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謹慎処分が下った翌日
直樹は朝から酒を煽り、リビングで荒れ狂っていた。
「クソッ……莉奈のやつ、今さら被害者面しやがって……俺がどれだけあいつに貢いだと思ってるんだ」
テレビのリモコンを壁に投げつけ、直樹は荒い息を吐く。
私はそんな彼を見向きもせず、淡々と陽太の弁当を作っていた。
「……ねえ直樹。莉奈さん、会社でかなり責められているみたいよ。彼女、あなたとの不倫を認めないと、自分もクビになるって追い詰められてるんじゃないかしら?」
私はコンロの火を止め、わざとらしく不安そうな顔で直樹を見た。
「あ?」
「莉奈さんが全部あなたのせいにしたら……あなた、本当に終わっちゃうわ。今のうちに彼女と話し合って、口裏を合わせないと」
直樹の目が、焦燥でギラついた。
「……そうか。あいつもパニックになってるだけなんだ。俺が直接会って、説得すれば……」
直樹はフラフラと立ち上がり、クローゼットからジャケットを引っ張り出した。
会社からは「自宅待機、関係者への接触禁止」を厳命されている。
今ここで彼女に会いに行けば、それは会社への明確な反逆行為───即時解雇の理由になる。
「……行ってくる。詩織、お前は余計なことをせず、家で待ってろ」
「ええ、気をつけてね」
私は玄関のドアが閉まる音を確認すると、すぐにスマホを手に取った。
あらかじめ莉奈に送っておいた
『直樹が逆上して、あなたの家に向かったわ。気をつけて』という警告メッセージは、既読になっている。
そして、もう一通。
直樹の会社のコンプライアンス担当者へ、匿名のアドレスから短いメールを送った。
『謹慎中の直樹氏が、口封じのために部下の莉奈氏の自宅へ向かいました。現在、彼女に危害を加える恐れがあります』
私は家を飛び出し、タクシーを拾った。
行き先は、莉奈のマンションが見える通りの向かい。
(直樹、あなたは本当に分かりやすいわね)
15分後──…
タクシーの窓越しに、莉奈のマンションのロビーで、彼女を待ち伏せして掴みかかる直樹の姿が見えた。
「おい、莉奈!説明しろ!なんで裏切った!」
「やめて!来ないでって言ったじゃない!警察呼ぶわよ!」
莉奈の悲鳴が夜の街に響く。
そこへ、一台の黒いセダンが滑り込んできた。
降りてきたのは、会社のコンプライアンス担当者と、屈強なガードマン。
「直樹君。君、自宅待機の命令を無視して、重要参考人に接触したね?」
直樹の顔が、一瞬で真っ白になった。
「あ、いや…これは、話し合いを……」
「危害を加える恐れがあると通報があった。同行してもらうよ。君の弁明は、明日、改めて正式な懲罰委員会で聞く」
直樹は力なく、その場に崩れ落ちた。
莉奈は震えながら、直樹に冷ややかな一瞥をくれ、マンションの中へと逃げ込んでいく。
私はタクシーの中から、その光景を静かに撮影した。
ボロボロになった直樹が車に押し込まれる姿。
かつての「エリート営業マン」の影は、もうどこにもない。
「……お疲れ様、直樹」
私はスマホのカウントダウンアプリを開く。
【残り88日】
猫塚ルイ

#ざまあ
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