「はっ! 晴美ちゃん! どうしたの? どこか痛いの?」
真希ちゃんの声が慌てて響き、彼女の目には心配が溢れていた
ヒック・・・
「うぅ~~~うわぁ~~~ん!」
涙が止まらず嗚咽がリビングに響いた。自分でも驚くほど感情が溢れ出し、まるで子供のようだった、真希ちゃんは急いでティッシュを手に取り、私に差し出した
「晴美ちゃん! 晴美ちゃん! 泣かないで! あたしでよかったらなんでも聞くよ!」
彼女の声は優しく、でも力強かった、まるで私がどんな秘密を吐き出しても受け止めてくれるという確信を与えてくれるようだった
「ヒック・・・真希ちゃん! 私、苦しくて黙っていられない!」
私は涙でぐしゃぐしゃの顔で訴えた、胸の中の重荷が言葉となって溢れ出そうとしていた
「うんうん! 聞くよ! 何でも聞くよ!」
真希ちゃんは私の手を握り、じっと目を見てうなずいた、その真っ直ぐな瞳に、私は救いを求めた
うわぁ~ん!
「絶対誰にも言わないで! 今から言うこと、絶対誰にも言わないで!!」
私は必死に叫んだ、この秘密は幼稚園のママ友にも、両親にも、誰にも話せなかった。話してしまえば、私の築いてきた家族のすべてが崩れてしまうかもしれない、家族崩壊の危機だ!
康夫は許さないだろう、ずっと同級生の親友だった友達が自分の妻とだなんて、ましてやその子の父親は和樹かもしれないのだ、私は捨てられて三人の子供を一人で育てなければならなくなる、何の社会経験も無い、スキルも何もない自分がポイッとこの家から社会に追い出されるんだ、慰謝料も請求されるかもしれない、今度ばかりは両親も助けてくれない、そんな恐怖が、いつも心の底にあった
「言わない! 誓うよ!晴美ちゃん!私に話して楽になって!」
真希ちゃんの声は力強く、彼女の手は私の手をぎゅっと握りしめていた。その温もりが私の凍りついた心を少しずつ溶かしていった
私は泣いて、泣いて、まるで心の底からすべてを吐き出すように泣きじゃくった、真希ちゃんの純粋な優しさに心を打たれ、彼女がそばにいてくれることのありがたさが胸に染みた。こんな話、誰にもできない。なのに真希ちゃんは私の背中をそっと撫で続け、落ち着くまでじっと待っていてくれた
彼女の温かい手が、私の震える背中に寄り添うたび、ほんの少し、恐怖が薄れていく気がした、やっと少し落ち着いた私は、震える声で、ついにその秘密を口にした
・:.。.・:.。.
「それじゃ・・・康夫さんの・・子供じゃないかもしれないの?」
真希ちゃんの目が一瞬大きく見開かれたが、すぐに優しい表情に戻った
「まだわからない! 康夫の子だと思うんだけど・・・自信がないの!」
私は涙をこらえながら、言葉を絞り出した
「生まれる前までは、絶対康夫の子だって信じてたの、でも晴馬を毎日見るたびに…もしかしたらって・・・」
真希ちゃんは私の背中を撫でながら、冷静に聞いてくれた
「その和樹っていう人とセックスしてから、どれくらいで康夫さんとも・・・したの?」
彼女の声は穏やかだったが核心を突く質問に、私は一瞬息を呑んだ
ヒック・・・
「和樹として・・・三日後に、母が子供達を預かってくれて、康夫と二人で出かけたの・・・それでお酒飲んで・・・康夫は避妊するの忘れたの」
まるでロシアン・ルーレットだ、私は恥ずかしさと恐怖で顔を覆った、思い出すだけで胸が締め付けられる
「それだったら、康夫さんの子供じゃない?」
真希ちゃんが慎重に尋ねた
うわぁ~~~!
「でも、和樹もたぶん避妊してなかった! 考えれば考えるほど、どっちかわからないの!! 私っ! 大変なことをしてしまったわ!」
私は再び泣き崩れた、晴馬が和樹の子供だったらどうしよう、康夫にバレたら、家族が壊れてしまう、そんな恐怖が頭の中でぐるぐると渦巻いていた、真希ちゃんは黙って私の背中をよしよしと撫で続けた、どれだけ時間が経ったかわからない、さんざん泣いた後、彼女が静かに言った
「よく考えて・・・どっちの子かわからなくても、晴馬君は晴美ちゃんの子供と言う事だけは確かよ・・・あなたがお腹を言葉通り痛めて、産んだ子ですもの・・・それはわかるわよね?」
子供の様に泣きじゃくりながら私はコクンと頷いた
「でも・・・DNA鑑定は必要かも・・・」
真希ちゃんの言葉に私は過剰に反応する
わぁ~~~!!
「嫌よ!嫌!怖いわ!この子は康夫の子だと信じたいの!信じたいのよ!」
「晴美ちゃん・・・」
ヒック・・・
「私のこと軽蔑してるでしょう?」
「ううん・・・ただ驚いただけ」
それから真希ちゃんは私を何とか慰めてくれた、とりあえず今は康夫には黙っている事だとも言ってくれた