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手紙?僕に?星叶から?
頭の中には疑問と不安が渦巻いていた。
『依織くんへ
突然ですが、これは遺書です。
受け取ってるって事はお医者さんから渡されたのかな?
それはさておき、君に問題です。
私が大好きな物は何でしょう!』
手紙の1枚目にはこのシリアスな雰囲気とは正反対の呑気な言葉が綴られていた。
「星叶が…好きな物…」
思い当たるとすれば、ピアノやぬいぐるみだろうか。
『考えた?考えたよね!
正解は……君の弾くピアノの音と君がくれたミサンガ達。
分かった?というか、私今までに好きって何回も伝えたんだから分かって当然だよね! 』
僕の頭の中に問題の答えを外して悔しい、なんていうような気持ちは全くなかった。
それよりいつも星叶が口にしていた明るい言葉や直視出来ないほどキラキラしていて、 楽しそうな笑顔が走馬灯のように流れた。
『…と、まあこんな遺書らしくない話は置いといて、依織くん。
私ね、いつか依織くんにちゃんと星叶って名前で、普通に呼んでもらうことが夢だったんだ。
でももうその夢は叶ったから、また新しい夢を持ちました。
それは、君を彼氏だと堂々と口にして、その後は君を夫だと幸せそうに自慢すること。君がこの遺書を読んでいるならもうそれは叶わないってことになるけどね。
最後にお願いがあるの。
私を君の彼女にして お返事はこの手紙に入っている飴玉の包み紙に書いてね。
またね!依織くん!』
遺書らしくない文面、遺書らしくないお願い、遺書らしくないけれどとても君らしい。
封筒には確かに
1つだけ、青と白の飴玉が入っていた。
医者や看護師が僕の顔を覗き込んでいる中、僕は淡々ともう一生届かない言葉を包み紙に綴った。
「あの、それは一体何をされているのですか?」
不思議そうに顔を傾げている医者を見てハッと我に戻った。
そういえば僕は病院にいたんだ。
「…もう、一生届かない告白の返事を書いているんです。」
医者はその言葉で察したのかこれ以上何かを問うことは無かった。
僕は手紙を眺めながら家へ帰った。
自分の部屋に着き、ベットに横たわっていると、何とも言えないような喪失感に包まれ放心状態になった。
ふと頭に「依織くん」と聞きなれたはずの声が僕の名前を呼ぶのが聞こえた。
その瞬間、先程まで感じていなかった、いや閉じ込めていた感情が爆発し、涙が滝のように頬を伝った。
まだ、僕は君に「」という素直な2文字を伝えてないのに…なんで、なんで一方的に言うだけ言って置いていくんだよ。
「もう、置いてかないでよ…!」
今日、これまでの人生に無いほど感情に身を支配された瞬間だった。
コメント
2件
ひやぁぁぁぁぁ😭 切な…!?私もこーゆーの書けるようになりたぁぁい( 星叶ちゃん…かわいい() 投稿ありがとうございます‼️