テラーノベル
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「大きな勘違いをしているようだから、まずひとつはっきりと言っておきます。いや、ふたつだね」
ご主人様の声は、ダイニングにいる全員に確認したいと言っているようにも聞こえる。
「あら、改まって何かしら?」
まだここでも鼻歌が聞こえそうなトーンの奥様は、魂が腐っているせいで、ご主人様の言っている“勘違い”の主が自分だと分かっていないのかもしれない。
「ひとつは、篤久の結婚は篤久個人のものであって、中園の名前や会社経営とは切り離して考える」
「そんなこと言ったって、切り離せないわよ」
「そういうくだらない考えの女性を、篤久は選ばないので心配はいらない」
切り離せないのは遥香だろうと思いながら聞いていると、叔父様が少しきつく言い切った。
「それから……」
というご主人様の声に合わせて、私は湯呑を3つ乗せた角盆を持ってダイニングへ行くと、話を遮らないように会釈だけして、まず叔父様に玄米茶、ご主人様にほうじ茶、篤久様に玄米茶を……
「大門製鉄さんと親戚になっても、特に会社にプラスにはならないね」
「おっしゃる通りです、社長」
ここで篤久様が“社長”と言ったことに、カッコよさを感じていると
「ありがとう、いい香りだ」
篤久様が私に微笑んだ。
「熱いのでお気を付けください」
「熱いお茶を頼まれたのだから熱くて当たり前。使用人はさっさと下がって」
「遥香様、失礼いたしました」
「あなた達親子は、そういう物言いをして、無理やり見合いの場を作ったのですか?下品さしか感じない」
「お兄様、失礼だわ!」
私が下がる後ろで、兄妹げんか?
「篤久の言うことはよく分かる。使用人……だから何?彼女たちに私たちの生活が支えられているのだから感謝の気持ちを持つのが当然のこと。これまでもいろいろとあったようだけれど、これ以上彼女たちを見下して酷使するようなことがあれば、使用人のいない生活をしてもらうことになる」
「どういう意味……?」
ご主人様の言葉に、広瀬さんがガシッ……と私の手を握っている。
「どういう意味かは、きちんと彼女たちに尊敬を持って接していれば分からないままでいいです。それからお見合いというのは、こんな形でするものではないので成立しない。私の伝えることは以上です」
まるで会議の締めくくりのようなご主人様の言葉でお開きかと思ったけれど、腐った魂の女たちの考えることは、誰にも予測の出来ないことだった。
「成立しないって、今さら無理よ」
「どういうことかな?」
遥香に聞き返したのは叔父様で、返事は
「もう世間に“中園建設工業の御曹司と大門製鉄のご令嬢がお見合いから結婚へ”と知れ渡っているもの。世界に名の知れた会社の息子と娘よ?日時も場所も公表したから、絶対にカメラもたくさん来るわ」
と……絶対に会うだけでも会わなきゃならないという状況を無理やり作り上げたという告白のようなものだった。
コメント
7件
ご主人様、コイツラはもうドブに捨てましょう😠😠😠😠😠
何回もコメントすみません🙇♀️ 真奈美ちゃん!これは加工なしデータを使用するのちょっと早めた方がいい思ってきた!来週じゃなくて今晩にでもどう? 篤志様がこの後発する言葉にもよる?けど? 篤久様のためにも、自分のためにも…今だと思う。
笑うしかないやね、このアホな母娘。。。ꉂ🤣𐤔 ガツンとやろうとしたら、他からもガツンとされる系かと。(笑)ꉂ🤭 続きが楽しみすぎ〜( ≖ᴗ≖)ニヤッ