テラーノベル
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「分からないからどういう意味? って聞いてるんじゃない!」
バン! と机を叩いてウィリアムを威嚇したつもりだったのだが……。
彼は意に介した風もなく、はぁーっと吐息を落とすと、
「アレクト王太子殿下からのご意向だ」
はっきりとそう告げた。
「え……?」
さすがに、その名にはダフネも口を閉ざすしかない。
「両国の和平に関わる話でもあるんだ。貴女の養父であるランディリック・グラハム・ライオール卿も、この件については了承済みだ」
「あの人も……?」
「ああ」
「でも! 私、そんなの聞いてない! 私の意思はどうなるの!?」
「もちろん確認するように言われたから、いま話したんだ」
「だったら話は早いわね。お断りするわ!」
即答だった。
だが、ウィリアムは困ったように眉尻を下げただけだった。
「……まだ分からないのか。そう簡単な話じゃないんだよ、ダフネ・エレノア・ライオール」
「どうしてよ」
「先ほども言ったはずだ。アレクト王太子殿下直々の話だと。それも、イスグラン帝国とマーロケリー国、両国の今後にも関わる縁談ときている。――正直な話、キミに拒否権なんてないんだよ」
「だからって……!」
言い返しかけて、ダフネは唇を噛んだ。
ウィリアムの言っている意味くらいは分かる。
つまり――。
自分の意思を確認するというのは建前で、もう断れるような話ではないのだ。
「……横暴すぎるわ」
吐き捨てるように呟く。
侯爵令嬢になってからというもの、ようやく自分にも相応しい生活が出来るようになったと思っていた。
この王都で、華やかなドレスを着て、煌びやかな宝石を身につけて……。
以前なら相手にもしてもらえなかったような、上の身分の令嬢たちとも肩を並べられるようになった。
それなのに、今度はすべてを捨てて敵国へ行けという。
(冗談じゃないわ)
ダフネは膝の上で組んでいた指へ力を込めた。
自分だけが損をするなんて、絶対に嫌だ。
しばらく黙り込んでいたダフネを、ウィリアムは急かすことなく見つめている。
やがて――。
「……分かったわ」
「本当か?」
「本当も何も、私に拒否権はないんでしょう? 仕方ないから行ってあげるわよ、マーロケリー国へ」
「了承してもらえたなら助かる。では早速アレクト殿下に――」
ウィリアムがホッと胸を撫でおろして立ち上がりかけるのを見て、ダフネはグッと両の拳に力を込める。
「でも……」
ウィリアムの行動を遮り、ダフネは顔を上げた。
「このままでは、絶対に嫌!」
先ほどまでの不満げな顔とは違う。
何かを決めたらしいその瞳を見て、ウィリアムは僅かに身構えると、ダフネの前へ座り直した。
「私、嫌々あんな国へ行かされるのよ?」
「…………」
「だったら、それ相応のことをしてもらわないと割に合わないわ」
ダフネは当然の権利だとでも言わんばかりにフンッと鼻を鳴らすと、顎を上げる。
「ドレスも、宝石も、嫁入り道具も……。全部・ぜーんぶ! 最高級のものを揃えてちょうだい」
「……ダフネ嬢!」
「馬車だってそうよ!」
止める間も与えず、要求を続ける。
「どうせなら、一目見ただけで王太子妃になる女が乗っていると分かるくらい、立派なものにしてもらうわ」
ウィリアムの眉間に、深い皺が刻まれた。
だがダフネは気にも留めない。
むしろますます気分が上向いてきて、口元に笑みが浮かぶ。
「そうね。それくらいしてもらえるなら――」
そこで一度言葉を切り、ダフネは、さも当然のことのように言い放った。
「マーロケリー国へ嫁いであげてもいいわ」
#ハッピーエンド
高瀬船
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#溺愛
星キラリ

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#異類婚姻譚
和泉
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コメント
2件
ダフネー! すごいな。 この期に及んでそんな条件!
あーもうダフネお嬢様、最高のツンデレすぎません!?😭💕 最初は「お断りするわ!」って跳ね除けたのに、最後は「嫁いであげてもいいわ」って……しかもドレスも宝石も馬車も最高級を要求する図々しさ、めっちゃ好きです(笑)。拒否権ないって状況は胸が痛いけど、それを逆手に取って自分の価値を引き上げようとする強かさがダフネらしいよな〜。ウィリアムさんが困った眉尻になってるのも目に浮かぶわ。次、どう転ぶんだろ!?