※甚だしい捏造
※非日常な日常話
※実在の人物、団体とは一切関係ありません。
※軍パロです。
※以上をふまえて大丈夫な方のみおすすめください。
ゆっくりしていってね
エーミールが気にしていたのは、自身の生死よりも、エーミールにとってもっともっと大事なものだった。
それだけは、目を失ったことより、遥かに後悔していた。
「“彼女”を皆さんに近付けさせるわけにはいかなかった。そして私自身も、迂闊に移動させるわけにはいかなかった」
「閉じ込めておく場所が…あそこしか思い浮かびませんでした」
「……ごめんなさい」
「大事な場所…だったのに…」
二人だけの思い出の場所を、結果的に破壊してしまったことに、エーミールは強い後悔を覚えていた。
しょげたようにうつむくエーミールに、ゾムはまた毛布の中に潜り込み、エーミールに覆い被さるようにひょっこりと顔を出した。
「それなんやけどな」
「前に別ンとこ偵察行った時、面白いとこ見つけてん。多分、貴族か何かの別荘だったトコで、長いこと使われてへんけど、庭とか整備したらキレイになりそうやねん」
「退院したら…行ってみぃへん?」
「……いいですねぇ!」
少し陰りのある表情が続いていたエーミールが、ゾムの提案に満面の笑顔を見せた。
まるで花が咲いたみたいや。
思わず口に出しそうになったが、その花を模した生物兵器に苦しめられ、エーミールの右目を奪われたことを思い出し、ゾムは口をつぐんだ。
「まあ、ゾムさんと一緒なら、段ボールや端材で作った小屋とかでも、全然楽しいですよ」
「そ、そうなん?」
「二人だけの秘密基地なら、どこでも」
「でも、せっかく素敵な物件を見つけてくれたんですから、退院したら掃除道具持って行きましょう!」
「せやな! 何なら、今からでも連れて行きたいわ!」
「んふふっ、ダメですよ。追いかけられたら、秘密基地の意味がないじゃないですか」
「そ、そっか……。ほなら、少しの間大人しゅうしとくか……」
「お願いしますね。退院したら、絶対に一緒に行きましょう」
「約束ですよ?」
そう言うと、エーミールは柔らかい笑みを浮かべ、ゾムに向かって小指を差し出す。
「お、おう」
二人は小指を絡め、約束の契りを交わした。
「……なるほどねw」
病室の外で一部始終を聞いていたグルッペンは、悪戯っぽい笑みを浮かべると、二人に声を掛けることなく病室を後にした。
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五日後。
一足先に退院したゾムに遅れを取ること三日。
エーミールにもようやく退院の許可が出た。
赤く光る義眼については、話を聞きつけた薬理凶室の工作怪人達があれこれギミックを付けたがり出したせいで、しばらくの間保留となりそうだ。
まあ、無くても特段、問題ないですから。
エーミールは特段気にした様子もなく、嬉々として眼帯を装着した。
「そういや聞いたか? エミさんの眼に残ってた寄生体の残骸。あれ、くられ先生とPOKA先生が欲しがってな。どっちが持って帰るかで、じゃんけんしとったわ」
笑いながらエーミールに伝えるしんぺい神。
エーミールもまた笑って応える。
「聞きました、聞きました。どこからか聞きつけた元気先生も、乱入してきたとか」
「気持ちはわからんでもないが、科学者は変なの多いなぁw」
「というか、ウチと関わりある科学者に、変わった人が多いというか」
「せやなw っと、お迎え来てるで、エミさん。ゾムだけ…みたいやな」
病院のロビーには、ゾムがいた。
エーミールとしんぺい神に気付くと、嬉しそうに手を振って合図してきた。
「他の人達は、退院祝いの準備してくれているそうなので」
「せやったな。俺も行きたかったけど、生憎俺と兄さんはこのあと任務があってな」
「すいません。今度JOKER先生に教えてもらったお酒、差し入れますから」
「ははは。楽しみにしとるわ」
「ほなな、エミさん。お大事に」
「お世話になりました、しんぺいさん」
エーミールはしんぺい神に深々と頭を垂れると、ゾムの待つ場所に早足で向かった。
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「ゾムさん、お待たせしました」
「お疲れ、エミさん。ほな、行くか」
「こっちやで」
ゾムに案内された先は、病院の駐車場だった。
本部のある建物は、病院から徒歩で行ける距離なのに、何でわざわざ車で…?
「まあ……乗ってや」
ゾムに促されるままにエーミールは車に乗り込んだ。が、どうにも落ち着かないゾムの様子に、エーミールは違和感を感じた。
「何か…ありました?」
「う、うん…。ま、まあ、行きながら話する…けど……」
どうにも歯切れの悪いゾムの返答に、エーミールは一抹の不安を覚えた。
エーミールの知らぬ所で、何か事件か事故でもあったのか。だが、そうであれば、ゾムがこんな不審な言動をするはずはない。
それに…
「…ゾムさん? 本部は反対方向ですよ?」
「う、うん。そのコトも含めて…、その、な」
それだけ言うと、ゾムは急に口をつぐみ、山道に向かって車を走らせた。
しばらく道なりに車を走らせていたが、ゾムは急ブレーキを踏み車を止めると、エーミールに向かってめり込みそうなほど頭を下げた。
「エミさん、ごめんッ!!」
続く
コメント
6件
zmニキ!!なんで謝ったん!?!? 続きが気になりすぎる〜!!!
zmさん、一体何故emさんに謝ったのだ?!続きが気になりすぎる終わり方ですね...🤔 そして影でこっそりしているgrさんも気になりますすね...✨👀 続きが楽しみです🙏✨