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出会ったその日に恋人となった僕らは、その後の進展も早かった。君に情けない愛の告白をした翌日、僕らは遊園地へ出かけた。
「ねえ!みて!アヒルさんだ!」
遊園地のマスコットキャラクターを見てアヒルさんと呼ぶのは君くらいしかいないだろう。しかもあれはアヒルじゃない。キツツキだ。しかし、そういうところが本当に愛くるしい。
「本当だ!アヒルさんだ!可愛いねえ。一緒に写真撮ってもらうかい?」
君と話すときには、自然と幼い子どもと話すような口調になってしまう。いかにもバカップルなような気がして後ろめたいが、知らず知らずのうちに君への愛情が言葉に出てしまうのだから仕方がない。
「うん!撮ってもらう!」
食い気味で反応する君を見て、心の中で悶絶する。
「あれ?でもだめかな?小さい子どもじゃないと写真なんて撮ってくれないかな?」
「そんなことないよ。アヒルさんもプロのアヒルさんだからね。遊園地に遊びに来た人には、みんな平等に接してくれるよ。」
「そっか!プロのアヒルさんだもんね!それなら大丈夫か!写真撮ってもらおう!」
なんて純粋なんだ。やはりこんなに心が綺麗な人は見たことがない。
「すみません!お姉さん!アヒルさんと私たち3人で写真撮ってもらってもいいですか?」
そう言って、君はマスコットの近くにいた従業員のお姉さんに声をかける。
「もちろんOKですよ!お姉さんたち、お似合いのカップルさんですね!」
ここは従業員がフレンドリーで有名な遊園地で、気さくに話しかけたり、歩いているだけで褒めてくれる。デートにはぴったりのスポットだ。それにしても、お似合いのカップルか。君みたいに可愛い女性の隣にいる僕は、なんて幸せ者なんだろうか。と一人静かに幸せを噛み締める。
「それでは、いきますよー!スリー!ツー!ワン!チーズ!」
カシャッ…
その後は、お決まりの流れだ。お揃いのわんちゃんのカチューシャを買って、ジェットコースターに乗って、パレードを鑑賞した。女性と出掛けることがこんなに楽しいものだとは知らなかった。いや、これは女性と出掛けるからではない。君と一緒にいる時間だからこそ、最高に充実したひとときに感じるのだろう。
楽しい時間はあっという間だった。時刻は気付けば22時を回り、園内には蛍の光が流れ出す。最後に、でかでかとライトアップされたクリスマスツリーの前で写真を撮り、僕らは帰途につくことにした。
ガタン…ゴトン…えー。次はー。●●駅ー。●●駅ー。左側のドアが開きます―――。
車内には次の停車駅のアナウンスが流れる。遊び疲れたからか、君は僕の肩の上でぐっすりと眠っていた。もうすぐ君の家の最寄駅だ。そろそろ君を起こさなくては。でも、もう少しこの寝顔を眺めていたいと、そっと君の頭を撫で下ろした。
「ねえ、ひとつ提案があるんだけどね。」
寝ていたはずの君が突然口を開く。
「あれ。ごめん。起こしちゃった?」
「ううん。大丈夫。それより、提案なんだけど、聞いてくれる?」
「うん。どうしたんだい?」
「私たち、一緒に暮らさない?」
予想外の言葉が飛び出した。僕らは出会ってまだ二日目だ。正確には、メッセージでやり取りしていた時間も含めるともう少し長いわけではあるのだが、それにしても一週間も立っていない。そんなことさすがに展開が早すぎやしないか。
「いいね。いつから暮らす?」
頭で考えるよりも先に言葉が漏れてしまった。むしろこれでいい。君といる時間はこれまでの人生で一番楽しいんだ。考えることはやめよう。
「うーん。明日?」
「明日はさすがに無理だよ。新しい家も探さないとだし、引っ越しの準備とかもあるしさ。」
「そっかあ。なら、来週!ううん、やっぱりできるだけ早く!」
本当に君は無邪気だ。本能のままに生きていることが瞳の奥から伝わってくる。
「わかったよ。じゃあ明日、早速不動産屋さん行ってみよっか。」
そう言って僕らは、出会って一週間という早さで同棲を始めた―――。