あらすじ必読。
暴力表現あります。注意。
***
<らんside>
ポタリ、ポタリとキッチンの蛇口から水が零れて落ちる。
その音だけが、リビングに響く。
さっき水を飲もうと水を出した時に、しっかり止められていなかったのだろう。
キッチンに行き、しっかりと蛇口を閉める。
ちゃんとキレイにしておかないと、怒られるから。
俺は、『カレシ』と同居している。
『カノジョ』じゃないのは、俺は男だけど男と付き合っているからだ。
俺が『カノジョ』ポジってわけ。
『カレシ』のいるまは、今は仕事で家にはいない。
仕事が忙しかったならば、いるまはピリピリしているからすぐ怒っちゃう。
だけど、仕事で褒められたり嬉しいことがあれば俺に優しくしてくれる。
俺は、全部全部いるまの愛情表現で、それこそがいるまだと思っている。
たとえ、怒ったときに物を投げつけてこようが、殴ってこようが、蹴ってこようが。
それでできるショウコンすらもまた、いるまからの愛の証だと思っている。
ダボクコンやキリキズはもちろん、いるまがつけてくれたカミキズもまたいるまからの『アイジョウ』だ。
今日はどちらかな。
最近は忙しそうだから、また『アイジョウを示してくれる』のかな。
それとも、優しく『ナツかせてくれる』のかな。
冷たい蛇口をつるつると撫でながらそう思っていると、俺のスマホがヴーッヴーッとバイブを鳴らした。
ハッとして俺はスマホを置いてあるところまですっ飛んでいく。
俺のスマホには、某メッセージアプリしか入っていない。
ホーム画面にあるアイコンは、緑色のアイコンだけだ。
それ以外のアプリは全てアンインストールした、削除した。
そして更に、その某メッセージアプリの『トモダチ』はいるまだけだ。
いるま以外のことは知らなくていい。
いるま以外とは連絡なんて取りたくない。
そうやって言ったら、いるまは困ったような、だけど嬉しそうに笑って頭を撫でてくれたんだ。
『今から帰る。』
いるまからのそんな短いメッセージは、昨日も一昨日もその前も同じ。
つまり、あまり機嫌が良くない。
機嫌が良い時は、『今から帰る。良い子で待っててな?らん。』くらいは送ってくれるのに。
今日は『アイジョウ』だった。
最近は『ナツかせ』があんまりないから、ちょっと欲しいような気もするけど。
『わかった!帰ってきたらいっぱい愛して?』
これもまた、俺の返信の決まり文句。
別に返信はしなくても良いと言われているけれど、俺はどうしても返したくて返してる。
でも、あんまりキーボードを使わないから、時間がかかっちゃうんだけどね。
最近はちょっと慣れてきた。
俺のメッセージはすぐに既読がついて、『当たり前。』と更に返信が来た。
この返信があるということは、いつもよりは若干機嫌が良い。
わくわくしながら玄関辺りをうろうろしていると、ガチャリと鍵が開いた。
「ただいm、」
「いるまっ!おかえり!!待ってた!!」
俺が飛びつかんばかりの勢いで応えると、いるまは若干笑った。
だけどすぐにすとんと表情を抜け落とさせて、靴を脱ぐ。
そして、くるりと俺を振り返ってポンポンと軽く、少しだけ頭を撫でてくれた。
久しぶりの『ナツかせ』に、俺はポカンとしてしまう。
だけど、すぐに嬉しくなっているまの手を掴んでそれに頬擦りをした。
機嫌が悪そうだと思ったけど、今日は『アイジョウ』じゃなくて『ナツかせ』だから、俺の予想が間違ってたのかな。
そう思った時、いるまは俺の手を振り払ってガンッと俺の頬を殴った。
予想だにしていなかった『アイジョウ』に、俺は思わずふらついて壁に背中を強打する。
「チッ。良いっつってねぇけど?」
一気に不機嫌になったらしいいるまの睨みに、俺は思わず肩を震わせた。
何でかなぁ、この視線を向けられると、胸がぎゅっと痛くなって、、、嬉しくなる。
『アイジョウ』だからかな。
ココ最近は『アイジョウ』ばっかりで飽きてきたと思っていたのに。
まあ俺は『ナツかせ』よりも『アイジョウ』の方が好きだから良いけど。
「ご、、ッ、めん、、なさ、、、、ッ!」
「、、、はぁ、、、飯は?」
「作ったッよ?すぐ食べる、、ッ?」
「食う。」
「わかッた!並べるから、ちょっと待っててッ?」
「早くしろ。腹減ってんだわ。」
「うんッッ!」
キッチンに行き、作っていた料理をお皿に盛り付け、運ぶ。
いるまの分の箸や小皿を持っていき、スーツからパーカーに着替えたいるまを見ると、いるまはキッチンに向かって俺の小皿を出してくれた。
俺はそれを受け取り、いるまの隣にそれを置く。
今日はちゃんと『エヅけ』してくれるらしい。
正直言っているまが仕事に行っているあいだは何も食べていないから、お腹が空いている。
いるまは一口ずつ料理を食べてから、わくわくと待っている俺を見て鼻で笑い、箸で副菜をつまんで俺の口の前に持ってきた。
俺はきらりと目を輝かせ、ぱくりとそれに食いつく。
自分で作っておいてアレだが、かなり上手に作れているのでは、、、?
2人で完食した後は、いるまの『アイジョウ』タイムだ。
俺がきっちり座って待っていると、食器を洗い終えたいるまは俺の背中に回り込み、ギュッと俺を抱きしめた。
珍しい行動に俺がびっくりしていると、いるまは俺の首筋に噛み付いた。
「ッ、、、!!、、、ぃっ、、つ、、」
思わず声を出してしまい、俺は慌てて片手で口を押さえる。
いるまはその鋭い犬歯で俺の首の肌を傷つけ、咲いた朱の花をぺろりと舐める。
そして、俺の方に回していた腕の力を強め、ギリギリと俺を抱きしめた。
『ナツかせ』のように見えるけれど、これは『アイジョウ』だと俺は知っている。
首が締まり、かはっ、と唾液を吐き出す。
「、、、、、、」
いるまはそれを見て更に力を強める。
息ができなくて、酸欠で気が遠くなる。
だけど、それが嬉しかった。
いるまの愛情表現は、独特だった。
きっと俺以外には理解できない。
俺の身体に増えるショウコンを誰かが見る度、そんな『カレシ』とは別れた方がいいって言ってくる。
俺は_いるま@カレシ_が大好きで、アイしてるから、そんなことを言うトモダチとは絶縁したけど。
身体の力を保てなくなって倒れると、いるまは俺の首から腕を離した。
酸素が一気に肺に入ってきて、動悸がする。
朦朧とする意識の中、いるまが立ち上がったのが見えた。
ドンッ、と直後に鳩尾に鈍痛が走る。
しばらくの間続く鈍痛に耐え続け、次に目が覚めたのは翌日の朝だった。
俺は抱きしめられるようにしているまと一緒にベッドで寝ていた。
昨日と同じ服を着ているところを見るに、あの後いるまは俺を犯さずに一緒に寝たのだろう。
俺の肩口に顔を埋めるようにしているいるまの頬には、泣いたあとがあった。
あぁほら、また俺の身体にいるまからの『アイジョウ』のアトがついてる♡
***
<ひまなつside>
監視されてるなぁ。
俺はそう思いながら、パソコンの中の俺の『カノジョ』を見る。
俺の家のリビングには防犯カメラと盗聴器がついていて、俺はそれを知っている。
どうして知っているかというと、それが俺の『カノジョ』のこさめのせいだからだ。
こさめのことでわからないことはない、、、と思っている。
少なくとも、こさめのトモダチやカゾクよりはこさめのことを知っているだろう。
ずっとずっとこさめのことを見ているから。
こさめは、俺がいつもダラダラしているリビングにだけ防犯カメラと盗聴器を仕掛けた。
ということをこの間許可した。
こさめは正直で素直で可愛いから、俺に防犯カメラと盗聴器を仕掛けても良いか許可を取ってきたんだ。
こさめはどんなことでも俺の許可を欲しがる。
外出許可はもちろん、ご飯を食べて良いか、寝ても良いか、仕事手伝っても良いか、お風呂に入っても良いか、などなど。
飯と就寝と風呂は俺が許可を出さなくてもして良いと許可を出したし、仕事の手伝いはしないで欲しいと言った。
こさめは、そんな俺の言うことをちゃんと聞いて守ってくれている。
だけど、外出許可だけは毎回その度その度に聞いて欲しいと言ってある。
それから、こさめには俺の家の合鍵を持ってはいけないと言いつけてある。
何故なら、こさめにはLDK以外のところは見て欲しくないからだ。
特に俺の部屋。
今俺がいるのは俺の部屋だが、そこにはパソコンとレコーダーが大量にある。
それは、こさめのためだ。
こさめの家に俺は、大量の防犯カメラと盗聴器を仕掛けている。
防犯カメラは死角ができないように、盗聴器は各部屋にみっつずつ。
それらを全て管理するために、大量のパソコンとレコーダーが必要なのだ。
でも、こんなものをこさめに見られてしまっては引かれるに違いない。
だから俺は、LDK以外を見ることはこさめに許可していない。
「はぁ、可愛いなぁ?俺がリビングにいないことの理由を頑張って考えてる、、、♡」
こさめには、俺のスケジュールを全部教えてあげている。
今日は家にいると教えたはずだ。
家にいる時はいつもリビングに俺はいるから、いないことに戸惑っているんだろう。
こさめが慌てた顔でスマホを手に取った。
『電話、、、かけてみるかぁ、、、』
そんなこさめの声がレコーダーからに聞こえてきて、俺はスマホを持って部屋を出た。
それと同時に、俺のスマホがバイブする。
俺は即座にそれを繋ぎ、スマホを耳に当てた。
「もしも〜?」
『あ、なつくん?今どこn、、、、あ、いや何でもない!声が聞きたくなっただけ!ごめんね?』
俺が喋りながらリビングに移動したからか、こさめは慌てたようにそう言って電話を切る。
慌ただしいが、その可愛らしい反応に俺は笑いを堪えられなかった。
そして、盗聴器に向かって言う。
「俺がどこにいるか心配になった?可愛いね♡」
仕掛けているところを見ていたから、どこに何が仕掛けられているのかなんてお見通しだ。
すると、俺の部屋から『バレてる!!??』という叫び声が聞こえてきた。
その後、悶えている声も。
この声は俺の耳だから拾える音量で聞こえてくるから、盗聴器には入っていない。
それはもう検証済みだ。
「ちょっと自分の部屋で漫画読んでただけだから安心して?だけど、心配になるくらいならこっちで読むよ。」
俺はそれだけ言い、また自分の部屋に戻る。
パソコンの画面を見て、こさめが真っ赤になって悶えている様子を眺める。
そして、言っていた通り本棚から漫画を取り出してリビングに行った。
あぁ、本当にこさめは可愛い。
監視されてることに気が付かないで、ずっと俺を慕ってくれるなんて。
「こさめ、、、愛してるよ?♡」
わざとリビングに響かせるようにして言うと、またもや俺の部屋から悶える声が聞こえてきた。
あぁ、、、抱き潰したいくらい可愛い。
こさめは一生俺のカノジョでいてもらおう。
結婚なんてしない。
同居したくない。
俺がいないところでのこさめが可愛すぎるから、一生こさめは俺の『カノジョ』だ♡
***
<すちside>
「すっちー、どうしよ。緊張してきた、、、」
すっかりカッコよくおめかししたみこちゃんが、俺に向かって言う。
俺はネクタイをきっちりと結び、それからみこちゃんの頭を撫でた。
「大丈夫。俺の隣でニコニコしてたら何とかなるから。失敗しても俺がフォローするよ。」
俺はそう言いながら、みこちゃんの首筋についたアトがちらりと見えているのを見て、襟を少し高くした。
アトとは、俺が思わずつけてしまった手のアトだ。
でも、みこちゃんはこんなことを全く気にしていない。
すっちーがそれでスッキリするならええよ、とまで言ってくれている。
俺は、昔から短気だった。
そして、溜め込んだストレスを発散するのに、投射や不適応行動しかできなかった。
つまり、人や物に当たることしかできなかった。
だけど俺は『聖人』で通っているから、これをバラすわけにはいかなかった。
だけどひょんなことからみこちゃんにバレてしまったんだ。
どうしようと焦っていると、みこちゃんは「俺をストレス発散のドールにしてええから、他の人には手出さんといて?」と言ったんだ。
俺はびっくりしたけど、メリットしかないことに気がついて、それを受け入れた。
表面上はカップルとして振舞っているけど、一緒に住んでいるうちに本当にみこちゃんのことが好きになってきた。
みこちゃんは、俺のことをどう思っているのかは知らないけど。
まあ、別にどう思っていても自分から言い出したことなんだから、今更「嫌だ」なんて言わせない。
今日は、俺の家族にみこちゃんをお披露目するんだ。
俺の家族は、俺のこの性格のせいで昔からストレス発散道具にされ続けていて、みこちゃんに本当に感謝している。
だから、とりあえず愛想良くにこにこしていれば何とかなると思うんだよね。
でも、俺は今になってみこちゃんを誰にも見せたくなくなっていた。
首を絞めている時、暴力を振るっている時、犯している時の愛らしい姿はもちろん、普段のみこちゃんの姿すらも誰にも見せたくない。
そんな欲求が、俺の中で出てきてしまっている。
だけど、これくらいは我慢しないと。
そう言い聞かせて、俺は本当はみこちゃんから「行きたくない」と言うのを待っている。
相変わらず俺は、酷い男だ。
「なあ、すっちー?」
「ん〜、どうしたの?」
「すっちー、行きたくないん?」
その言葉に、俺の我慢の糸が切れた。
プツリどころじゃなく、もうブッツリとぶった切られた。
そこは、「行きたくないの?」じゃなくて「行きたくない。」でしょう?
可愛く上目遣いを追加してくれれば、もう最高だったのに。
俺の我慢していた気持ちをあっさり暴いて。
いや、俺がそう思っているのを悟っていて、それでストレスが溜まっているのを知っていて、あえてそう言った?
みこちゃんはトモダチからは「サイコパス」だなんだと言われているけれど、本当はマゾなのかなぁ?(笑)
「うん、行きたくないよ?でも俺、家のことだからちゃんと我慢してたんだけど。」
若干暗くなった声のトーンに、みこちゃんは驚いたような顔をした。
だけどすぐに呆れたような顔をして、俺に寄ってくる。
そして、ぎゅっと俺を抱きしめて、せっかく結んだ自分のネクタイをしゅるりと解く。
「ごめん、察すればよかったね。空気読めなかった。今日は行かないでおこう?さぁ、、、殴る?」
みこちゃんは俺の耳元でそう言うと、俺から身体を離す。
その少し嬉しそうな声に俺は嘆息し、みこちゃんを突き飛ばしてソファの上に押し倒した。
その上に乗り、俺はガッとみこちゃんの首を片手で掴む。
ギリギリと締め上げると、みこちゃんが真っ赤に顔を染めて苦しそうに息を吐き、かはっと唾液を吐き出した。
ひゅ、ひゅ、と浅い呼吸を繰り返し、唸る。
いつもはその苦しそうだけど愛らしいで満足するのに、今日はそうはいかなかった。
更にもう片方の手でみこちゃんの首を掴んで更に力を込めて締め上げる。
「あ”ッ、、、ぅ、、ひュッ、がぁ”ッッ、、、?!?!!???」
目を限界まで見開き、みこちゃんは俺の手首を掴む。
俺はその反抗するような態度に腹が立って、みこちゃんの腹に膝を置いて体重をかけた。
みこちゃんの呼吸が一瞬止まり、俺は慌てて手を離し、足を退ける。
すると、みこちゃんは身体をくの字に折り曲げて激しく咳き込み、喉と腹を押さえる。
俺は、軽く過呼吸になったみこちゃんを抱き起こして背中をさすった。
「ごッッめ、、ッ!こんな、、ッつもりじゃ、ッ!」
「、、ゲホッゴホ、ケホッ、ひューッッ、わか、、ッッとるよ、大丈夫。おれッがッッ、わるぃ、、ッからな。」
もっと殴られるかと思った、これでやめてくれてありがとうな。
そう言って、みこちゃんは俺に向かって微笑んだ。
あぁ、、、、好きだなぁ♡
こんな状況だというのに、そう思ってしまった自分が恐ろしい。
小さい頃はもっと常識があったのに、アンガーマネジメントできていたのに、いつの間にこうなったのだろうか。
俺はもう、みこちゃんがいないと生きていけないかも。
「みこちゃん、ごめん。でも俺、もう、、、、ッ!」
「自分を責めんでええよ。、、、引かれるかもしれへんけど、俺、すっちーにこうされるの好きなんよ。だから、だからな、、、大丈夫。」
みこちゃんの告白に、やっぱり俺はみこちゃんを抱きしめるしかできなかった。
それはもう、、、背骨を折るくらいの勢いで、力で。
みこちゃんは少し苦しそうに呻き声を上げたけれど、嬉しそうに笑った。
俺は運命とか神とか仏とかは信じないけど、やっぱり、運命ってあるのかな。
こんなに俺にぴったりなパートナーと巡り会えるなんて、もう運命としか言えないよね♡
「みこちゃん、、、愛してるよ、」
俺が囁くと、みこちゃんも荒い息を繰り返しながら「俺も」と返してくれた。
あぁ、もう絶対離さないから♡
***
<あとがき>
ヤバいっすね、はい。
私の癖つめつめですね、はい。
いやぁ、、、いかがでしたか?
こういうの私大好物なんですけど、皆さんの中には苦手な方もいらっしゃるかもですね。
聖人組の病み(?)なんてなかなか見れるものじゃあないですよ(?)。
はい。
ここまで読んでくれた皆様、ありがとうございます。
変な小説投稿してしまってすみませんでした(笑)。
コメント
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めっちゃすきです! うちの癖でもあるんですよいやぁぁぁ最高ですね!はい!(語彙力紛失