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瑞奈の死を知らされた。
抗えない力で天地をひっくり返された。俺は地面に手をつく。足腰が立たなかった。力を入れようとしても、回路が切断されたように力が入らない。息苦しかった。
芝の匂いさえも感じられない。味覚だけがあった。鼻の奥でつんとくる涙。慟哭――
「晴翔……」
荒れた呼吸が小康状態になったタイミングで、朔太郎の声が聞こえた。
四つん這いの姿勢で首を垂らしている俺の脇で、朔太郎が膝をつき、俺の背に手を置いた。
瑞奈のお父さんからの電話を受けたのが朔太郎だった。当初は俺宛てに電話をしたのだが、応答がなかったために、俺の次によく名前を聞いていた朔太郎に電話をかけたそうだ。
優勝の円陣を組み勝利の歌を謳いあげてからまだ十分も経過していない。
周囲では、瑞奈の死を知らされたチームメイトが号泣していた。呻き声や鼻を啜る音に埋め尽くされている。
「朔太郎」
絞り出た声は空気中で蒸発してしまうほどに小さく脆かった。
嗚咽するままに、俺は手当たりしだいに辺りの芝を引き抜き、握り潰していく。いつしか何も掴むことができなくなっていた。湿った土の感触だけがあった。
ふいに寒気を覚えた。身体の中から熱が奪われていく。自分を支えるができなかった。もう、何もかもがどうでもいい、瑞奈がいない世界なんて……ゆっくりと身体が前傾し、谷底へと落下するように、俺は倒れ伏していく――
誰かが俺を支えた。
しっかりとした頑丈な手だ。それも一人ではなく、二人、三人……何人もの手で支えられていた。
拓真さんが朔太郎が幸成が俊介が、仲間達がチームメイトが、俺を支えてくれていた。冷え切っていた俺の身体に小さな火が灯っていく。
拓真さんの声がした。
「晴翔、俺達は皆で戦ったんだ。皆、瑞奈も含めて全員の勝利だ」
ゆっくりと俺の身体が抱き起こされていく。立ち上がることなんて不可能だと思っていたのに、仲間が俺を助け起こしてくれていた。
俺の真正面から声が届く。
「晴翔。瑞奈ちゃんのもとへ行って」
朔太郎の言葉に、俺の心臓が強く拍動した。
瑞奈に誓った。優勝して瑞奈のもとへ帰ると。こんな所で倒れている場合じゃない。
「晴翔――」
拓真さんが俺の肩に手を置いた。
「その、なんだ……もしもおまえが了承してくれるのならば、俺達も一緒に行っていいか? もちろんおまえと瑞奈だけの時間を過ごせるように配慮する……」
首を縦に振る。ダメなはずない。
「瑞奈も、みんなに会いたがっていますよ。一緒に帰りましょう、瑞奈のもとへ」