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「ああああ……もう着いちゃった……」

”戦いながらトークライブしながら移動してたらあっという間だったな”

”分担作業にも程がある”

”あの小さいマップ強すぎだろ”


13層へのポータルに到着し、グレッデュセントは困っていた。このままでは挑戦者ですらない子供達がサクサク進んで、この後の層も全部暴かれてしまう。せっかく創ったバトルフィールドなので、想定通りの使われ方をしてほしいのだ。


「よしツギいくかー」

「待って待ってえー!」


躊躇なく、とても軽いノリでポータルに乗ろうとするピアーニャに縋り付く。


「もうちょっと何かないの? 新しい場所にいくのよ? ドキドキしたり、ここまで来た道筋を思い返して感慨深くなったりしないの?」

「なんでそんなコトしなきゃいけないんだ? わちはさっさと、みたことないリージョンをみたいのだが」

「そーゆー目的の為に創ったんじゃないからね? ちゃんと戦って、成長して、腕試しして、それから私の所に来てほしいのよ」

「トラブルにタイオウするために、つよくはなるが、ベツにつよくなるシュミはないからなぁ……」

「わたくしも弱いわけにはいかなかったから、それなりの力は備えてるけど、どーでもいいかな」

”そんなどーでもいいとか言いながら最高記録出されても……”

”なんか凹むわぁ”

「みんなは帰りの分まで力温存してたから11層止まりなわけだし、改装したらもっと行けるでしょ」

”それはそうなんだけどね?”


もう既にヴェレスアンツは改装が決定している。改装してしまうと、今存在している層が残るかどうかも分からない。だからこそ、ピアーニャはまだ見ぬリージョンのヒントを今のうちに見ておきたいのだ。


(こうなったら仕方ない……)


これ以上のネタバレは防ぎたいグレッデュセント。この一行に対してだけは絶対にやりたくなかった方法で、道を塞ぐ事を決心した。


ゴッ

「うおっ!?」


グレッデュセントはポータル前に立って地面を殴り、ピアーニャ達のいる場所を沈ませた。地割れを起こしての地盤沈下である。

大きく沈み、ポータルが崖の上にある形になり、ポータルに辿り着くのが容易ではなくなった……ように見えるが、空を飛べるので実は大したことはない。それを分かっているので、崖の上から見下ろすグレッデュセントはピアーニャに向かって宣言する。


「ここを通りたくば私を倒してからにしなさい!」


そう、この女神が出来るのは『戦い』。その力をもって足止めをするしかない。

本人にとっては正々堂々ではあるのだが、ピアーニャ達の反応はというと、


『えぇ~……』

「揃ってすっごく嫌そうな顔するなあああ! そんな嫌われるような事してないでしょ!」

”俺らはこういうの燃えるんだけど”

”今はメレイズちゃんの特訓をしてるわけでもないしなぁ”


そもそも今回は『悪い事をしたからちょっと謝りに来た』というほのぼのとした目的で暴れまわっていた程度なので、進む為に戦ってはいたが、勝てない相手に挑むような事はするつもりがない。

層を進み過ぎたせいで力の差が大きすぎて、メレイズの特訓にもならない。つまり戦う理由は全く無いのだ。


「どうします? もう謝ったので帰りますか?」

「そんなぁ……リージョンのヒントぉ……」


最初の目的である謝罪が終わっているので、イディアゼッターも手伝う意味は無くなっている。本来ならばグレッデュセントと同じで、ヒトに成長してもらって、自力で新しいリージョンを発見してほしいと思っている。

進むのに必要な神の協力はもう無いと察したネフテリアとパフィは頷き合い、ピアーニャに声をかけた。


「知らないリージョンはいくつか見れたし、ここまででも大収穫でしょ。大人しく帰りましょ」

「せめて最後にここで、12層到達記念のパーティするのよ。食材いっぱいだからいい感じのを作るのよ」

「む~……………………わかった」

”溜め長っ”

”俺達も次見たかったけど、まぁ仕方ないか”

”神様が相手じゃあなぁ”


諦めてくれるなら良いだろうと、イディアゼッターも承認。パフィがその辺りの食材を使って料理を始めた。さすがに凹んだ地面の中では食材の種類が乏しかったので、現在地を修復してある。

ミューゼがテーブルをセッティングし。イディアゼッターが後方の空間を絶ってヴェレストが近づけないように細工した。グレッデュセントは一応警戒していて、ポータルのある方向にいる。隙をついて全力で走っても、ピアーニャ達の実力ではポータルに触れる前に確実に捕まるだろう。


「ポータルがすぐそこにあるのに……」

「諦めてください」

「そうよ。通りたかったらちゃんと強くなってほしいわ」


2人の神に窘められて、ピアーニャはすっかり意気消沈。アリエッタが頑張って慰めている。幼い子達を意地悪している気分になってしまって心にチクチク刺さっているのか、神から時々つらそうな呻き声が漏れている。


(ちょっとイディアゼッター。早々に連れて帰って欲しかったんだけど)

(申し訳ございません。あそこまで落ち込まれると断れなく……)

(もう層の境はどこでも通れるようにしたから、食事終わったら1層まで連れて帰ってよね?)

(助かります。改装についてはまた後日で)

(はぁい……)


視線で会話しているように見えて、『精神感応テレパシー』で会話する神々。なぜかその姿に嫉妬したネフテリアが、再びピアーニャと視線での会話を試みた。


(分かってるわよね、ピアーニャ)

(なんだコッチみて。おこってるのか?)

(絶対分かってないなこりゃ)

(ちゃんとかえるから、ゆるしてくれ)


相変わらず以心伝心が出来ない2人であった。

しかしネフテリアは通じていないという事を学習した模様。


「できたのよー!」

”んまそー!”

”一家に一人、ラスィーテ人”

”美女のラスィーテ人とか勝ち確だろもう”

”エルトフェリアにはそういう子が沢山いるんだよ”

”なんだそれ絶対行くわ”


テーブルに豪華な料理が沢山並べられた。メレイズが目をキラキラさせている。


「いや作りすぎでしょ」

「残ったら放置なのよ。どうせグレースさんが食べるのよ」

「私は乞食かっ!」


ミューゼが取り分けた分を、アリエッタとピアーニャが仲良く?食べ、ネフテリアが取り分けた分を、メレイズとニオが仲良く楽しそうに食べていく。

パフィは食べつつも、次々と料理を増やしていく。その姿を見て呆れるグレッデュセント。


「最後にデザートあるから、余裕残しておくのよー」

『はーい』

”はらへった……”

”和むけど見るの辛い”

”たのむー! 早く帰ってきてくれー!”

”血が足りないから肉食うか”


視聴者も我慢できず、食事を始めた模様。こうしてしばらくの間、ほのぼのとした晩餐が繰り広げられるのだった。


「それじゃあデザートなのよ。はいどうぞなのよ」


出されたのは満腹である事を考慮した小さなパフェ。子供達から配られた。


「あまー♪」

「おいちー」

「はわぁ♡」

「なんでわちも……うまいが」

”幸せそう~”

”可愛すぎだろ。ニオたんの笑顔”

”もっといっぱい食べさせてあげたいなぁ”


その辺の食材だけでなく、アリエッタの木(仮)から取れた実や葉もふんだんに使い、甘さだけでなく味も完璧に整えられたパフェは、極上の仕上がりだった。

少しだけ幸せそうな顔を堪能したところで、大人達にも配られる。


「ん-美味しいっ!」

「流石ですパフィさん」


ネフテリア達も一口食べたところで、グレッデュセントの前にも置かれた。しかしスプーンはパフィが握っている。


「すっかり迷惑をかけたのよ。お詫びに食べさせてあげるのよ」

「え? そこまでしなくても……まぁいいけど」


絶対に拒否しなければいけない理由も無いので、グレッデュセントは大人しく従ってみた。スプーンにはアイスクリームとカラフルなチップ、そしてとろーりと甘そうな蜜がかかっている。近づけられたスプーンからはふんわりと甘い香りが漂い、思わずよだれが落ちそうになった。


「はいあーんなのよ」

”あーん”

”あーん♪”


なぜか沢山の視聴者が口を開けていた。気分だけでも味わいたいのだろう。


「あー……」


グレッデュセントも大きく口を開け、口の中に入ってくる甘いデザートを待ちわびた。

スプーンが舌に触れたと思った瞬間、我慢できずに口を閉じる。そしてアイスクリームの味が口全体に広がった。


「ん゛むぐぶっふぉおおおおおおおおおお!?」


瞬間、全力で噴き出した。


「どぅわーーー!」

「きゃああああ!」

「なんじゃあああああ!?」

”ええええっ”


突然の事に全員が驚く。平然としているのはネフテリアとパフィだけである。


「かっからっ! まずっ! にがっ! うお゛え゛え゛え゛え゛」


悶絶し、その場でのたうち回るグレッデュセント。その姿を見て、ミューゼも理解した。


「全員ちびっこ確保! 行くわよ!」

「りょーかいですっ!」

「なのよ!」

『ふええええっ!?』

「えっあっなるほどおおおおお!?」

”神様だまし討ちしやがったああああ!”

”うっそおおおおおお!”


ミューゼ、パフィ、ネフテリアが、4人のちびっこを抱えて、ポータルへと一目散。グレッデュセントが動けるようになる前にと、即座にポータルを発動し、次の層へと移動したのだった。

それを傍観していたイディアゼッターは苦笑い。


「これはしてやられましたね」

「を゛を゛を゛を゛を゛を゛を゛……」


グレッデュセントに出されたパフェだけが、口の中に入れた瞬間、辛さとマズさと臭さが口の中いっぱいに広がる『パフェ』だった。パフィが食べさせたのも、ほんの少しの量から味見されるより、しっかりと超激マズクリームを口の中に放り込みたいから。甘い匂いもフェイクである。

美味しい食事で楽しい気分にさせて、先に他のメンバーからデザートを配って、パフェへの警戒心を完全に無くした事まで計算のうちである。

さらにイディアゼッターが邪魔してこない事も織り込み済み。


「しかし進行はここまでで諦めているようです。同じ手は使えないのと、再度邪魔されると敵わない事を確信しているのか、13層入り口付近から動く気配もありません。今回はお嬢達の作戦勝ちという事にしておきましょう」

「うううう……ぐすっ、うええええ……」

「すぐに追いかけ、1層に連れ帰るのでご安心を。それでは……」

「も゛う゛あっち゛い゛けっばかあああっ! おえっ」


イディアゼッターも去り、1人12層に取り残された戦いの女神は、アリエッタ達がジルファートレスに帰っても、しばらくその場で倒れたまま泣き続けたのだった。

からふるシーカーズ

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