「ヴァイオレッタと申します。皆さま、よろしくお願いいたします。」
「…というわけで、今日からヴァイオレッタさんが私たちドラゴンメイドの仲間入りを致しました。皆さん、仲良くしてあげてくださいね〜。」
ガヤガヤ…
「ヴァルヴレッドの娘ですって…」
「本当に大丈夫なのかしら…こんな子雇って…」
「国は私たちを危険に晒す気なんでしょうか…!?」
無理もないだろう。つい数日前にメルティニアの結界を壊した女の娘だ。
こいつの「お母様」が暴れたせいで家がなくなった龍神族もいる。よく思われていなくて当然だ。
「……。」
カグヤは黙って壁に背もたれて聞いている。彼女には今聞こえた何倍ものヴァイオレッタたちに対する罵詈雑言が聞こえているだろう。
「あっあの、お母様のことで、皆さまを驚かし…その、恐怖のどん底に落としてしまいましたこと、本当に失礼致しました…!わたくしが責任を持って…」
「ーーいいのよ。ヴァイオレッタちゃん。」
「ミネルヴァさん…」
「皆さん、聞きなさい。メルティニアの壁周外は本当に過酷な世界です。齢16の少女が兄弟を育て働いてこられた苦労は計り知れません。
メルティニアとはなんたるか。
傷付き立てない戦士が敵なら、見捨てる国ですか?私たちメルティニアの龍神族は、いつの時代も助け合ってここまで来たはずなのです。
今こそ協力すべき時なのですよ。さぁ、今日も一日、慈悲の心をお忘れなきよう、がんばりましょうね。」
ミネルヴァ先生、かっこいいな。
チャイムが鳴り、皆はそそくさと、それぞれの場所に移動していった。
「カグヤも16だったわよね。」
「はい。」
「……ヴァイオレッタ、カグヤについていきなさい。」
「カグヤさん、わたくしと同い年なんですか?」
「…。」
小さく頷く。
「ではカグヤちゃんって呼びますの!よろしくお願いします。」
(大丈夫か?その組み合わせは…。)
俺は少々心配だ。
「…給仕された服、似合ってる。」
「ありがとうございますですの!」
ふと、カグヤたちと目が合う。
俺は一昨日の夜のカグヤを思い出してなんとも言えない気持ちが湧き上がってくる。
「リユージ様!」
「な、なんだよ…。」
「私もリュージさんって呼んでもいいですか?」
「へ?」
「カグヤちゃんと一緒がいいです。」
「………。」
「俺はどう呼ばれても構わないよ。」
「えへへ。じゃあそうしますね♪」
破顔一笑、天真爛漫…。彼女からはその言葉がとてもしっくりきた。本当に性格も何もかも、あの母親とは180度違う生き物のようだ。
カグヤは複雑そうにしている。
「お前の母さんはどこいったの?」
「お母様はもう帰られましたよ。お酒が切れたとたん戻ったんでしょうね…。」
「そうか。色々と同情するわ…」
「だとしたら、おかしい。」
「何が??」
「…城内に気配のようなものがあの日からずっと残ってる。ガサガサと…」
「私とお母様、二人しかきていないはずですわ。」
「城内に侵入者がいる可能性が高いかもしれないな。悪い、カグヤ、念のため探ってきてくれ。」
「わかりました。」
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