これは、人外3人人間1人で構成された歪な戦士たちの甘苦い日の話。
※番外編なので長さと文は手抜きです。それでもいい方はどうぞ
2月13日午前
「むむむ、、、」
オブサーバー内 シュリの病院にて。
「すごーく、邪魔なんだけど。」
「そんな事言わないでくださいよー。聞いてください!日本のバレンタインって、異性だけじゃなくて同性にも何か渡す文化があるんですって!」
シュリは呆れた。自分の幼なじみはこんなに乙女なやつだっただろうか。たたでさえ新薬開発の邪魔をされているのに、そんな乙女な悩みを相談されたらたまったもんじゃない。
しかも、バレンタインときたものだ。いつからこいつは行事を気にするようになったのか。間違いなくブライドの影響なのだろう。
「シュリ、、、どうしましょう。」
「知ったこっちゃないわよ!大体、なんでそれでうちに来るわけ!?」
「だって、私の料理スキル知ってますよね!?私一人でブライドに渡せるレベルのお菓子なんて作れないですぅ!!」
「知ってるわよ!!だから諦めて帰れって遠回しに言ってんの!!」
「昔っからそうよ!あんたの料理なんてね、この世のものとは思えないひっっどい出来だし、食えたもんじゃないし、臭いしまずいし色キモいし!!貰ってもし万一食ったら細菌が体の中で増殖するんじゃないかってレベルなのよ!!」
「あのひろ〇きですら驚くレベルの罵倒ですよ、、、。」
「誰よ」
「割と最近の流行りですよ。」
「ふぅーん。」
「って、そんなこと言うために来たんじゃないんですよ!」
「シュリ、チョコレート作るの手伝ってください!」
「へぇ、チョコレートねぇ。」
「って、はあああああああ?!!」
同日同時間
所夜の自宅にて
「ハッピー、、、バレンタイーン!!!!」
勢いよく扉を開けたのは、地獄の神、映矢輝だった。
「おわっ!?なんだその大量の藁人形!!」
「え?あぁこれ。地獄でのバレンタインはぁ、お世話になってる人に祈りを込めた藁人形を送るの。好きな人には、じゃじゃん!」
「うわぁ、ちょっとキモイな。」
「感情がないのってちょっと鋭利すぎる刃物かも。好きな人には、心臓に近い形の石を釘で藁人形に打つの!これは、天国でちっちゃい女の子に貰ったやつ。あたし、天国でも人気あるんだよね!」
「そういやお前、地獄にすげえ数の信仰者いたっけな。天国でも信仰者いるのは驚きだった。」
「地獄行きか天国行きかの裁判やってるとさ、恨まれることもあれば慕われることもあるんだよ。天国であたしに感謝してる人、まだいっっぱいいるんだよね。」
「好きな人に渡す藁人形は、ほとんど天国の人から貰ったの。んで、お世話になってる人の藁人形は全部地獄の子から。」
「まぁ、本来はあたしが用意しなきゃなんだけどさ。女の子だし。」
「は?地獄では女が用意するもんなのか?」
「うん、てかこの国でもそうみたい。え、イギリスじゃ違うの!?」
「ああ。イギリスのバレンタインは男から渡すもんだ。女からは割と珍しいな。」
「へぇ!そうなんだ。えーちゃん、モテるでしょ。どんくらい貰ってたの?」
「かなり貰ってたが、、ほとんど捨ててたな。」
「え、なんで!?もったいない!」
「だって、私、甘いの嫌いだし。」
「ええぇぇぇぇぇ!!!」
シュリside
もうあれから何時間経ったのか。材料は全部千夜が出してるとはいえ、あまりに無駄すぎる。
たかがガトーショコラを作るのにここまで失敗するだろうか。やはりこいつは天性の料理音痴だ。
千夜は、包丁を使うのだけはうまい。それ以外はどうしてそうなるのか分からないくらいに失敗する。
「やっぱり慣れないことはするもんじゃないですね、、、。これじゃあ映矢輝はまだしもブライドは死んじゃいます。」
「自覚あるのね。ちょっと安心。」
「、、1回目。、、見た目は焦げてるだけなんだけどね。中は生焼け、食感はネチャネチャして小麦粉の味しかしない。匂いも焦げ臭いし、、、まぁまだ見込みあるかなと思ったけど。」
「2回目は膨らんでもいないし何故か水っぽい。チョコの味はするけど美味しくないしラム酒が効きすぎてた。」
「問題は3回目よ。見た目は丸焦げ、匂いは火災が起こった現場の匂い。なのに中はベットベト。いちばん不味かったわ。材料が可哀想。」
「今回ばかりはぐうの音も出ません、、。」
あからさまに落ち込む姿を見ると、いじるにいじれない。こんなになるってことは彼女なりに一応考えて作ってはいるのだろう。
「あ、そうだ」
いいことを思いついた
いっそ、派手にやらしてやろう。
「私の指示なしで、一人で全部作ってみなさい。」
「え、?」
「大丈夫、本当に危なくなったら指示をだすから。」
「分かりました、、、」
渋々了承し、本日の功労者ともいえるガラスボウルに刻んだチョコレートを入れる。
次は湯煎、、、っておい。こいつまさか。
「ストップ。」
「はい?今集中してるんですよ。あんまり話しかけないでもらってもいいですか?」
「人のキッチン使っといて酷い言いようね。」
「そんなことはどうでもいいのよ。なんであんたチョコレートに直接お湯入れようとしてんのよ。」
「だって温めれば溶けますよね。」
「あー、、、」
「湯煎ってのは、鍋のお湯の上にチョコ入のボウルを浮かべて、間接的に温めること。そうそう。分かれば手際はいいのね。」
「料理の専門用語に関してはさっぱりで、、、」
「湯煎は一般名詞よ。」
「まあいいわ。チョコはとかせたから。またひとりでやってみて。」
「はい!」
次は卵を割入れて混ぜるだけ。いちばん簡単な工程だ。
いやちょっと待て。またこいつ、、!
「ストップ。」
「早いですね。なんですか」
「なんですかじゃないわよ。なんであんたゆで卵作ろうとしてんのよ?」
「だって、最終的に卵も温められますよね?だったら先にやった方が効率いいかと。」
「はぁー、、、」
「あんたね、ゆで卵と溶き卵の違いくらいわかるでしょ。教えた方が良さそうね。料理音痴のさしすせそ」
「聞いた事のない単語でてきましたね。」
「さ、逆らうな(レシピに)し 従え(レシピに)す、進め(レシピ通りに)せ、説明通りにしろ。 そ、そのまま進め(レシピ通りに)」
「いい?レシピにない事しなくていいから。わかった?」
「はい!」
「続けて。」
その後は割とスムーズに進んだ。さっきとは全然手際が違って、この時点の匂いで美味しそう。
あとは焼き上がるのを待つだけ。湯煎と卵以外に変なことはしようとしていない。だから大丈夫なはず。
でもなぜ、1から3回目もレシピ通りに指導したのにダメだったんだろう。
私は変なことは教えていない。まあ、必要最低限なことしか教えてないけど。
あ、もしかして。
たしかさっきあいつ、、、、
「そーいうことかぁ、、、」
普段効率重視な私なら、きっとこうするだろうなっていうのを自分で想像して実行したのね。
それしかない。てかそれじゃないとしたら他に何がある。
こいつ、、腹立つ奴ね本当に。
「シュリ!出来ましたー!」
「、、、これ、、」
「成功じゃない?」
「はいっ!過去一です!」
「毒味して見ます」
「言い方言い方」
「、、、シュリ、、、」
「美味しいです!!食べてみてください!」
「、、、おい、、しい、!?」
ん?でもちょっと待て
このガトーショコラ、、、
「ねえ、千夜、、これ、」
「砂糖の分量間違えてない?」
「!!」
映矢輝side
地獄の信仰者の子から聞いた話では、日本ではチョコレートをあげるのが主流らしい。
材料は買ってきた。カカオってこんな高いんだね。
「えーちゃん!チョコレートつくろ!」
「藁人形じゃないのな。」
「友達にあげるやつ藁人形にするわけないじゃん」
「てか、こんだけ材料あれば3品は作れるな。」
「え、1品のつもりで買ってきたんだけど」
「馬鹿だろ」
えーちゃんの料理するとこまじまじと見るのは初めてかもしれない。
手際がいいし、とっても器用だ。お料理だけじゃなくて、お菓子も作れるとは。
しかもさ、すごいんだよこの子。甘いの嫌いな自分用のと、甘いの大好きな私のと、普通の分量の。同時進行で3品作ってるんだよ。すごくない?
いい匂いしてくるし、職人さんみたいで見ていて楽しい。
ちょくちょくこちらを見てどうした?って笑いかけてくるの。これを俗に言うめろい女?って言うんだろう。
1時間程度、ふたりで頑張ってトリュフ、生チョコ、ミニチョコケーキの3品を完成させた。本当に綺麗で、ツヤツヤしてて、甘い匂いがして。食べるのがもったいない!でも今すぐ食べたい、、!
「、、、ひとつつまみ食いするか?」
「え、いいのかな、、?!」
「内緒だぞ?」
「うん!」
お、美味しい!!
甘くて、でもちょっと苦くて、舌触りもさいっこう!市販のレベルをゆうに超えてるよ!
「お前、ほんっと顔に出るな」
「え、出てた!?恥ずかしっ!!」
あとはラッピング。可愛いピンクの袋に包んで、シールでギラッギラに飾る。
こういう作業、あたしいちばん大好き!
「ギラギラすぎねぇ?」
「気持ちこもってる世界に一つだけのラッピングだから大丈夫。」
「まぁ、楽しそうでなにより、、。」
2月14日
「本日のウイルス退治、終わりましたー!」
「夜遅くまでご苦労さま!今えーちゃんがご飯作ってるからね!」
幾度となく湧き続けるウイルス達の退治に、休みなどあるはずなく。バレンタイン当日も、所夜達は仕事を続けていた。
南野は今日、日本での医師免許を取るために席を外していた。もちろん、南野がいないということはツキもいない。久しぶりの3人の夜だ。
夕食のいい香りが玄関まで漂う。映矢輝は人数分の飲み物と箸を出し、褒めて褒めてとブライドに抱きつく。まるで仲のいい姉妹を見ているみたいだ。
夕食を済ませ、洗い物が終わり、風呂が沸いた。一番風呂はいつも髪が短いブライドが入る。
「あ、風呂入る前に。映矢輝。そろそろ渡すか。」
「あ、そうだね!持ってくるよ!」
映矢輝が自分の部屋から持ってきたのは、ギラギラに装飾された袋に入ったチョコレートケーキだった。
「え、これ、、私にですか!?」
「うん!二人で昨日作ったの!と言っても、あたしがしたのラッピングくらいだけど。」
「相変わらず器用ですね。ブライド。ありがとうございます。とても嬉しいです!」
「あ、そういえば私からも、、。」
「はい、2人にです。大丈夫ですよ。シュリにも美味しいと言われたので味は保証します!!」
「え、、これお前が?」
「あの料理音痴な千ちゃんが、、、こんなに美味しそうなガトーショコラを、、?!」
「やっったぁ!!!すっごく嬉しい!食べていい?いいよね!?いただきまーす!」
「明日死ぬ覚悟は、、できている。」
「失礼ですよブライド。」
「え、、、おいしい、、!」
「んー♡おいひーい!!」
「ほ、ほんとですか、、!?良かったです、、」
「んーでも、なんかちょっと、、苦い?」
「あ、、、お恥ずかしい話ですが、お砂糖の分量を入れ間違えまして、、、」
「まぁでも。私は甘いの嫌いだから好きだぞ。」
「け、結果オーライでしたね、、、、よかったぁ、、、」
「え、千ちゃんいま敬語外れた?」
「珍しいな。てか初めて聞いた。」
「ほっとすると気が抜けてしまって、、お恥ずかしいです。」
本当に、心からほっとした。自分の料理で、人が笑顔になるのは初めてだから。シュリに今度、改めて礼をしなければ。
後日、ブライドと映矢輝はシュリとつツキにもチョコレートを渡した。やはり所夜のものとは比べ物にならないくらい美味しかったらしく、シュリは流石ね、とブライドの頭をわしゃわしゃと撫でた。
ツキは行事を気にしないシュリの隣にずっといたせいでバレンタインを貰うことが初めて。あまりの嬉しさにうさ耳が震えていた。
シュリはバレンタインのあと、無事日本での医師免許を取得できたらしい。オブサーバーの医師免許取得した時より基準が厳しくて大変だったのだとか。
そんなこんなで、4人(➕1匹)の騒々しいバレンタインデーは幕を下ろしたのだった。






