テラーノベル
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翌日、帰宅。
バタバタと顔合わせも終わり、ようやく日常に戻った。
「ただいま〜」
「ただいま〜」
「ハア、疲れたね」
「うん、お疲れ!」
とりあえず、私は、洗濯機を回してから、2人でソファーに座る。
「ねぇ、結局いつ出すの? 婚姻届」と匠に聞くと、
「う〜ん、明日?」と言うので、スマホでカレンダーを開いて見る。
「明日、12月4日? 何でもない日だね?」と言うと、「う〜ん、じゃあクリスマスイブとか?」と匠が言うので、見るが……
「仏滅!」と私が言うと、
「ハハッ、やっぱ、そこ拘る」
「う〜ん……明日より、明後日の方が友引だよ……あっ!」
と言うと、
「ビックリした! 何? どした?」と言う匠。
「明後日、12月5日は、お父さんの誕生日だ!」
「え? そうなの?」
「うん、バタバタしてて忘れてた」
「ヨシ! じゃあ、明後日にしよう! 入籍」と言う匠。
「え? なんで?」
「お父さんの誕生日なら、これからも忘れないし」と笑っている。
「え〜っ! う〜ん、なんか複雑だけど、まあ、いいか」
「うん、お父さんは、ある意味俺たちのキューピットだからな」
「そう?」
「うん、お父さんが俺を《《誘拐》》してくれなかったら、こんなにも仲良くなってたかどうか?」と匠は言う。
「まあね〜でも、お父さんが匠とキャッチボールをしたかっただけだと思うんだけど……」
「その後も家に泊めてくれて俺と綾を遊ばせてくれたから」
「そうだね〜お父さん、きっとめっちゃ喜ぶよ!」
「うん、だな! 喜んで貰えたら嬉しい」
そして、私たちは、家族メッセージに5日に入籍することを報告した。
〈おめでとう!〉の文字が並ぶ中、やはり、父は、
〈おお、そうか、そうか! 俺の誕生日だ!〉と、返してきた。
すると又、〈お誕生日おめでとうございます〉と、匠のご両親からメッセージが届き、とても喜んでいる様子だ。
母からは、〈おめでとう! お父さんの誕生日に入籍だなんて、お父さん凄く嬉しいね〉と来ていた。
〈うん!〉と、素直に返していたので、感動しているのだと思う。
そして、私たちは、その日の午後、お父さんの誕生日プレゼントを買いに出かけた。
色々悩んで、父が大好きな焼酎にすることにした。
当然のように、
「上がって行って」と母に言われ、一緒に晩ご飯の寄せ鍋をご馳走になった。
お婆ちゃんも入籍することをとても喜んでくれた。
そして、早速、「綾ちゃん、結婚おめでとう!」と、ご祝儀袋に入ったお祝い金を手渡される。
「えっ! 良いよ、こんなに……」
どうみても、袋が分厚い!
驚いて断わろうとしたが、「可愛い孫娘だもの。お婆ちゃんの気持ちだから受け取って」と手を握りしめたまま離さないお婆ちゃん、
「お婆ちゃん! ありがとう」と有り難く受け取ることにした。
すると、父から、
「父さんと母さんからは、振り込みでいいか?」と、
又斬新なお祝い方法だな、と思ったが、
「あ、ありがとうございます」と言った。
その方が、手間が省けて良いかも……と思った。
匠のお母様からも匠に〈次、会うのは年始になってしまいそうだから、お祝い金、振り込みでも良い?〉と、ちょうどメッセージが届いていたようだ。
さては、4人で申し合わせたなと思ったが、
今の時代には、有り難い事なのかもしれない。
「時代だね〜」
「うん」と、2人で笑い合う。
誕生日プレゼントを渡しに来たのに、とても大きなお祝いをいただいてしまった。
「ありがとう」
「ご馳走様でした! ありがとうございました」と、明日から又仕事だからと、早めに帰った。
──翌日
いつもの最寄り駅で降りて2人で歩いていると、
「おはよう〜」と美和
「「おはよう」」
「寒いね〜」と言っている美和に、
「うん、寒いね」と私が言うと、
匠が、
「あのさあ」と話し出した。
「ん?」と美和、
「明日、入籍することになりました!」と言うと、
「うわ〜そうなの! おめでとう〜」と、言ってくれた。
「うん、ありがとう」
「あざーっす」と言う匠。
「一昨日急遽、両家の顔合わせになって……」と言うと、
「え、そうなの! 凄いスピード」
「うん、で3月3日に式挙げるのでよろしく!」と匠が言うと、
「そうなのね! もちろん行く行く」
「ふふ、ありがとう〜」
「披露宴もするの?」と美和。
「ううん、でも、チャペルで挙式の後パーティー会場を取ったので、パーティー形式にしてもらおうと思って」と言うと、
「あ、分かった! じゃあ私誰かに手伝ってもらってやるよ!」と言ってくれた。
「ありがとう〜助かる〜」と言うと、
「お願いします!」と匠も頼んでいる。
「任せて!」
仲の良かった同期の1人は、智之だから、もう呼ぶつもりもない。
なので、匠は、「俺も大学の友達に頼んでみるわ」と言う。
「うん、分かった! 楽しみ〜」と喜んでくれた。
「私も匠の大学の友達に再会するのが楽しみ!」と言うと、
「俺も綾の高校の友達に再会するのが楽しみ〜」と言う。
「ん? 再会って、お互いの友達に会ったことあるの?」と言うので、奇跡の話をした。
「え───────っ!」と、美和がとても驚いている。
「凄い奇跡でしょう?」と言うと、
「うん、もうやっぱコレは運命だね!」と言う。
「だよね? すっごく驚いたんだもん」と言うと、
「あ、それの再現ドラマとか撮ったら面白いよね? やってみようかな」と美和。
「うん! 面白いかも〜」
「ハハッ面白いかもな」と3人で笑う。
「じゃあ続きは、昼休みにね」と、美和と別れて、それぞれの部署へ
そして、匠と「「おはようございます」」と、部署に着くと、
「おはようございます」「おはよう!」
「中谷さん、綾瀬くん聞いた?」と、何やら朝からざわついている。
「え? どうしたんですか?」と、先輩のOLさんに聞くと……
どうも先ほど騒動があったようだ。
「さっき営業部で大変だったのよ〜」
「そうよ、凄かったんだから」と、おっしゃる先輩OLさんたち。
智之が浮気をしていた事実がバレたようで、
朝から|山脇さん《奥様》が会社に怒鳴り込んで来て、新しいバディである若い女性に詰め寄り、
ビンタをしたそうだ!
「「え?」」
さすがに2人で驚いてしまった。
そして、若い女性の方も叩き返して、激しい喧嘩になっていたようで、すぐに周りに居た人たちによって2人は離され、今は、上司数名と智之と|山脇さん《奥様》と若い女性、宮沢さんというらしいが、皆んなで会議室に入ったようだ。
「そうなんですか……」と私が言うと、
「あの人、とんでもない女に捕まってから転落人生ね」と智之のことを言っている。
同じ部署の先輩OLさんたちも、智之と私が別れたことは、皆さんとっくにご存知だったようだ。
そりゃあそうだ、子どもが出来てあの2人は、入籍して|山脇さん《奥様》は仕事を辞めたのだから。
そう! 私は、皆さんの中では、彼氏を寝取られた可哀想な元カノのままだった。
しかし、旦那に浮気されて、朝からわざわざ会社まで来て、相手の女にビンタ? と驚いてしまった。
今後の旦那の会社での立場も考えないのだなと思った。もっと冷静に対処する方法もあっただろうに……相変わらず感情のまま動く女だ。
もちろん、智之が最低なことをしたからだ。
だが、まずは、会社ではなく別の場所で、その女と智之に話を聞いて、対処すべきだったのに、いきなり会社まで来て相手の女に手を出すなんて……
妊婦だからイライラしていたのか? にしてもやり過ぎだ。お腹の子に影響はないのか? と要らぬ心配をしてしまう。
私は、智之が嵌められたと分かった時、山脇さんを殴ったりしなかったし、なんなら婚約不履行で訴えても良かったが、そんなことをする価値もない! とさえ思った。
人の彼氏を寝取っておいて、また違う若い女に寝取られて、暴力を奮うとは本当に情け無い。
そういう2人の女性を選んだのは、智之だし、罰を受けることは避けられないだろう。
少しは、目を覚ましなよ! と思うが、きっと奴の人生は、これからも、どこにいても同じことを繰り返す人生なのだろうなと思う。
それに私には、もう関係ない! 今の私は、匠と幸せなのだから……
山脇さんは、本当に恐ろしい女だし、
宮沢さんもバカだなと思った。
最もバカなのは、一生治らない《《屑之》》だが……
「アイツ、終わったな」と、匠がポツリと言った。
「うん」
もちろん出世の道など断たれるだろうし、恐らく地方へ飛ばされるだろう。
それだけでは済まされない。
旦那の不倫によって、狂ってしまった妻のこと、
これから生まれてくる子どものこと、不倫相手のこと、色んな課題が課せられる。
私は、
「ホント、救いようのないバカだ!」と言っていた。
一時の感情で、しでかした女性関係。
今までも、それを何度も繰り返して来ていたのかもしれない。私が知らなかっただけなのかな。
それが、ついに物凄い代償を払うことになってしまった。
──別れて良かった
心の底からそう思った。
心配そうに匠が私を見ているのが分かった。
「大丈夫か?」と言った。
「うん、大丈夫! 別れて良かった」と素直に言った。
「うん、だよな」と言って微笑んでくれた。
そう、私たちには関係のないことだから……
匠は、
「明日、俺たちのことを知ったら皆んなどう思うかなあ?」と言った。
「どうだろうね? どう思われても良いよ!」
「だな! 俺たちは幸せだから」と言うので、
「うん」
「何なら騒ぎついでに、今から発表しちゃう?」と、匠は言ったが、
「ううん。こんな変な空気の時に、イヤよ」
「だな! 分かった」
明日、入籍すれば上司に報告するので、すぐに皆んなに知れ渡ることになる。
私たちは、何も悪いことはしていないのだから、
きちんと報告しようと思っている。
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