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5月24日
お母さんが、お仕事から帰ってきた。
いつもみたいに「おかえり」って言ったのに、お母さんの目、全然笑ってなかった。
いきなり腕を掴まれて、叩かれた。
痛い。すごく、痛い。
ごめんなさい、ごめんなさいって何度も言ったけど、お母さんは何も言わないで、何度も叩いた。
どうして?何か悪いことしたかな。
かなで、いい子にするから。だから、もう叩かないで。
痛いよ。悲しいよ。
真っ暗な部屋で、一人で泣きながら寝た。
5月25日
今日も、お母さんに叩かれた。
昨日よりも、もっとたくさん。
身体中が青い色になって、動くと痛い。
涙を流してたら、お母さんがうるさいって言った。
かなでは、一生懸命考えた。
どうしてお母さんは、こんなにかなでに一生懸命何かをぶつけてくるんだろう。
お母さんは、すごく辛そうな顔をしてる。
もしかして、これはおはなしなのかな。
言葉じゃ言えないことを、手を使って、かなでにつたえてるのかな。
痛いのは、お母さんの気持ちがそれだけ強いからなのかな。
まだ、悲しい。でも、ちょっとだけ、お母さんのことが気になった。
5月26日
今日、お母さんに首を絞められた。
息ができなくて、目が回って、頭の中が真っ白になった。
でも、その時。
お母さんの手が、すごく、生温かくて。
かなでの肌に、お母さんの体温が全部うつってくるみたいだった。
あ、今、お母さんと私は一つになってるんだ。
そう思ったら、なんだかおかしくなっちゃった。
痛い。苦しい。でも、こんなにはげしくわたしにふれてくれるのは、世界でお母さんだけ。
叩かれるたびに、お母さんの大好きが、
私の体に赤色や青色で塗られていくみたい。
涙が出てるけど、もう悲しくない。
お母さん、もっとやって。もっとかなでを赤くして。
それが、かなでたちの愛なんだよね?
5月27日
お母さん、大好き。
今日、お母さんが投げたコップが割れて、かなでの手が切れた。
赤い血が、ポタポタって床に落ちた。
あ、これだ。これが大好きの形なんだ。
壊して、傷つけて、中身を引き摺り出すのが、いちばんの仲良しなんだ。
お母さんは、かなでを壊したいほど愛してくれてるんだね。
だったら、かなでも、大好きなものは全部壊すね。
うさぎさんも、お花さんも、これから生まれてくる妹も。
お母さんが教えてくれた、この痛いって言う幸せを、みんなに分けてあげるね。
かなでは、もう泣かないよ。
だって、こんなに大好きが身体中に溢れてるんだもん。