「うぅ…すっごい怒られちゃったよぉ…」
少し前まで説教をしていた夜ちゃんが部屋から出ていってから、俺と双子の葉雪が泣き顔で布団で涙を拭く。
…いつもの事だから俺からは別に何も言わないが、峯夏に見られたら溜息つかれるぞ、それ。
「まぁ俺らの自業自得だしな〜、怒られたってしゃーないよ。」
「瑠璃はなんでそんなに平気なのさぁぁ…!」
視線を布団からこちらに向け、少しむっとした顔で叫ぶ葉雪。
「いや知らねぇよ、ったく…にしても母さん、すぐにどっかいったな。」
「なんか「お父さんに変化が起きた…これは奇跡に等しい事よ、お母さん行ってくる!」とか言って出ていった〜。」
欠伸をしながら答える。
何で一語一句間違えずにイントネーションも完璧にしれっと言えるの?怖いわ、そこまでいくと。
「ああいう時の母さんの勘、引くほど当たるよな。…そういや、勘が良いといえばもう一人居なかったか?」
「ええっとね〜…確か情報屋さんの所の助手さんがそうだったと思うけど…」
「情報屋ってどこだよ、ありすぎて俺じゃ覚えられん。」
「ほら、ここの市街の方の〜…伊桜さんの所の。すっごく綺麗な茶髪の女の子居たでしょ?あの子だったと思うけど。」
「あー…そうだった気がする。確かすっごい無口だっただろ?あいつ。」
「そうそう。覚え方がどうかとは思うけどその子で合ってると思うよ〜。それに、無口なのも可愛さでカバーされてるからオッケーなんだよ?」
「…よく分からん。」
そんなくだらない会話をしていると、窓をこんこん、と伝書鳩がくちばしで器用にノックする。
「…やだ見たくない俺は何も聞いてない見てもない。て訳で葉雪、手紙の受け取り頼んだ。どうせ今回も報告と金の請求だろ?」
「えぇ〜何で私が…とか言い始めるとあれだから、今回は私がやるけど。次は瑠璃が受け取り係だからね!」
「はいはい、わーったよ。」
◇ ◆ ◇
「これは…」
伝書鳩の持っている手紙を外して中身を見る。普段なら頼んでいた情報の内容と金銭請求とかなのに…絶対に瑠璃嫌がる。私に当たられちゃうじゃんかぁ。いやだよ…。
思わず涙目になるのを視界の歪みで感じ取る。
服の袖で涙を拭き取り、瑠璃の方に振り返る。手紙の内容を瑠璃にも見せる為に。
「はい、今回の手紙の内容。お金の請求も無いから拒否反応は出ないと思うよ〜。」
「…はぁ?じゃあ何の内容だよ…」
不思議そうに首を傾げながら渡した手紙を読む。
あっ言い忘れてた、手紙の内容はこれを受け取ったならすぐに来て欲しい、みたいな感じのやつ。
住所は親切に暗号。しかも解読に時間のかかるやつだし、ご丁寧に数字も暗号にしてくれている。
解読めんどくさい…しかも、瑠璃はこういう時に全く役に立たない。ちなみにソースはこれまでの経験。
「うわ、やりたくねぇ…まぁ良いか、明日の朝までには帰ってくるぞ。」
紙を私に手渡し、そう自信ありげに言ってくる瑠璃。愚痴をこぼしながらもやる気はちゃんとある様で何より。
こういう時に、瑠璃が居ると安心して笑う事が出来る。誰よりも信頼できるからかな?
本人にはそんな事、絶対に言わないけど。
「はいはい。でも、先に解読しないと行けないからね〜。」
「げ、そういやそうだったな…葉雪の分の準備もやれば、解読の手伝いチャラになったり…」
「しないよ?さ、早くやろっか!」
なんて言い合いながら、私達は夜を迎えるのだった。
その日の月は半月だった。どこかで聞いた、たとえ横槍が入っても負けないみたいな感じの意味を持っていた気がする。
…ま、関係ないか。
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