テラーノベル
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最近のらっだぁはとにかく忙しかった。
配信やコラボ、撮影に外部の仕事、
──ずっと、スケジュールは埋まりっぱなし。
なるせと通話できるのも、深夜に数分。
そのたびに、なるせは笑って「大丈夫」って言ってきた。
──ほんとは…..全然大丈夫なんかじゃなかったのに。
そして、今日。
少しだけ時間が空いたはずの夜。
なるせは少しだけ、“今日はいつもより、話せるんじゃないか”って期待してた。
なのに──
(通話)
「あ〜なるせ、ごめん。 急に打ち合わせ入っちゃったわ」
「………うん。 いいよ!いってらっしゃいっ!」
口角を無理やり上げて、明るい声を作った。
“寂しい”なんて言ったら、重いって思われる気がして怖かったから。
通話が切れて、部屋が静かになった瞬間、
その明るさは、まるで嘘みたいに消えた。
なるせはヘッドセットを外し、ベットに沈む。
「……俺は、平気……大丈夫……」
ぽつりと落ちた声は、誰にも届かない。
胸の奥が、じんじん痛む。
「また“あとで”、か」
「俺との時間、いっつも“あとで”だ…….笑」
そんな風に思いたくないのに、
気がつけば涙が頬を伝っていた。
(かすれ声)
「……さみしいって、言いたくなかったのに」
そのとき──
カチャッ
玄関のドアが開く音。
驚いて顔を上げると、そこには息を切らせたらっだぁがいた。
「……やっぱ来た」
「…は、なんで……来たん……?」
「通話切ったあと、すぐ気になって。
……ほんとはずっと、なるせが限界なの、気づいてたから…」
らっだぁはなるせの前にしゃがんで、
優しく視線を合わせた。
「でもこれ以上…我慢させたらさ、
俺、好きな人に嫌われそうで…怖かったし」
なるせの目から、ぽろぽろ涙がこぼれる。
「……うそつき……気づいてたんなら…なんでよ……」
「ごめん……お前の強さに甘えてた… 」
そう言って、らっだぁはそっと腕を伸ばして、なるせを包み込んだ。
「──もう泣いていいよ。
……なるせ……ほんとごめんね」
「……っ…ふざけんなよぉ…ほんと……ずっと、待ってたのに……」
「待たせてごめん… 今日は、ずっと一緒にいるから、 ── 俺の隣、独り占めして?」
「…………ぅん…」
ソファの上。
抱き合ったまま、なるせは静かに泣いた。
でも、その涙は、少しずつ、ほどけていくみたいに優しかった。
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