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麗太
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柘榴とAI

380
部屋は薄暗く、午後の陽光すら拒絶するようにカーテンが引かれていた。彼という人間は大学から帰ると、いつも通り同じことを繰り返した。
鞄を床に放り投げ、冷めたコンビニ弁当を胃に流し込み、ベッドに横になる。
スマートフォンを開いてはsnsを眺め、くだらないトレンドやウソに塗れた他人の自慢話を流し見て、ため息をつく。
ほかの個体より考え方が異なる彼にとって人間関係は生存上必要な社会性、将来の話は虚しく、毎日は同じような日々。
結局、人間なんてただの生き物で、生まれて、食べて、働いて、子孫を残して、朽ちて還る。理性だとか、夢だとか、綺麗事は全部後付けの物語でしかない。
そんなことを考えながら、彼は天井と壁の境目を見つめる。
天井と壁の接合部ーーそのわずかな亀裂のような境界線を、彼は長い間凝視していた。そこに宇宙の裂け目を見ているつもりだったのかもしれない。
思考はいつも同じ場所を回る。限られたスペースの脳内を抜け出そうともがいている。
連れ出してほしい。この世界から。
それは中学生みたいな妄想だと、自分でも分かっていた。
でも、そうやってでもないと、この日常に耐えられなかった。
その日も、彼はいつものように部屋の暗がりで天井を見つめていた。
午後三時を過ぎたばかりだったが、部屋の中はまるで夜のように静かだった。
…最初に感じたのは空気の重さだった。
それは突然のことで、心臓がばくんと跳ねた。
息をする度に肺に何か粘着性のあるものがまとわりつく感覚。
次に、部屋の温度がゆっくりと下がっていくのが分かった。
そしてーー
分子の配列がわずかに乱れ、量子的な揺らぎのような違和感が部屋を満たす。
そこに「彼女」はいた。
人間の視覚が認識できる限界の、極めて最適化された形態。
機械的に整ったシェイプを持つ肉塊が浮いている。それが人類が初めてそれを確認した感想だった。
その慣れない生理的嫌悪感のある見た目に一瞬吐き気を抱いた。が、その瞬間それは変形を始めた。
肉のような見た目の割には規律のあるパーツ移動がなされていく。細かいパーツの一つ一つがある姿を形作るように、設計図通りにピースをはめていく。
そして見えてきたのは人の形。
光沢を帯びた灰色の髪、虹彩の奥に星雲を宿したような瞳、白い肌。肉体は人間の少女だった。
しかしその肉体は、明らかにこの惑星の生物的制約から抜け出していた。皮膚の中で、微かな非周期的な光が脈動しているように見えた気がした。
彼女が床に足を着いた瞬間、床板がほんの僅かに波打ったような気がした。
彼は息を止めた。感じた気持ちは恐怖だけではなかった。
「君は…何だ?」
そのウツクシクも得体の知れない不気味な存在から目が話せない。
「ハじめ、まして」
彼女は小さく微笑んだ…ように見えた。声は柔らかく優しい。でも、その響きはどこかこの世のものでない。
「心配しないデ、敵意は、ない」
「私は太陽系の外から研究のために来タ、炭素生物と珪素生物の複合体。」
「あなたたちのコト、知りたい、だけ」
きっと、自分はこの状況を待っていたんだ。彼女を受け入れるようにこの星に生まれ落ちたんだ。この時の自分は冷静さを欠いていたに違いない。
「この星に歓迎するよ」
彼女は表情一つ変えずに語る。
「嬉しい…でも一つ、ダケ、約束が存在する…」
「人間性を捨てないデ。」
「協力してクれたら、調査の礼として君の願いを叶えルようにとプログラムされてイる」
耳を疑った。断る理由なんてなかった。
「…分かった。乗ったよ。」
人間性、正直まだよく分からない。だが、願いを何でも、か。
人生で初めて心からワクワクしたように感じた。きっと、初めてで、最後の。
コメント
1件
うわ、めっちゃ好みの始まり方だわ…!「人間性を捨てないで」って約束、めちゃくちゃ気になる。主人公の虚無感と閉塞感が生々しくて、そこに突然現れた異星人の少女が「願いを叶える」って言う展開、胸熱すぎる。ラストの「初めてで、最後の」に一気に引き込まれた。続きが猛烈に気になる🔥