テラーノベル
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こん、こんとリズム良く響く軽い音に目が覚めた。
「なんだよ……まだ朝飯の時間じゃねぇだろぉ……?」
内心苛つきながら扉を開ける。
覚醒しきっていなかったはずの頭が一瞬でクリアになった。
「おはようございます、朝切くん。寮の案内をしろ、とのことで遣われました、副寮長の磴塔真です」
目の前にいるのは、昨晩にほざいた通りのモノクルイケメンだ。
え、マジで居るんだが。
呆然と見詰めていると、
「……私の顔に、何か付いてますか?」
目線が交わる。
咄嗟に挨拶をしてしまった。
「これはこれは、副寮長様。ご存知かとは思われますが、昨日よりこのDAに入学し、このフロストハイムに所属することになった、朝切 雪でございます。貴方のような麗しい方と相見えるとは光栄の限りです。案内等、僕が勝手に見学致しますので、これからお茶でもいかがでしょう?」
「おやおや……随分と口がお上手なのですね?生憎ですが、それは私のような男では無く、女性に使うべき言葉かと」
くす、と口元を緩ませてそう言う副寮長基、磴先輩。
ビジュの時点でどちゃくそ沼なんだが……
……って、俺は男もイケてしまうのか( ゚∀ ゚)
「しかし、丁度お茶はしたいところでしたので、ご一緒してもよろしいでしょうか?勿論、朝切くんのペースで大丈夫ですから」
「是非」
「それはよかった。なら、これから宝物庫へ行くので、支度の方お願いしますね」
……勢いでOKしてしまった……自分がチョロすぎる……
:::*:::*:::*:::*
「────此処が、宝物庫です」
ビジュの良さに惑わされて辿り着いた宝物庫。
クソ寒い。
ほんとに氷で出来てんじゃね?と思うぐらいには寒い。
「氷の椅子ですが、座り心地はいいんですよ。お茶を淹れてくるので座って待っていてください」
「は、はい……」
自分の呼吸と、金属に陶器が当たる音以外何も聞こえないこの空間は、寒さを紛らわそうにも難しい。
自分の吐く息だって白くなっている。
「……朝切くん、もしかして、寒いのが苦手だったりします?」
2人分のティーカップが乗ったトレイを片手に帰ってきた先輩が、少し震えている俺に心配そうな声を掛ける。
「えぇっ……と……まぁ……?」
「それはそれは……可哀想に……」
顎に手を当てて考える仕草をすると、何か思い付いたのか、自身の羽織っていたジャケットを脱ぎ始めた。
「え、ぇ、先輩……!?」
「少し気持ちの悪い言い方をすると、つい数秒前まで着ていた分、温まっているかと」
どうぞ、と差し出されるジャケットに目が釘付けになってしまう。
何とか声を絞り出しても、”体調には気を付けて”の一点張りだ。
「で、でも、先輩が凍えてしまいますよ……?」
「私はいいんですよ。後輩優先、ですからね」
ふわ、と肩に乗る重みに、つい指が触れてしまう。
ほんのり香る茶葉が鼻腔を擽る。
「冷めてしまう前に、紅茶を飲むのが良いかと。身体が温まります」
端正な笑顔が俺を見詰める。
もしやこの人、人誑しか……?
「あ、ありがとう、ございます……」
差し出された紅茶を口に含むと、芳醇な香りが口いっぱいに広がった。
「この茶葉、アッサム……ですか?」
「……よく、お分かりになりましたね」
少し目を開いて驚いたように言う。
「まあ……アッサムティー好きなんで……」
「ほう。ならば、これからはアッサムを取寄せることにしますね」
ふ 、と微笑む。
何でアッサム……???
「では、本題に」
ちょっと待って今んとこ疑問点が多い。
整理させてくれ。
「先ずは朝切くんの〈スティグマ〉なのですが……」
あーーー話す間すら無ぇわ、諦めよ。
コメント
3件
どこに書けば良いのか分からないのでここに失礼します 最近音沙汰が無いですが大丈夫でしょうか…体調不良などに注意してお過ごし出来ていたら幸いです
塔真様優しすぎる… 雪のスティグマ…なんだろう、次回楽しみです