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「予言は…嘘だった…」
殆ど沈みかけていたフォンテーヌはどんどん水面が下がっていき、民は笑い、死人はでなかった。
フォンテーヌの民は生まれた頃から罪人である。フォンテーヌはいずれ沈む。
だが、今起きた現実は水で少し濡れているフォンテーヌ邸で、両足でたっている。
夢かもしれないと思い、頬をつねってもただじんじんと痛むだけ、これは紛れもない事実なのだ。
そして僕はハッとし、すぐに民衆の前から隠れ、そそくさと家に帰った。
気付かれていたらきっとシャルロットが僕にスクープの取材をしに来るだろう。
予言が嘘だったことと、そして僕が水神でないことを。
人と話したくない。特にヌヴィレットは。
手紙を書き、鳩にパレ・メルモニアへ運んでもらい、僕はベットに横たわった。
たぶん数日後には僕を見つけ、大スクープを狙って記者が来るだろう。
それ以外にも僕を心配してヌヴィレットやクロリンデ、旅人も来るかもしれない。
みんなに説明したい気持ちは山々だけど、外に出るのが怖い。
あの裁判の声は今も頭で響き続ける。
僕は神じゃない。500年民に嘘をついて水神のふりをしたなりすましだ。
きっと罵られる、それが怖い。
フリーナ「フォカロルス…」
鏡を見て自分でもわかる程弱々しい声でその名前を呼んでも、なにも帰ってこなかった。
フォカロルス「いいかい?フリーナ。」
フォカロルス「君は神を演じ続けるんだ」
フリーナ「それっていつまでなんだい?」
水神のふりをして一週間たった。
僕は完璧な演技をしたはずだ。
しかし皆、僕の存在を疑い始めた。
家に帰り、鏡を見てその神名を言うと、鏡にはもう一人の僕、フォカロルスが現れそう言った。
フォカロルス「最初の時も言っただろう
それはわからない。何年も先かもしれないし、数ヵ月後かもしれない。」
フォカロルス「大丈夫、難しいけれど君なら完璧にこなせるだろう?」
フリーナ「誰にも明かしてはいけないのかい?どうして?」
フォカロルス「それは……まだ君には言えない」
フリーナ「…ヌヴィレットもかい?」
その時、少しだけフォカロルスの瞳孔が開いた気がした。
フリーナ「あれ?僕なにかおかしいこと言った?」
フォカロルス「…いや、君があの堅苦しいヌヴィレットに信頼をおけてるなんてね」
フリーナ「か、彼は最高審判官だ。お互い信頼のために説明したっていいはずだ!」
フリーナ「それに…ヌヴィレットも僕に疑いの目を向けてくるんだ…。」
フリーナ「水龍だし民衆とは違う…。彼ぐらいなら話してもいいんじゃないか?」
フォカロルスは少し考える仕草をして冷たく言いはなった。
フォカロルス「例え彼が水龍でも、この秘密を教えてはいけない。」
フォカロルス「彼がテイワットの者である限り教えてはいけないよ」
だからこそ思った。彼|彼女なら話してもいいんじゃないかと。
旅人「安心して、俺|私は見届けるもの。」
他の世界からの降臨者。テイワットから来たわけでないこの旅人なら話してもいい。
そう感じた。
でもその時、地面が揺れだして、フォカロルスの「僕たちだけの秘密だよ」という声が過った気がして。
話せなくなった。
フォカロルスはいつも鏡に話しかけると答えてくれた。
でも今は何も答えてくれない。
僕は偽物の水神という荷を降りた。
フリーナ「僕は…フリーナ…。」
フリーナ「フォカロルスじゃ…ない。」
フリーナ「フリーナ・ドゥ・フォンテーヌじゃない…。ただの水の娘、フリーナ。」
ただの水の娘、フリーナ。
その事実の再確認はできた。
フリーナ「クロバレッタさん…」
他二人の名前を呼ぼうとしたとき、音を立てて目の前に水元素力でできたヤドカニ達三匹が現れる。
フリーナ「……!」
僕は思わず抱きついた。やっぱり水元素でできたものだから多少は濡れるけれどそんなことは構わない。
そうだ。プラスに考えていこう。
これからは好きな演技ができる。
正義の国の水神である必要はないんだ。
これからは好きなだけパスタを食べよう。
限定のお菓子があまり食べられなくなってしまうことは少し悲しいけれど、お菓子がなくたって、死ぬわけではない。
それからリネ君達のマジックショーを見よう。彼のマジックは見てて飽きない。
眠い日は眠くなくなるまで寝よう。
もう水神という職務に囚われなくていいし、しなくたって職務怠慢ではない。
まぁ、クロリンデとかとお茶会できなくなるのは少し悲しいけれど。
わかっている。これもまた水神として演じてきた僕ポジティブ思考であることを。
能天気な僕であることを。
本当は怖くて仕方がない僕がいることを。
でも僕はこうやって演じてきたんだ。
自分の演じてきたことが裏切ることなどないだろう?
フリーナ「僕はフォンテーヌで知らぬものはいない水の娘、フリーナだ!」