケホッ……!」
膝から崩れ落ち、胸をギュッと強く押さえるおらふくん。
「おらふくん!?」「大丈夫か!?」
駆け寄るドズルたちの声が遠く聞こえる。
おらふくんの視界が歪み、医者から告げられた言葉が脳裏をよぎった。
『君の命は、あと数年……過度な負担がかかれば、いつどうなってもおかしくない』
(僕の命なんて……どうなったっていい……! 琥珀を助けられるなら、僕の命なんて……っ!)
でも、今ここで倒れるわけにはいかない。
もし自分が倒れてしまったら、誰が琥珀を安心させてあげるんだ。
おらふくんは溢れ出る涙を流しながら、ギュッと拳を地面に叩きつけた。爪が皮膚に食い込むほど強く、激しく。
「う……ああぁぁぁっ……!!」
出そうになる叫びを必死に噛み殺し、胸の激痛に耐えながら、おらふくんは燃え盛る校舎を見つめ続けた。
助けに行けない自分の無力さに、張り裂けそうなほどの悔しさと愛おしさを募らせながら――おらふくんはただ、琥珀の無事を祈って我慢し続けることしかできなかった。
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