こんにちは。
今回は早雲(そううん)↓
と
柳(やなぎ)↓の神社話です。過去ではないかも。
(途中ですみません。完成したら画像を置き換える予定です。)
こいつはカタツムリとおみくじとハサミがモチーフです。
神社のゆるっとした巫女(?)ポジの柳くんです。
境内を包むのは、蝉の声と揺れる葉の音。石畳の上を、ひとり、狐の姿をした青年が静かに歩いていた。
『…今日も、元気に蝉が鳴いていますね。柳くんは…まだ寝ているのでしょうか。』
頭には鍵と時計と狐面、耳はふかふかのパン。
時間の流れを見守る妖狐_ 早雲は、くすりと微笑むと、空を見上げた。
その奥。社務所の軒下に、ぐでーんと倒れていた男が1人。
「…あー……あっぢー…。まじで暑い…。おれ、動けない…。」
緑がかった髪に巻きつくような巻紙、おみくじの紙が風でちらつく。
柳は、だらけきった声で文句をこぼしていた。
『柳さん。起きてください。お客様が来たら、またお仕事を丸投げするんですか。』
「はー?お前がやった方が笑顔で案内できるし、結果的に神社のためじゃん…。」
『……こら…。理由が詭弁過ぎますよ。』
そう言いながらも、早雲は柳の頭に落ちかけた紙くずを拾ってやる。
『ほら、今日も“吉”が出ていますよ。切らないのですか?』
「吉は別にいい。…大吉じゃなけりゃな。」
その時、鳥居の方から小さな声が聞こえた。
〈わーっ!大吉だ!〉
参拝客の子供が、ぱあっと紙を掲げて笑っている。
柳はそれを見た瞬間、スッと立ち上がった。
「おっと…。はい、はーい。大吉確認〜。…切りまーす。」
〈えっ!?〉
子供が驚く前に、シャキンッと軽快な音。
柳は慣れた手つきでおみくじを縦に二つに切った。
「はーい、大吉なんてなかったんだよ〜。見なかったことにしといてねっ。」
〈うわあーん!!〉
「泣くな泣くな〜、ほら。代わりに“末吉”引いていいから。なんなら五枚引いてもいいぞ。」
『…ちょっと…。ひどいですよ、柳さん…。』
「だってさ、“良いことが起きる”とか言われるとムズムズすんの。こんなん…ハードル上がるだけじゃん…?」
『…時に“思い出す事”も、大切ですよ。』
「は?」
早雲の足元で、ひとつの鍵が“カラン”と鳴る。
「おい、待て!開けるな!!」
柳が身を起こした頃にはもう、鍵が回っていた。
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🔑鍵について
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◆闇と明るさの記憶
鍵を開けることで、狐化する時もあるが本人の思考で変わる。
鍵が開いた瞬間、時間そのものが記憶の底へ流れ込む。
心の奥底に沈めていた「悲しみ」や「喜び」が光と闇の波のように押し寄せてくる。
痛みも温もりも、すべて鮮やかに正確に忘れていたままの温度で。
周囲の景色が色褪せるのは、それが〈今の時間〉から切り離されるから。
そして、周囲には明暗の揺らぎまるで朝焼けと夜明けが同時に降りたような色が広がる。
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柳の頭上に、紙くずが舞い落ちる。
そこに書かれていたのは、「大吉」と、もう読めなくなった言葉。
「…あー…あんときの…。」
柳は目を伏せた。
浮かんでくるのは、柳がまだ小さかった頃。
誰かの大吉をうらやんで、大吉の紙を切ってしまった記憶。
その時、傍に居たのは、この狐だったか、それとも…。
「…こーゆーの思い出すの、やっぱめんどいわ…。」
柳は立ち上がり、ハサミを振る。
周囲にあふれ出した記憶の光を、断ち切るように、でも優しく包むように。
傍に浮かぶカタツムリの霊が、ゆっくりとその空気を整える。
「ほれ、やりすぎ。しんどくなるのは早雲も…。だろ?」
『…はい。でも、これで“あの方”が少しでも思い出せたなら私は満足です。』
「はぁ…。お前ってほんっと…。変な奴だな…。」
『ありがとうございます。』
「って…褒めてねえよ!」
そうして元の境内に戻った時、神社には再び夏の蝉が鳴いていた。
蝉の声が鬱陶しいと想いつつも
柳は無言で背中のおみくじ箱に新しい紙を足す。
その手元に、ふわりと風が吹いて、「大吉」が一枚舞い落ちる。
「…チッ…。客のならすぐ切るのに、自分のはなんか…」
ちらりと横を見ると、早雲がこちらを柔らかい雰囲気で見つめている。
首を傾げて、微笑んでいた。
「ん…はぁ…。やめとく。今日は。」
そう呟いて柳は紙をそっと胸元にしまった。
🍧:アイス買いに行こう
「……なあ早雲。」
『はい?』
「アイス買いに行かね?もうなんかさぁー…疲れた。」
『…さっきまで寝ていたのでは…。』
「いいだろ、チョコミントがいい。」
『そうですね…。私は…いなり寿司味のアイスがあれば、少し興味があります。』
「ハッ…。何言ってんだ。そんなの売ってねぇよ。」
『…残念ですね。』
そんな他愛のない会話を交わしながら、
二人はゆっくりと、神社の石段を下りていく。